真紅の暴君
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「週に五日、平日は授業が終わってから……そうですね、準備の時間もあるでしょうし、18時から22時。土曜と日曜は相談しながらになりますが8時間は入っていただくかと思います。構いませんか?」
「え、あ、はい。大丈夫です。」
各々が皿に盛り付けた食事を挟んでバイトの面接のようなやり取りをしているこの光景に思考が追いつかない。一応話の方向としてはバイトができる方向に進んでいるらしいが、あたしの目の前にいるのは学生の筈だ。2年生だから17歳か。そんな彼の口から出てくる言葉は、店の中でも人事に関して権限を持っている役職であるかのようだ。
「あの、モストロ・ラウンジってどんなお店なのか教えてもらってもいいかな。クロウリー先生からは何も聞いてなくて。」
「モストロ・ラウンジとは慈悲深い僕が経営している飲食店です。」
「待って。」
アズールくんが一言で分かりやすく説明してくれたであろう言葉にストップをかける。右手を額に当て、左の掌はアズールくんへと向けた。その頭の中では先程のアズールくんの言葉がグルグルと回っている。
("僕が経営"?学園内で?17歳の少年が?)
色々と規格外過ぎないか。この学園の長であるクロウリー先生直々にアズールくんを紹介されたのだから、つまり、モストロ・ラウンジは学園公認ということになる。確かにこの学園は寮生活だし、学園に用意してもらえる食事は昼食だけだから飲食店は需要があるだろう。あたしだってユウちゃんとグリムの食事を毎日きっちり用意できる自信はない。夕食だけでもお店を頼れるのなら月に1、2回はお世話になりたいところだ。けれど、それなら学園が経営すれば良いのでは?態々学生に経営を任せなくても、と、そこまで考えたところで、誰かの男子校なのに、という声が思考を遮った。
その声はそこそこの声量があって、しかも聞き覚えがある。キョロキョロと視線を彷徨わせて食堂を見渡すと、エースくんとスペードくん、それからユウちゃんとグリム、けーくんと緑がかった短髪の男の子が話し込んでいた。
(……関係ない、か。)
誰か経営者であろうと、結局はお金を稼がないと生きていけない。ならばあたしが気にするべきところはそんなところではなくて、もっと生活に関わるところだ。あたしはアズールくんの前に掲げていた手を下ろしてからゆっくりと口を開いた。
「時給はいくら?」
アズールくんが眼鏡のブリッジを押し上げる。さぁ此処からが、勝負だ。