呼び方の話
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あ〜昆布ちゃんだぁ〜、と間延びした声を私の耳が捉え、身体を強張らせる。うわ、最悪。今日の占いは最下位じゃなかった筈でしょ、と思うがそもそも占いなんて確認してない事に気がついて、せめてもの抵抗に手にしていたほうきを剣のように構えた。
「フロイド少年、すてい!」
「やだ。」
クルーウェル先生のようにキツめに声を上げるが、そんなのはフロイド少年に効く筈もなく構えたほうきごとその長い手足で抱きしめられる。彼の場合手加減というものを知らないものだから半端なく痛い、というか苦しい。ギュウギュウと締め付けられるのはまさにウツボで、ミシミシと骨が音を立てた。
「ちょ、ギブギブ!死ぬ!」
毎度の事だがユウちゃんはよくこれに耐えてるなと思う。私以上にフロイド少年に絡まれる事の多い彼女は上手くあしらっているようで、あまり本気で抱き"締められて"いるところを見た事がない。この件については尊敬する。マジで。あぁ、たまには真面目に掃除でもするかなんて考えるんじゃなかった。
「おーい、フロイド!アイ!」
「アイ"さん"な!!」
唐突に私を呼び捨てにした声に大声で反論すると、フロイド少年の意識がそちらの声に持っていかれてギュウギュウと締められていた身体が解放された。一気に流れ込んでくる酸素を噎せつつも堪能し、少しフロイド少年から距離を取る。骨が折れないだけマシだがまた締められては堪ったものじゃない。この少年は距離感というものを覚えたほうが良いと思うが、そもそも教えられる人が居なかった事に気付いて大きな溜息をついた。
「何してたんだ?」
先程の声の主がフロイド少年の背後の私を覗き込み問いかける。その声の主はカリム少年で、少年の背後にはジャミル少年とユウちゃんが佇んでいた。
目敏くユウちゃんを見つけたフロイド少年が、小エビちゃんとハートマークを撒き散らしたような甘い声でユウちゃんを呼び、彼女を抱きしめるべく腕を広げる。思わずうへぇ、と小さな声が漏れて、それに気がついたのかジャミル少年と目があった。
あ、そうだ。今の内に逃げよう。そもそも真面目に掃除なんて柄じゃないし、何よりカリム少年とフロイド少年の組み合わせなんて絶対面倒臭い。断言できる。ジャミル少年には申し訳ないが逃げるなら今しかない。
そそくさとその場を後にするべく、優しくユウちゃんを抱くフロイド少年の横を通り過ぎると、アイさん、と名前を呼ばれて優しく肩を叩かれる。嫌な予感がしながらそちらを見ると、それはもう美しい笑みを浮かべるジャミル少年がいらっしゃった。