真紅の暴君
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キッチン戻ると、パチリと視界に光の粒子がはじけた。その光に一瞬目が眩んで擦る。じんわりとぼやけた視界がクリアになると、その粒子が栗だったことに気が付く。どうやらスペードくんと眼鏡くんとグリムが魔法で栗を剥いているようだ。自分がそこに混じっても意味がないのは重々分かっているので、大人しく魔法を使わず……いや、使えず、手作業で栗の下拵えをしているユウちゃんとエースくんの元へ向かった。
さて、ちらちらと視界に入る粒子と、だるそうなエースくんの手元から察するに、スペードくんは少し不器用で、反対にエースくんは酷く器用なようだ。二人とも籠の栗が減るスピードは変わらないが、実として残っている数には結構な差がある。あぁ、でも、スペードくんは魔法を使っているからかな。手作業ならエースくんとそれ程変わりはないのかもしれない。
(……いや、ないな。)
ボロボロになった栗の実を馬鹿にされたスペードくんとからかいの声を上げるエースくんの光景がありありと思い浮かんだ。
「あ、そうだ。この栗ちょっと分けてくれない?」
「どうするんですか?」
あたしはまだ皮のついている栗を手に取り、キッチンばさみで切り込みを入れる。そこからは手作業で硬い皮を剥いていくとあとは渋皮を残すだけとなった。流石にこれ以上は包丁がいる。あたしは包丁を握っているユウちゃんに栗を渡した。
「今日の夕食に栗ご飯はどうかなって。」
栗ご飯とみそ汁。それならメインは焼き魚かな。うーん、野菜が足りない。お浸しでもつけるか。というか、出汁の取り方大丈夫なんだろうか。実家に住んでいたあたしの料理スキルはせいぜい家庭科の授業で習った程度のもので、それすらも数年前の話なのだからはっきりとは覚えていない。昆布は水から入れるということだけ覚えているが、他はどうだったか。沸騰させてはいけないのは煮干しだっただろうか。
諸々と記憶を呼び起こそうと努力するが、どれも失敗に終わり、うーんと唸るあたしにグリムのきらきらとした視線が刺さる。
「栗ご飯、うまそーなんだゾ!」
「……自信はないよ。作ったことないし。」
大体の材料は見当がつくし、多分食べられないほど不味くはならないだろうが、実際に作ったことはないのだからどうなるかは作ってみないことにはわからない。そういえばスペードくんはあたしが料理が得意だと勘違いしていたような……。後で訂正しておかないと。あたしは苦笑いをエースくんに向けて、ユウちゃんに最後の一つの栗を任せた。