真紅の暴君
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「苺タルト?」
あたし達三人の声が重なる。それに対して、エースくんはそ、と短く返した。
彼が言うには、寮に戻った後空腹を満たすべく立ち寄ったキッチンで苺タルトを見つけたらしい。そしてそれはホールで三つも合ったものだから、勝手に食べていい物と判断したエースくんが食べてしまった、と。
「それで?」
「寮長に見つかって
成る程、つまみ食いか。思っていたよりも可愛らしい理由に、一周回って反応に困ってしまう。とりあえずあたしはそ、そうなんだ、と言葉を少し詰まらせて無難な返事を返したが、ユウちゃんとグリムは大きな目を細めてジトっと湿気の多そうな眼差しを向けていた。
それからグリムがどっちもどっちだと溜め息を漏らす。まぁ分からんでもない。ユウちゃんも何も言いはしないが呆れている様子で、両肩を落としている。
「たかがタルトを盗み食いしたぐらいで魔法封じられるのはおかしくね!?魔法士にとっては手枷と足枷つけられるみたいなもんじゃん。」
しかも三つもあるのに、と続けるエースくんの言い分も分からなくもないのだ。三つもあるホールケーキの内の1ピースなんて少量の範囲内だろうし、それだけの量を一人で食べられる人の方が少ないだろうからそもそも寮生に配る予定だった可能性だってある。
かと言って、エースくんの言い分が正しいのかと言われれば、それは迷わず否だ。彼は先程自分で"盗み食い"だと言った。そう、盗んでいるのだ。それなら彼のその行動は肯定される筈もない。つまりはグリムの言う、どっちもどっち、という言葉が表現としては一番正しいのだろう。
エースくんはしばらくウダウダ文句を言っていたが、それはユウちゃんの言葉でピタリとやんだ。
「まず、謝ったの?」
「う……。オレ、ユウなら絶対寮長が横暴だって言ってくれると思ってたんだけどぉ?」
そこでユウ"達"なら、と言わない辺り、彼も十分自分も悪いと自覚しているらしい。大人であるあたしなら味方はしてくれないだろうと踏んでいるのだろう。なら、あたしから言うこともないか、と話の流れを見守る事にして口を閉じる。
ユウちゃんは明日謝りに行こうとエースくんも宥めた。
「……ユウが提案したんだから一緒に来いよな。あとアイさんも!」
「なんであたし?」
ユウちゃんも関係はないが、あたしはもっと関係ないだろう。着いて行く必要あるか?と首を傾げると、返ってきたのはだってオンボロ寮の寮母じゃん!というよく分からない回答だった。