真紅の暴君
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「トレイ先輩、出来た分はどうしたらいいですか?」
「あぁそれなら、湯がくからとりあえず鍋に入れてくれ。」
はい、と了承の意を返すユウちゃんの言葉に返事をする眼鏡くんの名前を頭に刻み込んだ。どうやらトレイくん達魔法組も一段落ついたようで、大きな鍋いっぱいに剥き身になった栗が浮かんでいる。その中にあたし達が剥いた栗を追加しようとしたユウちゃんを止め、適当に夕食分の栗を取り分ける。多分栗ご飯に使う栗は湯がいていないはず。あたしの作業が終わったことを見届けてからユウちゃんは栗を鍋に投入した。
「で、今更なんだけど、コレ何を作ってるの?」
渋皮は全部とってしまったからちょっと残念だけれど渋皮煮ではない。あたしと同じように栗ご飯にするなら湯がく必要はないし、モンブランにするには多すぎる。いや、ハーツラビュル寮の寮生全員に配るのならこれくらいは必要なのかもしれないが。
「ローズハート寮長のマロンタルトですよ。」
「あぁ、今朝けーくんに言われたやつか。あれ、でも、買って返すって言ってなかった?」
「それが、ホールケーキじゃないとダメらしくて。」
「エースがそんなお金がないって言うんで作ることにしました。」
成程なぁ。ここの通貨はマドルというものらしいが、先日購買で化粧品を揃えた時の感覚からすると、日本のお金と価値はそう変わらないようで、ファンデーションやリップが1000マドル程度だった。勿論化粧品なんてものはピンからキリまである物だし、そこまではっきりとした示準ではないのだが。まぁ、そうなるとホールケーキなんて4000マドル弱はするようなもの学生がホイホイとは買えないか。そうなると手作りというのは合理的だ。栗も学園内で収穫してきたもののようだから、材料費も大分浮いただろうし。
「じゃあ、トレイくんが栗を湯がいてる間に粉類を振るっておこうか。」
「えー!まだ作業があるのか!?」
「あるある。いっぱいあるよ。お菓子作りなんて、ごはんを作るより難しいんだから!」
うげぇ、と苦い顔をするエースくんとスペードくんはユウちゃんの出来立てタルトを食べられる、という言葉に顔を上げる。ユウちゃんは猛獣使い的な才能があるとクロウリー先生に言われていたが、確かにその通りのようだ。彼女の素直な物言いが、素直じゃない彼らに火をつける。バランスがいい。
あたしは分量や手順の指示をトレイくんから貰い、久しぶりのお菓子作りに勤しんだ。