Wellcome to the Villain's world.
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脚立に登って窓を拭いて、一度脚立を降りて雑巾をバケツの水に浸す。それを無心で繰り返して3つ4つ教室を移動しただろうか。この教室も終わった、と隣の教室に移動するべく廊下に出ると、少し騒がしい声がして野次馬根性を刺激される。まぁ、それなりに数はこなしているし、少しくらいの寄り道は許されるだろうと中庭を覗き込むようにして脚立とバケツを側に置き、身を乗り出すと、思いの外高さがあって怯んだ。あたしは一歩距離を取り、真下ではなく中庭の中央に視線を少しだけ上げた。
(……グリム?)
先頭の小さい影はグリムだろう。けれどそのグリムを追っているのはユウちゃんではなく、エースくんともう一人。暗い髪の男の子だ。あの子は今回の件に関係ない筈だけど。もしかして、無関係の子を巻き込んだのだろうか。魔法を容赦なくグリムに放つ二人の後ろを少し遅れてユウちゃんが追いかけている。
此処までのトラブルメーカーはあたしの人生の中で初めてだ。呆れの溜め息はもう漏れる事はなく、変わりにハハハと乾いた笑い声が漏れた。
「この調子だと全部一人で終わらせる事になりそう。」
あたしは中庭から視線を外し、予定通り掃除に戻ろうと方向転換をする。脚立とバケツを担ぎ上げようと膝を少し折ると頭上から、あら、と言う声が降ってきた。
「え、あ、こんにちは。」
掛けられた声を無視するわけにもいかず、とりあえずあたしは目の前の人物に視線を合わせて挨拶をした。
彼は酷く美しい。中性的な顔立ちの彼を男の子だと判断したのは、女子平均よりも遥かに高い身長と纏っている制服のスラックスからだ。
淡い色彩の髪色にアメジストのような紫色の瞳が磨き抜かれた美しさを際立たせる。此処まで高嶺の花を体現している人は初めてかもしれない。
「アンタ……。」
目の前の彼はあたしを頭から爪先までじっくりと観察するとツカツカと距離を詰めてくる。彼の身長でそう詰め寄られると一種の恐怖心が煽られ、脚立とバケツを置き去りに一歩下がった。けれど彼はそれを気にするまでもなく、あたしよりも広い歩幅で距離を詰めてくるものだから当たり前のように捕らえられる。あたしの両頬を彼の大きな掌が片手で鷲掴み、強制的に左右に顔を向けられると彼の怒号が飛んだ。
「手入れが甘い!!」