Wellcome to the Villain's world.
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ごろりと寝返りをうつ。今夜何度目の寝返りだろうかと瞼を持ち上げないまま思考だけを浮かび上がらせた。早い話が眠れない。
いつものように仕事をして母親の用意した夕食を摂り、熱めの湯船に身体を沈めたのが数時間前。その後、そこそこやり込んでいるリズムゲームの体力を消費したとこまでが直前までの行動だった。
(あぁ、それのせいか。)
眠る前にスマホの光は良くないらしい。中々落ちていかない意識にそう結論付けて、もう一度身体の向きを変えた。さぁ、今度こそ。明日も仕事なのだから。誰に言い聞かすでもなく頭で反芻させると、やっとしっくりくる体制になったのかゆっくりと意識が落ちていった。
ザッザッと普段聴くことのないようなリズミカルな音。キシキシと家鳴りの様な音がそれに続く。小刻みに揺れる身体は整備されていない道路を走る車に乗っている感覚に似ていた。けれど聴き慣れたエンジン音は聞こえない。車ではないのか、と面倒ながらも瞼を持ち上げると辺りは暗く、数度の瞬きを繰り返して漸くじんわりと辺りが見渡せるようになった。
(馬車……に、森……?)
現代日本では凡そあり得ない景色に一瞬の迷いもなく夢だと結論付けて、持ち上げていた上半身を横たえる。あぁ折角深い眠りについていたのに。
微睡みの縁にいる思考が馬車の揺れの心地よさに沈んでいく。仕事まであと何時間眠れるだろうか、と現代の疲れた社会人に漏れず損得勘定のように考えたのが最後で、次に目を開けた時にはあたしの周りは火の海だった。
(……火?……火!?)
一瞬で覚醒する思考。見たことのない景色に知らない女の子と数多の棺。ふよふよと浮いている棺の中心には大きな鏡が置いてある。なんとも奇妙な夢、と小さく口に出したのはあたしなのかそれとも隣の女の子か分からず、ちらりと横目に女の子を確認すると既に居なかった。
「え?」
慌てて辺りをキョロキョロと見渡すとこの部屋の入り口であろう扉から出て行く人影が見えて反射的に追いかける。いい加減深い眠りにつかせて欲しい。こちとらあと数時間、下手すれば数十分後には化粧をして家を出なければならないのだ。こんな夢を見ていたら休まるものも休まらない。女の子の背中を追えどその距離は縮まらず、辺りの景色にも見覚えはない。身体的疲労と精神的疲労が同時に襲ってくる。辛い。それでも取り憑かれたように走っている現状は、多分目が覚めた時には覚えていないんだろう。待って、とそれなりに張り上げた声も虚しく、女の子は近くの部屋へ入り込んでしまった。