Wellcome to the Villain's world.
Name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
もうすっかり暗くなった廊下にはあたしの靴音しか響かない。いや、先程までの運動靴ならあたしの足音すら響かなかったが、今はヴィルくんに履き替えさせられたパンプスがコツコツと音を立てる。数時間の時を掛けて丁寧に磨かれたあたしは、今朝の格好を知っているエースくんやユウちゃんからしたら見違える程だろう。
黒いピアスをナンセンスだと没収されるのだけはなんとか回避したが、全身をヴィルくんの色に染め上げられ、挙げ句の果てに肌や髪の手入れまで伝授された。最早アレは命令されたに近い。有無を言わせない剣幕で、伸び代があるんだから磨きなさい!と、なんなら毎日のストレッチ方法まで押し付けられている。
(強制、ではないけど……。)
手にしたトートバッグを少し持ち上げる。中身はヴィルくんが直々に調合したらしい化粧品やメンテナンスグッズだ。半ば押し付けられるように受け取ったそれらの対価は、あたしが綺麗になる事で、そうなればあたしに拒否権はない。かと言って、元よりあたしという人間の造形は平々凡々なのだから、今更磨いたところで中の中が中の上になる程度。それで彼が満足するとは思えないが、投げ出すという選択肢は"大人として"とれない。あぁ、仕事が増えたな、とじくりと重くなった足の動きを再開させると、今度はあたしの足音だけでなく、バタバタと複数人の足音が響いた。
「あ!アイさん!」
声の方向に振り返る。それに合わせてワンピースの裾が広がった。果たして目の前に居たのは嬉しそうに瞳を輝かせるグリムと、大きく手を振るユウちゃん、そして溜息を吐きながらも口角は上がっているエースくんとあたしをじっと見つめて誰だと訝しげな表情を浮かべる男の子だ。綺麗に仕立て上げられたあたしとは正反対にボロボロになっている彼等に、何してんの、と頭で理解しようとする前に言葉が滑り落ちた。
「オレ様、明日からユウと一緒にこの学園に通う事になったんだゾ!スゲーだろ!」
胸を張るグリムを和やかに見守るユウちゃんの首からは見慣れない古めかしいカメラがぶら下がっている。それは多分、昨日クロウリー先生が言っていた"頼みたい事"なんだろう。そのカメラが一体何の意味があるのかなんてグリムの説明だけでは分からない。でもまぁ、オンボロ寮に戻るまで30分程度おしゃべりを楽しむだけの時間はある。とりあえずあたしは今一番知りたい疑問を口にした。