真紅の暴君
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ギシギシと床板を鳴らして歩く度に埃が舞う。このままだとお風呂に入ってもあまり意味がない。うーん、掃除は部屋よりも先に廊下からすべきかな。今日はもうその気力はないけど。
あたしは今朝方干していた布団を取りに行こうとオンボロ寮の廊下を進んだ。寮に戻ってすぐ取り込まなかったのは、単純に埃塗れの部屋に折角干した布団を持ち込みたくなかったからだ。ワンピースから再度運動着に着替えて片付けをしていたらあっという間にまた頂点を越えてしまった。本日もまた夜更かしだ。
隣の部屋からの物音が早々に聞こえなくなった辺り、ユウちゃんも今日は疲れたのだろう。まぁ、話に聞く限りかなりの大事に巻き込まれていたらしいから仕方もないか。
(あー……そうだ。戸締り確認もしとこう。)
エースくん達に聞いた話は思っていたよりも壮大で、化け物に遭遇したと聞いた時には流石に羨ましいという気持ちよりも誰も大きな怪我をしなかったことへの安堵感の方が強かった。シャンデリア諸々の事は聞きたくなかったという思いも強いが。
さて、その過程でユウちゃんは監督生としてナイトレイブンカレッジに通える事になったのはめでたいが、何故かあたしに肩書きがないのを気にしたグリムの発言でオンボロ寮の寮母に任命されてしまったのはいかがなものかと思う。どうせ有ろうと無かろうと大して変わらないとは思うが、肩書きなんぞ背負ったことのないあたしには荷が重い。表面上には出てないと思うが、余計なことを、と考えてしまったのはあたしだけの秘密である。
とはいえ引き受けてしまった以上、何もしないという訳にもいかない。あたしは玄関に向かう前に談話室に寄って、鍵が掛かっているか確認する。オンボロ寮は朽ちている部分も多いから、戸締りしても入ろうと思えば入れてしまうような気もするが、まぁちゃんと寮母やってますよという体裁が大事だ。大人とは総じて卑怯なものである。
「……あれ?」
鍵を確認してからカーテンに手をかけるとコンコンとノックの音がが聞こえる。聞き間違いかと思ったが、少ししてから今度は割と遠慮のない音量でドアが叩かれた。
(……こんな時間に来客?)
クロウリー先生だろうか。うーん、でも、あの先生がノックなんてするだろうか。今朝も知らない内に入ってたし。あたしは思わず足音を潜めてから玄関に足を向けた。