真紅の暴君
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「どちら様ですか?」
ドアの前で扉を開けずに声をかける。あ、ゴースト達に聞けば誰がドアの前に立っているのか分かったかもしれない。今度から夜間はそうしよう。グリムが居るとはいえ、女性二人がセキュリティに不安しかないオンボロ寮に眠っているのだ。警戒し過ぎということはないだろう。
あたしの声にノックの音が止まった。
「オレ、エース。」
「エースくん?ハーツラビュル寮に戻ったんじゃないの?」
返ってきた返事にあたしは何の警戒心も持たずゆっくりとドアを開ける。ギギッと鈍い音が鳴った。
「オレ、も〜、絶対ハーツラビュルには戻らねぇ。今日からオレ、ここの寮生になる!」
突然の大きな声にびくりと肩を跳ねさせる。それからユウちゃんの部屋の方に耳を澄ませて、彼女の動向を確認する。……うーん、音はしないみたいだけど、流石に起きてしまったかまでは分からないな。あたしは静かに、との意味を込めて人差し指を自分の唇に当てた。
「とりあえず話を聞きたいから談話室に行こうか。」
「ハイハイ。」
あたしはハートの形をした首輪を嵌めているエースくんを談話室に誘導する。彼がここまでむくれているのは十中八九それが原因だろう。果てさて、今回は何をやらかしたのやら、と何を聞くでもなく彼に原因があると思ってしまうだけのトラブルを今日一日で引き起こした彼はある意味で天才である。"ある意味で"だが。
ふとギシギシと床板の軋む音が増えた気がして目をやると、薄ぼんやりとした人影が見えた。
「あ……アイさん……と、エース?」
「エース!お前さっきから煩いんだゾ!」
あぁ、結局全員集合である。起こしてしまった事に少し申し訳ない気持ちを抱きながらも、エースくんがここにいる事情を説明しようにもあたしはそれを知らない。結局ユウちゃん達にも談話室に向かおうと促す事しか出来なくて、背中を押した。
(今日、眠れるんだろうか。)
エースくんの話が終わった後シャワーを浴びて、それからヴィルくんに伝授されたストレッチか。気が重い。寝たい。寧ろ昨日後回しにした自室の片付けをこなしたことを褒めて欲しいくらいなのに。
けれど少し先を行く三人を見ているとまだまだ元気があるようで、若いっていいなぁ、と自分の年齢にそぐわない感想を抱いて溜息を吐いた。