Wellcome to the Villain's world.
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談話室に入ると中央のソファの側にクロウリー先生とユウちゃんが立っていたから慌てて、おはようございますと口にしながら駆け寄る。ユウちゃんと彼女の腕に抱かれているグリムが挨拶を返してくれた。ユウちゃんの顔は微かに目元が腫れているような気もするが概ね昨日と変わらない。
(泣いて少しは楽になったのかもしれない。)
同時にグリムとも少し打ち解けたようで二人の間には朗らかな空気が流れている。その事にほっと安堵の溜息を漏らすと、無意識に口角が緩んだ。その空気をクロウリー先生のごほんという咳払いが遮る。その咳払いにあたし達の視線はクロウリー先生に集められた。
「皆さんが揃ったところで、本日のお仕事についてお話しがあります。」
今日の仕事は掃除です、と続けられた言葉に少し拍子抜けする。魔法が使える世界の雑用なんて全く想像がつかなかったが、存外普通の雑用で、元の世界との共通点に胸を撫で下ろした。加えてあたし達が魔法を使えない事を考慮して、今日は正門から図書室までのメインストリートだけでいいと言う。
昨日から思っていたが、この人は適当そうに見えてしっかり考えている、あたしの理想とする"大人"に近い。生徒からは舐められそうだが、他の先生からは尊敬されているんじゃないだろうか。
とはいえ、それはたった数回会話しただけのあたしの感想で、実際は見た目通り適当な人の可能性もある。昨日もあれだけ仰々しく扉に案内した割には、その中身はただの学園長室だったのだから。しかも、卒業生達が置いて行った運動着諸々を探すためにありとあらゆる収納をひっくり返すというおまけ付きである。それだけ散らかしたのだから片付けも勿論大変で、お陰であたしがオンボロ寮に帰ってきた時には時計の短針は頂点を過ぎていた。
「では、朝食を摂ったら早速取り掛かってくださいね。くれぐれも、昨日のような騒ぎを起こさないように!」
クロウリー先生の言葉にわかりました、と答えるユウちゃんは何処か自信なさげに腕の中のグリムに視線を向ける。明らかに不服そうな表情は確かに少し自信を失うかもしれない。その不安を増長させるかのように、クロウリー先生が立ち去った後にグリムが派手に魔法を使いたいと言い出す物だから、ユウちゃんと二人で困ったように溜息を吐いた。