真紅の暴君
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どうしたものかと考えるのは、先程のローズハートくんの事ではなくて、今晩の献立についてだ。予定では参考となるレシピ本を入手していた筈なのだが、残念ながらそれは手に入らなかった。まぁ、逃げたのはあたしの意思だし、それに関してはどうでもいいのだけども。
あーでもないこーでもないと、適当に2、3献立を考えながらメインストリートを進む。けれど思いつくメニューはどれもイマイチだ。ユウちゃんとあたしだけなら兎も角、食べ盛りの男子高校生2人とグリムの胃袋を満たすには、どれもボリュームが足りない。かと言って品数を増やすのは面倒だし、何よりあたしの作れる料理のレパートリーはそれ程豊富じゃない。理想としてはボリュームのあるメイン料理と野菜中心のサイドメニューを1、2品。それから汁物程度で済ませてしまいたい。
(揚げ物はボリュームあるけど、後片付けが面倒だしなぁ。)
どのみち後片付けはユウちゃん達がしてくれるからあたしには関係ないのだけど、彼女達が後片付けに取り掛かる前に油だけでも処理しておかないと、グリムの放った炎が燃え移ったりでもしたら堪らない。いや、そもそも夕食の片付けをしているだけで炎やら風やら大釜やらが飛び交うのが可笑しな話なのだが。
ふと横道に視線をやると、少し先の方にスマホと睨めっこをするけーくんの姿が見える。寮に戻る途中だろうか、何処となく真剣な雰囲気はいつものけーくんの軽いイメージを払拭していた。
(あぁ、そういえば。けーくんはマジカメとかいうSNSのヘビーユーザーなんだっけ。)
誰に聞いたかまでは既に覚えていないが、その結論に1人納得して、あたしはけーくんと目が合う前にこちらから視線を外した。
あーうん。もういや。数日前に似たようなメニューにした気もするが、何も思いつかない。これ以上時間を無駄にしても良い事はないだろうから、諦めて今日の献立はオムライスにしよう。自分の分はオムレツで。それでサイドメニューにツナサラダを付けておけば、少なくともスペードくんとグリムからは苦情は出ないだろう。多分。
そうだ、もう一品アレも作ろうかな。じゃがいもとトマトにチーズを乗せてレンジでチンするやつ。料理名は分からないが、母が良く作ってくれていたソレは手軽で美味しいし、それなりにボリュームもある。丁度いいかもしれない。
あれは何で味付けされてたんだろうか。胡椒は確実としても、料理酒は?未だに料理酒を使うのと使わないとでイマイチ味の違いが分からないあたしにとって、酒の有無はソレ程重要ではないのだけど、昔母に言われた気がする。"料理酒は味付けの為に入れるんじゃないのよ"と。うーん、何の為に入れてるんだったか。思い出せない。こんな事なら、もっと母に料理を習っておけばよかった。きっと親孝行にもなっただろうに。
(親孝行したい時には親はなしって、本当なんだな。)
そんな事、今更思い知ったところでどうしようもないのだけど。