Wellcome to the Villain's world.
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「私が二人分の魔力を貯めます。だからユウちゃんには内密にしていただけませんか。」
あたしにどれだけ魔力があるかなんて分からない。でも魔法が使えない以上、確実に魔力が多いなんて事はない筈で。もしかしたらあたしのこの判断のせいで帰れない、なんて事になるかもしれない。でも元の世界に帰るのに、あたしの貯めた魔力が必要かどうかも不確定で。なら少しでもユウちゃんに絶望感を与えない方がいい。心さえ折れなければ案外人生なんてどうにでもなる。だから、お願いします、と頭を下げたあたしの頭上に降ってきた言葉があまりにも軽過ぎて拍子抜けしたのだ。
「いいでしょう。ユウさんには他に頼みたい事もありますし。何より、私優しいので!」
そうと決まれば、二つで一セットのアクセサリーにした方が良いですね……そうだ、ピアスにしましょう、なんてブツブツ呟いた彼がふわりとあたしの頭上に手をかざすと、パチッと小さく光が弾けたような感覚がした。ゆっくりと手を開くとそこに先程の黒い宝石は無く、あたしは思わず耳元に手を持っていく。耳たぶの下の硬い感触から察するに、彼の宣言通りピアスとして先程の石がぶら下がっているのだろう。
(あたし、ピアスホール空けてなかったのになぁ……。)
一歩一歩進む度に揺れる感覚が、今までと少しずつ変わっていく自分が、どうにも元の世界から遠退いている気がした。
「さぁ、着きましたよ。」
クロウリー先生が扉を背にして両手を広げる。まるでようこそ、と言わんばかりの仕草は異世界へ誘われているようだとも思う。だけどあの時、図書室から一歩踏み出した時にこの人を信じてみようと決めたのはあたしで、今更この人は怪しいからここから逃げようなんて言ったところで行く宛もない。
真綿で首を絞められているかのようにじわじわと息が苦しくなる。それが色々な感情を飲み込んだ故の精神的な物だと分かるのは今までの経験からだ。誰もあたしに触れていないのに息が出来ない。確かにあたしの後ろに道は伸びているのに逃げ道はない。
「あぁ、そうだ。その魔法石は魔力が溜まる程透明度が高くなります。」
ダイヤモンドのようになる前に帰れると良いですね、と言いながらクロウリー先生が背後の扉を開いた。その表情は仮面でよく分からない。