呼び方の話
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自分の顔を掌で覆い、そのまま深く折り曲げた膝に額を付ける。支えを失ったほうきが地面に倒れるかとも思ったが、それは途中で誰かが受け止めたらしく叩きつけられたような音はしなかった。多分ジャミル少年だろう。
「大丈夫か?」
私の目の前に誰かがしゃがみ込んだ気配がする。それは多分、カリム"少年"。大丈夫、大丈夫。ただちょっと、急に慣れない呼ばれ方をしたものだから驚いただけだ。早く熱も引いてくれ。煩い心臓も、早く黙ってくれ。そうでなければ、冗談で済まされなくなる。
鼻からゆっくりと息を吸い込み、はぁと吐き出す。つまりは深呼吸をしてガバッと勢いよく顔を上げると案の定目の前にカリム少年の顔があった。
(大丈夫、大丈夫。彼はカリム"少年"だから。)
うわっとびっくりしたように目を見開くカリム少年の鼻を摘み、馬鹿にするように笑ってやると私はそのまま立ち上がった。チラリとユウちゃんと目があって、ちょっと申し訳なくなりながらも、今回のは事故だから許してほしいと勝手に私の都合を押し付けてひらりと右手を振る。決してカリム少年に疾しい気持ちは持っていないとアピールをしたつもりだったが、多分それは伝わっていないだろう。ジャミル少年の視線があるからいつものようにあからさまな不機嫌さはないが、ご機嫌とは言いづらい表情を引っ提げて此方へと駆け寄ってくる。それに不機嫌になるのは勿論フロイド少年で、完璧な悪循環に巻き込まれる前に私はその場を後にした。
「あー……今日は厄日じゃん。いや、ジャミル少年の方が酷いか。」
私に押し付けられたほうきを片手に、不機嫌なフロイド少年とユウちゃんのご機嫌を取りつつカリム少年の相手をしなければならないジャミル少年にはちょっと同情する。かと言って反省も後悔もしないが。
(……クルーウェル先生に会いたい。)
疲れた。もうとにかく癒しがほしい。少年とか青年とかユウちゃんとかのなんやかんやを全部投げ捨てて"
「あー……もう二度と真面目に仕事なんてしない。」
とりあえず見慣れたハーツラビュル寮生の二人組の背中を見つけて八つ当たりとばかりに思いっきり叩いておいた。