Wellcome to the Villain's world.
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朝食を食べて三人でオンボロ寮を出てそこそこの距離を歩いた。三人で雑談しながらだが、時間にすると30分くらいは歩いただろうか。足場の悪い道に時折足を取られながらも足を動かすと漸く整えられた道に出た。広い道の左右に置いてある七つの像が特徴的だ。もしかしてここがメインストリートだろうか。
「ふわぁ〜……スゲーんだゾ。ここがメインストリートか。」
グリムとユウちゃんも同じ考えだったようで、感嘆した言葉を漏らすとちらちらと像を一つずつ見て回る。ふくよかな女性がスカートの裾を摘んでいる像、ライオンの像、下半身が蛸の足になっている女性の像……。七つの内数個は見覚えがあって首を傾げた。
(うーん?何処かで見たことあるんだけど……何処でだっけ。)
「このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ。」
グリムがスカートの裾を摘む女性の鼻先に顔を近づけて言う。その疑問に返ってきた声は、あたしでもユウちゃんでもなく、少年らしいあどけなさの残った男の子の声だった。
ハートの女王を知らねーの?と笑う彼の目元には大きなハートマークが描かれていて、彼が瞬きをする度に一瞬だけハートマークの全貌が明らかになる。そのハートマークを視界に捉えた瞬間に、彼が先程口にした"ハートの女王"という言葉と繋がってハッと顔を上げた。
あたしの思考を裏付けるようにハートの彼が声高々に宣言する。
「規律違反は即打ち首だったから!」
「不思議の国のアリスだ!」
彼の言葉に被せるように口にした言葉に三人の視線が集まる。ユウちゃんが小さく首を傾げて考え込むような仕草を見せた。男の子の方はというと何それ、とでも言いたげに訝しげな表情をあたしに向ける。あたしは口を噤んだ。
「ま、いいけど。オレはエース。今日からピカピカの一年生。どーぞヨロシク♪」
エースくんの自己紹介にグリムがユウちゃんを子分と紹介する。それに対してユウちゃんは特に気にするでもなくよろしくね、と笑った。あたしもそれに続いて軽く自己紹介をすると、グリムが話題を戻していく。
ライオンの像、蛸足の女性の像と続くエースくんの説明は、何となくあたしの知っている彼らとズレているような気がして違和感がある。エースくんは不思議の国のアリスを知らないようだし、この世界での彼等はあたしの世界と認識が違うのかもしれない。あたしも七人全てを知っている訳ではないし、特に気にする必要もないか、と結論付けたところでエースくんが口にした、どっかの狸と違って、と言う言葉に先程までの和やかな空気が止まった。