アルバイトの話
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「私にメリットないじゃん!!」
ノックもせずに部屋に入ると随分と綺麗になった床が私を出迎える。あの短時間で此処まで片付ける手腕は流石と言わざるを得ない。
「もーそこまで文句言うならモストロ・ラウンジに行けばいいじゃないッスか。結構金払いいいッスよ。」
「それだけは絶対お断りです。」
即答してレオナ青年が眠っているベッドの縁に腰掛ける。足を組んでここから一歩も動かないという固い意思を示した。ラギー少年は勇気あるッスね、と呆れた声で作業を再開する。
「やっぱユウくんがいるからッスか。」
「ラギー少年はユウちゃんとシフト一緒になった事ない?結構酷いよ。」
「あー……あー、確かに。」
確かにモストロ・ラウンジだと安定してシフト入れてもらえるし時給制だから稼ぎも良い。だけど、うん。精神衛生上宜しくない。思わず遠い目をするとラギー少年にも心当たりがあったのか同意された。
ユウちゃんはバイトとしてモストロ・ラウンジに雇われているが、まず仕事が出来ない。注文を取らせれば間違った注文を取ってくるし、配膳させれば違うテーブルに持っていく。それで済めば良い方で、最悪器と料理が床に叩きつけられるハメになる。それでもアズール少年が彼女を辞めさせないものだからフロイド少年のストレスが素晴らしい事になっているのだ。その矛先が私に向くのが一番解せないのだが。
「でも意外ッスね。」
「何が?」
アンタの事だからユウくんが嫌いだからとか言うと思ったんスけど、とラギー少年が伸びをしながら言った。その言葉に別に嫌いじゃないし、と返すと彼の視線が此方を向いたから、仕事出来ないのが腹立つだけで、と繋げておく。
実際、嫌いではない。イライラするし腹は立つけど、彼女が私を嫌っている理由も知っているし、彼女が年下なのもある。そんなユウちゃんを本気で拒絶できる程若くもないし。
「アイさん、大人なんで。」
「……寝言は寝て言え。」
ニシシと笑うとグイッと急に後ろからベッドに引き摺り込まれ、グェっと喉が鳴ったかと思うと気が付けばレオナ青年の腕の中に居た。が、残念ながらこの程度で胸を高鳴らせる程若くもないのでレオナ青年の胸に顔を埋めたまま、ラギー少年の名前を大声で呼ぶ。うるせぇ、と不機嫌な声が返って来たところでラギー少年が私を救出し、そのまま私は洗濯物を干す為にランドリーへ向かった。