真紅の暴君
Name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(完全に男子高校生の食欲舐めてた……。)
美味しい、と口元を緩めるユウちゃんを尻目に大皿に盛り付けられた卵サンドに目を向けるとあっという間にそれはエースくんとスペードくん、そしてグリムの腹の中へと消えていく。時間がないから、とシャワールームから直行したキッチンで、残ったらあたし達3人の夕食にしようと一パックの卵を丸々使って作り上げた卵サンドはそれなりの量があった。そう、確かにあったのだ。けれど、いただきます、と全員揃って手を合わせた次の瞬間にはこれだ。
(すっからかん……。)
あれだけ大量に作った卵サンドは一つも残っていない。反面、個別に盛り付けたグリーンサラダは未だ全員の皿に瑞々しさを残している。朝食だから軽めでいいと思ったが、食べ盛りの彼らには足りなかったかもしれないな、と少し申し訳なく思った。
あたしは辛うじて手にしていた一つ目の卵サンドを噛みしめる。既に卵サンドはこれとユウちゃんが最初に自身のお皿に取り分けたもので最後である。うーん、流石にあたしも一つじゃ足りないかもしれない。チラリとユウちゃんの方へ視線を向けると、それに恨めしさが滲んでいたのか、彼女の卵サンドを口元へ運ぼうとしていた手が止まった。
「アイさん、良かったらどうぞ。」
まだ口はつけてませんから、とおずおずと卵サンドをこちらへ差し出してくる。あたしはそれを軽く手で押し返して、大丈夫だからとグリーンサラダを口に運んだ。それを見てユウちゃんは諦めたように卵サンドを再度自分の口元へ運んだ。
ユウちゃんも最初にいくつかお皿に取り分けていたが、自分が食べる分だけを取った筈なのだからあたしに譲ってしまうと足りなくなるだろう。成長期にそれは良くない。
あたしはサラダをゆっくり噛み締めながら、一向に減らないエースくん達のサラダを捉えて話題を変えるべく、ちゃんと野菜も食べるようにと彼等を促した。別に野菜が嫌いなわけでもないでしょうに、渋々とサラダを口に運ぶ彼等に口元が緩む。基本的に彼等は良い子なのだ。多分。ちょっとトラブルメーカーかもしれないけれど。
あたしは最後の一口を口に押し込むと手を合わせた。あぁ、美味しかった、と少し物足りない腹を水分で満たし、後片付けをするべく席を立つ。けれど手にしたお皿はユウちゃんに奪われ、更にはエースくんの手で肩を押されてソファへ沈められる。え、と思わず漏れた声にスペードくんの片付けは僕達が、という言葉が返ってくる。
(あぁ、なんて良い子達なんだろう。)
あたしはキッチンから聞こえてくる賑やかな声に終始頬を緩めていた。