真紅の暴君
Name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
この学園は早急に図書委員なるものを発足すべきだと思う。主にあたしの為に。
本日の雑用係の仕事は図書室の本の整理だった。この学園の生徒は何分細かい事を気にしない質の子が多いらしく、適当に詰められた本が探しにくいからといつかやろうと思っていたところでして、と声を張り上げるクロウリー先生の笑みが酷く昔のような気がする。それは今朝の出来事の筈なのだけれど。それ程までに酷かった。あたしの感想はその一言だけだ。
図書室の広さは初日に分かってはいたけれど、適当に本を詰めると言ってもせいぜい並べる順番が違う程度の物だと思っていたのだ。作者毎に纏まっていないとか、その程度。けれど実際にはその予想を遥かに超えていた。何せ棚まで違う。何が酷いって入り口近くの新刊コーナーに3年前に発行された本が収まっているくらいだ。明らかに新刊じゃない。仕方なくあたしはその本を手に取ってはみたものの、それが本来収まっていたであろう棚を見つけるのにまた一苦労する羽目になる。いかんせん、この図書室は広すぎる。彼方此方へと右往左往と朝から休憩も取らず手を動かしていたけれど、その努力も虚しく終業を告げる鐘が鳴った。
あ、と思ってももう遅い。あたしはクロウリー先生に終わらなかった旨を報告しに行かなければならない。はぁ、と重い溜息を吐いたのと同時に思い浮かんだ愚痴が冒頭のものである。
あたしはとりあえず今手にしている本を納めようと本棚を移動する。あぁ、そう言えば先程チラリと見えたがこの本棚の隣は料理本のコーナーらしかった。後で2、3冊広げてみよう。流石にうろ覚えの料理ばかりだとレパートリーが少な過ぎてユウちゃんの身体に良くない。借りられるのなら借りて、ユウちゃんさえ良ければ2人で読んでアレが食べたいコレが食べたいとリクエストを貰ってしまえば献立にも暫くは悩まなくて良くなる。我ながら良い案だ、と足を隣の本棚へと向けるその瞬間に聞き覚えのある声が耳をついた。
「リドルの全ては、厳しいルールの中で"造られた"ものだからだ。」
「え……?」
馴染みのある声にあたしの心の声が重なり、無意識に本棚に背中を寄せて聞き耳を立てる。明らかに突入するべきではない空気に息を潜めた。
(リドル……リドル……。誰だっけ、人の名前だとは思うんだけど……。)
何処かで聞いたことのある名前に必死で頭の中を探る。どうも人の名前と顔を覚えるのは苦手だ。
そうこうしている内に隣の列の本棚に居る彼等の話は進んでいってしまう。その中に一つ女の子の声を見つけて、あぁ、ユウちゃんも居るのだな、と気づいた時、ピンと全てが繋がった。