Wellcome to the Villain's world.
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「初めまして。君の名前を聞いてもいい?」
エースくんとは反対の目元にスペードマークを描いた彼に話しかける。自分の名前を名乗っていない事に気づいて慌てて付け足すと、彼はデュース・スペードと名乗った。ふむ、スペードマークのスペードくんか。覚えやすくていい。
「それで、君たちは何処で何をしてたの。こんなにボロボロなのは何かわけがあるんでしょう?」
とりあえず夜も遅いし少しでも早く帰りたくて、歩きながら話そうと促すように背を向ける。特に叱るとかそんな気は更々なくて、単純にいいな、と羨みの気持ちだった。
土埃に紛れて、もしかしたら擦り傷だってあるのかもしれない。それ程までの大冒険をして来たんだろう。きっとあたしがその場にいたら止めざるを得ないような。けれど実際は、彼等は自分で満足のいく結果を出してきたらしい。晴々とした表情がそれを物語っている。だったらそれは、是非とも聞いてみたい。あたしがもう経験することのないような体験を、彼等の記憶が色鮮やかな内に。
そんな事を考えていたら、自分でも分からない内に口角が上がっていたらしい。ユウちゃんがおずおずと口を開いた。
「あの……アイさん、怒らないんですか?」
「どうして?」
「だって、大人は皆"危ない事はするな"って、言うじゃないですか。」
あぁ、そうか。普通の大人はここで叱るのが正解なのか。そうか……そうか。あたしは唇をキュッと結んだ。それから右手で拳を作り軽くユウちゃんの額に乗せた。
「"危ない事はしちゃダメ"だよ。……エースくんとスペードくんも。」
「お前、大人なのか?」
コラッと軽めに注意して、実は自分を連れて行って欲しかっただなんて気持ちをひた隠すつもりが、首を傾げるスペードくんの発言が全部掻っ攫っていく。それに便乗するかのように、エースくんがオレも思ってたわ、と続けた。
「同い年くらいだろう?」
ぽかんと開けた口が、一拍置いて笑い声を漏らす。流石に若く見られすぎやしないか。嬉しさを通り越して、最早心配にすらなってくる。ユウちゃんは迷わず年上扱いしてくるから、あたしの顔立ちが特別幼い訳でも無いのだろう。ならば身長か。こればかりは仕方ない。
とりあえずあたしが笑い声混じりに実年齢に告げると彼等は驚きと戸惑いの表情を浮かべた。
(アイ"さん"なんて、呼んでくれなくていいのに。)
エースくんが"アイ"と呼んでいた今朝の騒動が、少し胸の端を焦がした。