真紅の暴君
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(そうだ、ハーツラビュル寮の寮長の名前だ。)
リドル寮長と呼んでいたエースくんと、ローズハート寮長と呼んでいたスペードくん。単純に考えて同じ寮に寮長が2人居るとは考え難いから、リドル・ローズハートとという1人の名前なのだろう。そこまで繋がると後は芋蔓式だ。
今話している声はトレイくんのもの。それに相槌を打っているのがエースくんとスペードくん。女の子の声はユウちゃんのものだから、きっと側にはグリムも居るのだろう。成る程、詳しくは聞いていないが、仲直りに失敗したエースくんはその苛立ちの矛先をトレイくんに向けたらしい。何故そこでトレイくんを選んだのかは分からないが、どうやら話の内容的にトレイくんはローズハートくんの事をよく知っているようだから、多分それでだろう。
あたしはエースくんとスペードくんに聞いた限りでしかローズハートくんの事は知らないが、何というか、随分と厳格というか、暴君というか……。あまり良い印象は抱かなかった。けれど彼が暴君なのは、元となるハートの女王の法律がそうさせているだけで、ローズハートくん自身はルール違反に厳しいだけなのではとも思った。つまりは、エースくん達から聞いただけだとよく分からなかったのだ。それなのに、トレイくんの口から溢れるローズハートくんの過去はあまりにも重くて、ついつい会っても居ない彼への感情が同情へと傾いていく。
「リドルは、厳しいルールで縛ることが相手のためになると思ってる。厳しいルールで縛られて、恐れで支配してこそ成長できると信じてるんだ。かつての自分がそうだったように。」
ゲームや漫画じゃあるまいし、そうそうこんな過去を抱えてる人物なんて居ないだろう。可哀想だ。単純に。けれどあたしにはどうする事も出来ない。過去を変える事は出来ないし、会ったこともないローズハートくんを励ます事も諭す事も出来ない。精々あたしに出来る事と言えば、今すぐにここから立ち去ってこの話を聞かなかった事にするくらいだ。
卑怯な保身だと思う。けれど他にどうすればいい?あたしには人1人の人生を動かすような力はない。魔法も使えない。大体、付き合いの長いであろうトレイくんがどうにも出来なかったのに、見ず知らずのあたしに何が出来ると言うのか。彼を救いたいなんて烏滸がましいにも程がある。あたしは大人しく彼等に見つからないように方向転換をして一歩踏み出そうとしたけれど、それはエースくんの声の所為で動きを止めた。
「リドル寮長があんななのは、アンタのせいだわ。」
先輩相手に随分と生意気な台詞だ。それでもエースくんの口からつらつらと溢れ落ちるのは