呼び方の話
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「アイさん、仕事が終わってないようですが?」
ギリっと肩を掴まれる手に力が入る。肋骨の次は肩か。今日は本当についてないな、と思いながらも骨と胃のどちらかを犠牲にしなければならないこの状況に溜息が漏れて仕方なく強張った肩の力を抜いた。
「そうですね。……寧ろ少年達の子守が増えたんだけど。」
「ん?アイには子供がいるのか?」
「アイ"さん"な。」
フロイド少年とユウちゃんに相手にされないからか、カリム少年がこちらの会話に見当違いな茶々を入れてくる。私の"少年達"という言葉に自分が含まれているとは思っていないらしい。そういうとこやぞ、とジャミル少年の心とシンクロした気がした。
少し離れた場所ではフロイド少年はユウちゃんを高い高いしながら振り回している。うわ、あれされたら死ねる。
「……やたらと敬称をつけさせる事に拘るんですね。」
はぁ、と重い溜息を漏らした後に、私が逃げないようにする為か話題を広げるのはジャミル少年で、その彼の目はユウちゃん達へ向いていた。ジャミル少年の視線の意図は分からないから、ユウちゃんとの時間をフロイド少年に邪魔された事への嫉妬だと勝手に決めつける。それから私もユウちゃん達へ視線を向けて口を開いた。
「別に、普通年上相手ならさんとか付けるでしょ。最低限のマナーだ。」
「じゃあフロイドはいいのか?」
「……まぁ、辛うじて"ちゃん"が付いてるし。」
あと流石に"昆布さん"は嫌、と続けるとカリム少年の目がキラキラと輝く。反対にこちらの顔は苦虫を噛み潰したように歪んだ。
「じゃあアイちゃんならいいのか?」
ピタリと周囲の時間が止まる。カリム少年のユニーク魔法は時間に関するものだっただろうか。私やジャミル少年は勿論、少し離れた場所にいるユウちゃんとフロイド少年の動きも止まっている。けれどそんな状況の中で、私の心臓だけが少しだけ跳ねた。
「却下!」
「なんでだ?呼び捨てじゃなければいいんだろ?」
そういう問題じゃない。そういう問題じゃなくて、距離感が、と言いたい事が纏まらず、結局項垂れるように熱い顔を隠すように蹲み込んだ。それに対してデリカシーのない"男"が此方の顔を覗き込もうとしてくる。あぁ、これだから嫌なんだ。