Wellcome to the Villain's world.
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少し時間が空いてあたしも女の子の入っていった部屋に辿り着く。扉を引くとどうやら図書館のようだ。背の高い棚に収められた本と埃っぽい匂いは妙にリアルだ。
その部屋の中央辺りで目当ての子を見つけると上がった息を整えつつ近寄る。流石に無言で背後に立つなんて事はする訳もなく、適度な距離を保ったまま声をかけた。
「あの……。」
「……え?」
小さな声を上げて振り向いた女の子の先には耳から炎のようなものが出ている猫が浮いている。思わずパチクリと瞬きを繰り返しごしごしと手の甲で目を擦った。それからもう一度瞼を持ち上げるが目の前の光景は変わらない。ハハハと乾いた笑い声を上げて適当に椅子を引くとそこに腰を下ろし目の前の机に突っ伏す。出来れば横になって寝たいが仕方がない。色々ともう限界だった。どうせ布団の中のあたしはぬくぬくと毛布にくるまっている。夢の中の体制なんて関係ないだろう。そうして無理矢理意識を落としてしまおうとしたのに、それはできなかった。
「起きてください!」
必死な声に落ちようとすらしていなかった思考が持ち上がる。つられて顔を上げると可愛らしい顔を不安で歪めた女の子が必死あたしに呼びかけていた。訳が分からないのは多分この子も一緒で、それならばあたしはこの子を守る責任がある。だってあたしはこの子よりも大人だから。ギリと奥歯がすり減った感覚がする。いつもそうだ。大人として正しくあらなければ。あたしだって本当は、まだまだ子供でいたいのに。
あたしは必死であたしの腕を掴み立ち上がらせようとするその子に従って、ガタリをお行儀悪くも大きな音を立てて立ち上がる。まずは目の前の火を吐く猫から彼女をどうにか逃がさないと。あたしの身長では彼女を庇いきれないが、せめてもの抵抗で女の子をあたしの後ろに追いやりじりじりと後退りしながら出口に近づいていく。それに気づいたのか猫は口を開いた。
「大人しくその服を寄越すんだゾ!さもなくば丸焼きに……。」
ピシャリと何かがその猫の言葉を遮る。一瞬空気が張った気がして、今だとばかりに女の子の腕を取り走りだそうと方向転換をする。
あたしは別に強くない。武道の心得があるわけでもないし、漫画の主人公よろしく勇気がある訳でもなければ考えなしに無茶が出来るわけでもない。そんなあたしがこの子を守るために出来る事なんて逃げるしかないのだ。格好悪くても。早く、と振り返って彼女に告げるよりも先に待ちなさい、と誰かの声があたしを引き留めた。