真紅の暴君
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(誰のせいだと思ってるんだ……。)
少なくともけーくんのことがなければここまでの疲労感は感じていない。あぁ、うん、でも多分けーくんの行動は優しさからなのだろうから、あたしの勘違いが悪いのだ。あたしは一つ大きな溜息を吐いた。まだ少し頬は熱いけれど。
「まぁまぁ。慣れない事すると疲れますよね。というわけで、疲れた時には甘い物だ。出来立てマロンタルトを召し上がれ。」
そんなあたしを見兼ねたのか、トレイくんが話題を逸らすように切り分けたマロンタルトを各々の前に差し出す。全員からやったーと声が上がった。それには勿論、けーくんも含まれている。やっぱり彼はこれを狙っていたようだ。
「ふわぁぁ……甘くていい匂いなんだゾ~。」
「うん、美味しそうだね。」
タルトから香る甘い香りに皆の瞳がキラキラと輝く。その優しい光景にあたしの口元も緩んだ。
全員がタルトの乗った皿を受け取り、適当に各々の目の前の作業台に置く。テーブルに着くには一度キッチンから出ないといけないし、少しお行儀は悪いがこのまま立ち食いをする流れだ。だとすれば飲み物を用意するものでもないか、とあたしも大人しくトレイくんから受け取ったタルトにフォークを差した。
サクリ、と思っていたよりも抵抗なく一口分がフォークの先に乗る。あたしが知っているタルトはもう少し硬いような気がしたが、周囲から上がる上手いとういう感想にあたしも躊躇いなく口に運んだ。
(え……っ。)
ゆっくりと目を見開く。コレは、コレは!
サクリと軽い触感のタルト生地に、栗の風味がしっかりと効いたマロンペースト。間に挟まれたアーモンドクリームの香りがマロンペーストにアクセントをつけて、くどいと思わせない。美味しい。これならいくらでも食べられる。あたしは次々と口に運びたくなる気持ちを必死で押さえて、ゆっくりゆっくりと味わいながらタルトを頬張った。
「そだ。ねーねー、トレイくん、アレやってよ。」
ひとしきり皆がタルトの感想を口にすると、けーくんが急に意味深な言い回しをトレイくんに向ける。トレイくん本人には伝わったらしいが、周囲の人間にはよくわからない。案の定"アレ"とぼかした物に興味が釣られ、エースくんがアレって?と尋ねる。
「お前たち、好きな食べ物はなんだ?」
「オレは、チェリーパイとハンバーガー。」
「オレ様はツナ缶なんだゾ。あとは、チーズオムレツと、焼いた肉と、プリンと~。」
際限のないグリムを遮るようにスペードくんがオムライスと答える。それに続いてけーくんがラム肉のディアボロソースかけ、と少しマニアックな回答。皆が皆好き勝手に好物を上げていた。けれどそれがなんなんだろうと首をかしげると、トレイくんがそれじゃあ、いくぞ、と胸元に差していたペンを一振りした。