Wellcome to the Villain's world.
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「これ、何ですか?」
コロンと掌に乗せられたのは二つの小さな黒い宝石のような物。なんだろう。あたしの知識では黒い石と言えば、ブラックオパールかラブラドライトで、その何方にも当てはまらないこの宝石の事は分からない。ダイヤモンドのような透明感を持つがどこまでも黒い石。矛盾したような表現がピタリと当てはまるそれにじっと目を奪われた。
「それは魔法石です。」
「まほうせき……?」
ええ、と前置きをしてつらつらと魔法石の説明をしてくれるがよく分からない部分も多い。特にブロットについてはそもそもブロットが何かを知らないのでブロットを肩代わりしてくれる、と言われてもちんぷんかんぷんだ。けれど間違いなくあたしには不必要な物だということだけは理解できた。
「え、と。魔法石については分かりましたけど、どうしてこれを私に?」
「貴女達を元の世界に返す手掛かりになるかもしれないので。」
視線が上がる。クロウリー先生と目が合った。この短時間に元の世界へ帰る為の足掛かりが見つかったのだろうか。それなら案外早く戻れるのかもしれない、なんて期待はクロウリー先生の保険ですよ、という言葉に直ぐに打ち砕かれる。思わずぐっと宝石を握り込んだ。
そんなあたしの事は露知らず、クロウリー先生はあたしに背を向け目的地へと歩みを再開した。それでも彼の説明的な口調は止まらず、少しずつ遠くなっていく彼の声に慌てて此方も追いかける。
魔法石には魔力を貯めておく事も出来る事。人間は魔法が使えなくても多少の魔力を持っている事。そして、世界を超えるなんて芸当が並大抵の魔力でこなせる訳がない事。それらを踏まえてクロウリー先生はこの石をあたし"達"に託したいのだ、と。
「……ユウちゃんにも、ですか?」
「えぇ、予備の魔力とはいえ少しでも多い方がいいですからね。」
彼の言っている事は正しい。もしかしたら使わないかもしれない魔力だが、少ないよりは多い方が帰れる可能性が高いなら、少しでも沢山集めておくべきだ。でも、この曖昧で可能性の低い賭けを、あの、悲痛な声で泣いていたユウちゃんに伝えるのか、と言われるとそれが正しいとは思えなかった。
元の世界に繋がるかもしれない
(でも、結果として帰れないと結論が出た時に彼女はどうなる?)
期待させられた分絶望も多いだろう。彼女がその絶望に耐えられるかどうかなんて、出会って数時間しか経っていないあたしには分からない。でも、この魔法石の事をユウちゃんに伝えない事こそ、彼女の心を護る保険になるのだと自分に言い聞かせてあたしは口を開いた。