真紅の暴君
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「……ん?君たちなにか用?」
そうこうしていると、あたし達の気配に気付いたのかポンパドールの子がこちらを振り返る。彼の目元には、エースくん達程大きくはないが真っ赤なダイヤモンドが描かれていた。
「それ、何してんの?」
「これ?見ての通り薔薇を赤く塗ってるだけだけど。」
「えぇっ!?なんでそんなことを?」
大袈裟にのけ反ったスペードくんを見て反応がフレッシュでカワイーね!と言い放った彼を見て、あたしは思わず一歩距離を取った。
(に、苦手なタイプだ……。)
申し訳ないとは思う。思うのだけど、エースくん達を話題のニューカマーと評した次の瞬間に、間髪入れずにスマホを構えた彼とは相入れない。何せあたしは、写真が苦手なのだ。とりあえず自撮りモードにされた画面の外に逃げる事が叶わなかったあたしは、反射的に手で目元を隠した。
「あ、これマジカメ上げていい?タグ付けしたいから名前教えてよ。」
(え、あ、気にしないんだ……?)
てっきりノリが悪いとでも言われるかとも思ったが、彼は撮った写真をざっと確認したにも関わらず特に反応を見せなかった。あ、もしかしたら今の写真はあたし達の名前を聞くためのツールなのかもしれない。だから顔が写ってようがなかろうが、盛れていようがなかろうが関係ないのかもしれない。だとしたら相当のコミュ力の持ち主だろう。ぐぬぬ、心内で歯を食いしばった。
「デュース・スペードです。」
「エース。」
「グリムとその子分、ユウなんだゾ!」
グリムの相変わらずの子分扱いに、ユウちゃんが訂正するかなと思ったが、本人は気にしていないらしく、変に遠慮した沈黙が気まずい。あたしは慌てて名乗ると、よろしくね、と付け加えた。
「最後がアイちゃんっと……ほい、アップ完了っと♪あ、オレはデュースちゃんたちの先輩で3年のケイト・ダイヤモンドくんでーす。ケイトくんって呼んでね。けーくん♡でもいいよ。」
よろよろ〜と続けるダイヤモンドくんのノリはとにかく軽い。この手のタイプは自分で避けてきたのもあって、あたしの周りには居なかったな、と数少ない友人を思い浮かべた。
エースくんやスペードくんにユウちゃん。そしてグリム。昨日出会ったばかりの彼らはあたしにとって庇護対象でしかない。そう、友人ではないのだ。あたしは頭に浮かんだ帰りたいという欲を首を振ることで断ち切った。