思考回路は
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「あ、アイさんだ!こんにちは!」
無邪気な声が後ろから聞こえる。
授業中であるこの時間にあたしの名前を呼ぶのはあの子しかいない。オルトくんだ。他にサボっている子がいなければ、だが、そもそも授業をサボるような子で無邪気にあたしの名前を呼ぶ子は居ない。
「こんにちは。今日はイデアくんと授業じゃないの?」
後ろを振り向くと予想通りオルトくんが、えっと何だっけ、あーき……?そうだアーキタイプ・ギアだ。アーキタイプ・ギアのオルトくんはニコニコと目元で笑いながらあたしの隣に並んだ。
「兄さんと魔法史の授業に出たら自習だったんだ。退屈だから抜け出して来ちゃった。」
アイさんはお仕事中だよね、とあたしの手元を覗き込んだ。あたしの目の前で炎のような髪がふよふよと揺れる。あたしより身長の低い彼はこの学園で唯一の存在と言っていい。無邪気な性格と相まって、ふふふと口元が緩んでしまう程の癒しだ。
あたしは図書室に運ぶべく抱えていた数冊の本をオルトくんに見せた。
「今日のお仕事は図書室の整頓。ついでに借りてた本を返そうと思って。」
「アイさんは魔法について知りたいの?」
あたしが抱えていた本はこの世界の歴史に関するものが殆ど。元の世界ならフィクションのSF小説と呼ばれる物だが、この世界には歴史の棚に並んでいた物だった。最初の頃は絵本から学んでいたが、最近は歴史についての本を読んでいた。
「魔法というかこの世界についての勉強かな。」
「アイさんは頑張り屋さんだね!そうだ。僕には10万冊の本のデータがインプットされてるんだよ!アイさんのお手伝いができるかな?」
キラキラと大きな瞳で上目がちにこちらを見遣る。それは期待に揺れていて、何か頼まないと逆に申し訳ない気さえしてくる。けれど彼のデータを口頭で読み上げて貰ってもあたしの頭に入らないことは分かりきっていて頼み辛い。さて、どうしたものか。あぁ、そうだ。これなら。
「オルトくん、一つお願いがあるんだけど。図書室の整頓、手伝ってくれないかな?」
広い図書室の数多の本をジャンル別に整頓するのは骨が折れるが、オルトくんが手伝ってくれるならそれ程心強いものはない。彼のデータも彼の身体能力も信頼に足る。
少しだけ視線を下げて彼に目線を合わせると、オルトくんは任せて!と無邪気な声で請け負ってくれた。
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