真紅の暴君
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あたしはエースくんの着替えを用意する前に布団の回収のために外へ出る。僅かに流れる風が心地好い。そういえば、今は何月なのだろう。入学式ということは4月だろうか。
(でも、皆、英名なんだよなぁ。)
エースくんもスペードくんもクロウリー先生も。そしてあたしやユウちゃんの名前を珍しいというくらいだから、もしかしたら異世界といえど、英語圏の海外に近いのかもしれない。だとすれば、入学式が9月ということもあり得る。まぁ、それは明日にでも誰かに聞いてみればいい。今日は何日ですか、なんて質問、別に誰でも答えてくれるだろうし。
あたしは布団を抱えて自室に戻ると、ベッドメイキングをするよりも先に、昨日クロウリー先生から頂いた服の中からエースくんが着られそうな物を選んでシャワー室に向かう。更衣室に入るとエースくんの衣服を見つけてその側に着替えを置いた。
「エースくん、着替え置いとくね。」
はーい、と軽い返事が聞こえた所で更衣室を出る。なんかやっている事が寮母というよりもお母さんじゃないか、と思い立った所で首を振った。あくまでも、あたしはこの学園の雑用係兼オンボロ寮の寮母である。距離感は正しくとっておかないと。
あたしは少し早足で自室に戻った。さて、これからやらなければいけない事が何個かある。まずはベッドメイキングだ。残念ながら、この干したてふかふかのベッドに眠るのはあたしではないのだが。ベッドメイキングが終わってもエースくんが戻ってこない事を確認したら、今度はヴィルくん直伝のストレッチだ。
床に座りゆっくりと身体を伸ばしていく。筋トレというよりはヨガのように身体をほぐす方に重点が置かれているようで、これならあたしも無理なくできそうだ。3日坊主にならないようにしないと。
「アイさーん。上がったけど。」
何度か体制を変えた時、トントンとノックの音がして外から声がかかる。それは間違いなくエースくんの声で、あたしはストレッチを一時中断してドアを開けた。
ドアを開けた先には当たり前だがエースくんの姿がある。首にかけたタオルで髪の毛から滴る水滴を拭いたいようだが、いかんせん彼はいま大きな首輪をつけられている。上手く出来ない事もあって随分と不機嫌そうだ。
「エースくん、ここのベッド使って。今日シーツ洗濯したばかりだから綺麗だし。」
あたしはエースくんから洗濯物を受け取りながら言う。あたしがシャワーを浴びている間に洗濯機にかけてしまおう。もう夜も遅いし乾くかどうかは賭けに近いが。なんて事を考えていると、何、そんなオレと寝たいワケ?とあくどい顔をしたエースくんがベッドに寝転ぶ。それから少し端に寄り、スペースを作るとポンポンと叩く。目元のハートマークが落ちて少し幼くなった顔立ちの彼の誘惑に乗るわけにもいかず、あたしは先程のユウちゃんのようにそれをきっぱり切り捨ててから部屋を出た。