赤でも白でもない
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ハーツラビュル寮のバラの色はよく変わる。前に来た時は赤だったのに次に来たら白になっている事もザラで、最近はそれ程驚く事もなくなった。それ程までにころころと変わるが、実は赤と白の2色にしかならない事をあたしは知っている。
"なんにもない日のパーティー"は赤。"花たちのコンサート"は白。そして"新しい仲間を迎える日"は赤と白を交互に。あたしも随分ハーツラビュルの伝統について詳しくなったものだ。
「アイさん。」
「あ、リドルくん。今日はご招待ありがとう。」
一人で迷路のような道を辿っていると背後から声をかけられる。振り向くとその声の主はリドルくんだった。
彼は随分とハーツラビュル寮に慣れたものですね、とその大きな目を細める。上がった口角は微笑むと言うよりはニヤリといった表現の方が正しい気がする。何か悪巧みでもしているかのような表情の彼は、少し高めのヒールで芝生を踏み鳴らしあたしの方へと距離を詰めた。
「今日の薔薇は赤と白なんだね。誰か新しい寮生でも増えたの?」
「あぁ、いや。そうではないですが。」
ただアイさんがどちらの薔薇も綺麗だと言うから、と頬を緩めた顔は悪意のない笑みで、その表情のまま彼はくるりと身体の向きを変える。そのまま此方に手を差し出す様は、普段と変わらない可愛らしいリドルくんの筈なのに"様になっている"と言わざるを得ない。振り向いた時の慣性で長いマントが広がり、僅かに逆光になったリドルくんに思わず口から溢れそうになった"乙女ゲームか"と言う感想を飲み込んだ。どうやらお茶会会場まで案内してくれるらしい。あたしはそっと彼の手を取った。
「さぁ、トレイ達が準備をして待っていますよ。」
「今日のケーキは何だろうね。」
他愛のない会話。トレイくんとケイトくん。それからエーデュースの二人とリドルくんとのお茶会は、お茶会と言うには小規模で、単なるお菓子パーティーだ。勿論お菓子はトレイくんの手作りの筈なのでそこに関しては何でもない日のパーティーと同じクオリティで、それに毎回ほいほい釣られるあたしは皆勤賞と言っていいくらいの参加率だ。
「チーズケーキだといいですね。」
あたしの好きなケーキを挙げながら軽く手を引く。あぁそういえば、リドルくんの手は意外と大きいな、と少しだけ頬が熱くなった。
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