真紅の暴君
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おはよう、と挨拶をすると、はよーと間延びした声が返ってくる。そんな様子だが頭ははっきり覚醒しているようでスペードくんとのやりとりは淀みない。意外と朝には強いのかもしれない。彼は視線をスペードくんに向けて今朝方のハーツラビュル寮寮長の様子を聞いている。
「……ところで、寮長、まだ怒ってた?」
「そうでもない。少しイライラしている様子で起床時間を守らなかった奴が……3人ほどお前と同じ目にあってたくらいだ。」
「全然そうでもなくないじゃん!めっちゃ怒ってるじゃん!」
「確かに……。ねぇ、スペードくん、ハーツラビュル寮の寮長ってどんな人なの?」
幾ら食べ物の恨みは恐ろしいとはいえ、他の寮生に八つ当たりする程の事だろうか。エースくんの食べたタルトは、別に最後の一つだったというわけではないのだし寮長の口にタルトが入らないなんて事態はないはずで。昨晩グリムが言っていたように誰かの誕生日ケーキなのだとしたら怒るのにも無理はないが、それこそ八つ当たりするほどタルトに執着を持つのは違和感がある。あたしは何故か今日謝罪に行くと言うエースくんに同行しなければならないし、少しでも情報を集めようと口を開いた。
「ローズハート寮長は……。」
「てか、その前に飯にしねぇ?絶対長くなるし。特にハートの女王の法律とか。」
「確かにそうだな。」
確かに玄関前で立ち話というのもなんだな、とあたしはエースくんの提案に賛成して、着替えてくるという彼の背中を見送った。あたしも着替えないと、とシャワールームを目指す前にスペードくんを談話室に案内するべく方向転換をした。
「スペードくんは談話室で待っててくれる?あ、そうだ、スペードくんって朝食は済ませた?」
質問攻めで申し訳ないが、彼がまだ朝食を摂っていないというなら予定よりも多めに用意しなければならないのだから仕方ない。食材は昨日の内にクロウリー先生が持ってきてくれたものがいくつかあるが、直ぐに食べられるものはパンくらいで、あとは調理をしなければいけない物ばかりだ。今日は少し時間を食ってしまったし、手抜きで申し訳ないが卵サンドにでもしよう。卵サンドと、あとはそうだなサラダを付ければ多少バランスは摂れるか。
あたしはスペードくんのまだです、という言葉にそっか、と軽く返して着替えに向かった。