赤でも白でもない
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赤い薔薇と白い薔薇が交互に横切って行く。あぁパーティー会場に着くまでに頬の熱を冷まさなければ。多分今は薔薇に負けず劣らず赤い筈だから。
「あ。」
ふと一本の薔薇の木が視界に入り足を止める。勿論リドルくんも足を止める。彼もあたしの視線を辿ったのか気がついたようだ。
「あれ程薔薇の塗り残しが無いように注意したのに!」
赤い薔薇の中にぽつんと一輪だけ白いままの薔薇。ケイトくんとトレイくんが塗り忘れるとは考えにくいし、可能性があるとしたらエースくんかデュースくんだろう。流石に今回のお茶会の為に態々塗り直してくれたであろう薔薇のせいで彼らの首がはねられてしまうのは忍びないし、何よりあたしが少し見てみたいものがあって口を開いた。
「青い薔薇……。ねぇ、リドルくん、あの薔薇青く出来ない?」
「青、ですか。」
「そう、青。あたしの世界では真っ青な薔薇なんて存在しないから見てみたくて。」
紫がかった青やくすんだ青の薔薇なら画像で何度か見た事があるが、ペンキをべったり塗ったような青い薔薇は見た事がない。存在すらしていないのだろう。何より、青はあたしの世界で一番好きな色。深ければ深い程良い。それをもしかしたら、魔法なら、叶えてくれるかもしれない。
仕方ない、とリドルくんは杖を一振りした。ふわっと何かが瞬いた感覚がして反射的に目を閉じる。一拍おいてゆっくりと瞼を持ち上げると、あたしはリドルくんに預けていた手の事なんて忘れて薔薇の木に駆け寄った。
「……綺麗。」
あの白かった一輪だけでなく、リドルくんは一本の木を丸々青に塗り替えてくれた。作り物のような青い薔薇。奇跡という花言葉に相応しい、真っ青な薔薇だ。思わずそっと手を伸ばしかける。けれどそれは、リドルくんに止められた。急に飛んできた鋭い言葉にびくりと肩を跳ねさせて伸ばしていた手も引っ込める。
「トゲで怪我をされてはいけないからね。」
そう言いながらリドルくんはあたしが触れようとしていた薔薇を手折る。そのまま手袋を嵌めた指先で器用にトゲを取り除き、あたしへと差し出す。それをあたしが受け取ったのを確認すると今度こそお茶会の会場へと歩みを進めた。少し先を歩くリドルくんの目元が赤い。あぁ、そうか。赤でも白でもない、一本の青い薔薇の花言葉は。
(この薔薇はドライフラワーにしよう。)
まだ幼い彼の気持ちにいつか応える為に。その日まで枯れてしまわないように。
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