子供部屋のドアを
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「デュースくん?」
言葉を途切らせた俺を不思議に思ったのかアイさんがこちらを覗き込んでくる。それからあ、と小さな声を上げた。
「デュースくんの
そう笑って左手の指先までブラウスの袖を伸ばしぽんぽんと軽く俺の頬を叩く。化粧品って目に入ると結構痛いでしょ?と笑うアイさんの化粧もきっとこの雨で流れてしまっているのだろうが、白い頬に目を奪われてしまって分からない。あぁでも、確かに唇はいつもより色が失われている気がする。それに気がついてしまえばそこから目が離せなくなった。
柔らかそうなそこに触れた事はまだ、無い。多感な年頃の男子としては、勿論興味はあって。けれどそれ以上にこの人に触れたくて。それでも俺の我儘な感情に付き合わせてしまっているこの人に触れてもいいものかと悶々と考え込むのは今日が初めてではないし、無理矢理欲を抑え込むのも一度や二度ではなかった。
告白をしたのは俺から。好きになったのも、恐らく俺が先だ。そもそもアイさんが俺の事を好いてくれているのかすら分からない。デュースくんは年上の女性に憧れているだけだと宥められたのも記憶に新しい。
もしもアイさんの言う事が正しいのなら、俺のこの感情は何なのか。俺と同じ感情が返って来ない事がこんなにも辛いなんて。それでも諦めない俺に折れたのはアイさんの方で、現在の俺達の関係は世間一般的には恋人である。
「好きだ。」
自分のブラウスの袖が俺の化粧品で汚れるのも厭わず、ただ優しく雨水を拭ってくれる彼女に言い知れぬ愛しさが胸に広がり、単刀直入にその想いを伝えるとアイさんは少し困ったように眉尻を下げた。
どくどくと心臓が煩い。顔が赤くなっている自覚もある。それでも俺は、雨音に隠れてしまうような小さな声でもいいから、同じ言葉を返して欲しかった。言い訳のように自分の年齢を告げる声ではなくて、たった二文字の、俺の我儘に付き合ってくれる理由を教えて欲しかった。それでも俺の想いに応えてくれない理由を知っている以上、俺には何も言えない。早く大人にならなければ。
「デュースくん、帰ろう。」
「そうだな。」
少し弱まった雨足に、再度二人でオンボロ寮を目指す。いつか、俺の言葉に同じ言葉が返ってきたら、その時はもう我慢なんて放り投げてその柔らかそうな唇にキスを送ろう。
だがそれもずぶ濡れの俺達を見て、傘を召喚すれば良かったのにと呆れる監督生の言葉を聞くと、まだまだ先のようだ。
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