真紅の暴君
Name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
寮母関係ない、と思うよりもまず、エースくんはオンボロ寮生じゃないという思いが胸中を埋めたが、それに文句を言う前に彼の瞳がそれを止めた。パチリと視線が合ったまま、あたしは一応口角を上げる。
あーうん、間違いなく彼は弟なんだろうな。ユウちゃんに味方してもらえなかった事がよっぽど悔しかったのか、それとも単純にハーツラビュル寮の寮長が大人に弱いのか知らないが、あたしを巻き込みたいらしい。そのおねだり方法がなんとも可愛らしい。仕方ないなぁ、とあたしも両肩を落とした。
「で?とりあえずオレはどこで寝ればいいワケ?」
「オメー本当に泊まる気か。」
チラリとあたしの方を見てくるのはユウちゃんで、判断はあたしに任されるらしい。まぁ、一応寮母なのだから当然か。あたしはいいよ、と軽く許可を出した。
さて、別にエースくんが泊まる事に問題はない。そう、その事自体は問題ないのだが、その他に少々問題がある。下着はないが卒業生の運動着は男物ばかりだからエースくんのサイズもあるだろうし、制服のシャツは夜の内に洗濯してしまえばいい。が、一番の問題は寝場所だ。掃除してあるのはユウちゃんの部屋と、それから先程片付けたばかりのあたしの部屋だけだ。昨日の自室の状況を考えると他の部屋も人が寝られる状態ではないだろう。うーん、でもなぁ。成長期の男子を談話室のソファで寝させるのもなぁ。彼は身長もあるし、辛いだろう。
そうこう悩んでいる間にグリムとの間で会話が進んだみたいで、泊まれる部屋がないと知ったエースくんがユウちゃんに詰め寄っていた。
「ユウ〜、部屋に泊めてよ。オレ、スマートだから幅取らないしさ。ねっ。」
「待て待て。それは流石に許可できないからね。」
「談話室のソファへどうぞ。」
そう言ってグリムと一緒に談話室を出て行くユウちゃんをエースくんと見送る。大人しそうな子だと思っていたが、意外と肝が座っているというか、何というか。素直な子らしいユウちゃんにきっぱりと切り捨てられたエースくんがいそいそとソファに向かうのを呼び止めた。
「エースくん、とりあえずシャワー浴びておいで。下着はないけど他の着替えはあるから。」
流石にあれ程ドロドロになった上にこんな埃だらけの場所を歩いた身体で寝るのは気持ち悪かったのだろう。彼は大人しくあたしの言葉に従い、シャワー室へと向かった。