Wellcome to the Villain's world.
Name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ダメじゃありませんか。勝手に
「こ、校則違反……?」
大袈裟な空間に不釣り合いな程に聴き慣れた単語。けれどもそれを発したのは烏のようなものを模した仮面をつけた男性。シルクハットを被りコートを肩にかけたその様はどう見ても不審者だ。一瞬救世主のようにも思えたが、その形はどう足掻いでもそうとはとれず、あたしは敵が増えたのだと判断して再度背中に女の子を庇った。それには気づかなかったのかそれともどうでもいいのか、目の前の男性は一人で話を進めていく。どうやらこの人はこの場所……ナイトレイブンカレッジに詳しいようで、鏡の部屋に戻るようにとこちらに指示をしてきた。
(さて、どうするべきか。)
正直に言うと、あたしはこの人を悪人だと断定出来ずにいた。多少適当なところはあるが、どうやらこの人はあたし達を生徒と勘違いをしているようで危害を加えようとしているようには思えないのだ。かと言って善人と言うには胡散臭さが爆発している。男性はあたし達に背中を向けて図書室を出て行く。その背中を追うべきかちらりと女の子の方を見遣ると、彼女も同じ考えなのだろう、どうしようとこちらを見ていたものだから、あたしは思わず小さく溜息を吐き出した。
そもそも柄じゃないのだ。誰かを守るとか責任を負うとか。それでも、この子供に判断を任せるなんていい大人がして良いわけもなく、あたしが判断を下さないといけない。胃の角がジリっと熱くなったような気がした。
「……ついて行こう。あの人なら何か知ってるかもしれない。ここが何処なのかとか、帰る方法とか。」
「そうですね。」
とりあえず傍らにふよふよと浮いていた猫の首元のリボンを引っ掴んで男性を追うべく図書室を出た。何やら文句をぶちまけているが知ったこっちゃない。炎を吐き出されても男性が対処してくれるだろうと彼の背中を探した。それは先に鏡の部屋に戻ってしまったのかと思ったが、その予想は外れて、男性は図書室を出てすぐの廊下に佇んでいた。それから女の子が一瞬ちらりとこちらを見て、意を決したように口を開いた。
「あの、ここは何処なんですか?」
「だから先程も言ったでしょう。優秀な魔法士を育成する魔法士育成学校だと。」
男性の口から当たり前のように発せられた物は彼からしたら常識的な事なのだろうが、こちらからしたら回答になっていない。それに出鼻を挫かれたのか女の子は口を噤んでしまって、仕方がないからフォローするべくあたしが口を挟んだ。
「知識不足で申し訳ありませんが、魔法士とか育成学校とかよく分かっていなくて。もう少し詳しくお話しいただいてもよろしいですか?」
「仕方ありませんね。いいでしょう。私、優しいので。」
ニタリ、と仮面の下の目元が歪む。それから何故か楽しそうな声色で諸々の質問に答えてくれた彼の名前がクロウリーというのだと知ったところで、結局微妙にすれ違っているもどかしさを拭う事は出来なかった。