Wellcome to the Villain's world.
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コンコンと重厚な扉をノックする。中からは緊張感のない声が返ってきた。その声に従い扉をゆっくりと押し開ける前に勝手に扉が開く。これも魔法か、と少し身構えたが隙間から覗いたクロウリー先生の顔に、あたしが開ける前に中から開けられたのだと分かる。うわっと心の中で声を上げて視線を持ち上げると、先程と同じ格好のクロウリー先生が此方を見ていた。
「おや、もしかして夕食が足りませんでしたか?」
「違います。」
この人のこんな適当な態度に、こちらだけが丁寧な態度をとるのはバカらしくて乱雑な返しをする。それにはどうやら慣れているようで仮面の下の目元がにこやかに歪む。
「私達着替えを持ってませんので、服と……あと申し訳ないのですが化粧品を用意していただけないでしょうか。」
少し考えてそういえばそうですね、と言いながらあたしの背中を押して部屋を出る。どうやら当てがあるらしく学園への道を辿った。今日は彼方此方へと移動する日だな、と少し脹脛が張っている感覚がして疲労を感じる。あぁ、早く休みたい。今は何時なのだろうか。それでもクロウリー先生の長い脚は止まることを知らず、あたしは置いていかれないようにするので精一杯だ。
「しかし、服は兎も角、化粧品は個人の嗜好品でしょう?急いで用意する必要はないのではありませんか?」
「え、クロウリー先生、20過ぎの女にすっぴんで生活しろと仰るんですか?」
鬼か、と口にするつもりのなかった言葉がクロウリー先生があたしの肩を強く掴んだ反動で口から飛び出してしまう。失礼だったか、と慌てて口を抑えるが目の前の彼には先程の言葉は聞こえなかったらしく、ガクガクと揺さぶられるだけだった。
「貴女、成人してるんですか!?」
は、と一瞬頭が追いつかず、一拍遅れた失礼ですね!!の一言は誰もいない廊下に思いの外響いた。
クロウリー先生のこの反応は初めてではないが、随分と久しぶりでここ最近は未成年に間違えられる事はなかったものだから少しだけ心が浮つく。やっぱり少しでも若く見られるのは女として嬉しいところがあるし、何より、この人にとってはまだあたしは"子供"にカウントされるのだと思うと少しだけ肩の荷が下りた気がした。
「あの、そういう事ですので、申し訳ないのですがマナー的にもすっぴんはちょっと……。」
「そうですね。ではそれも手配しましょう。私、優しいので。……その代わりと言っては何ですが、少々頼みたい事があるのですが。」
何故か拒否権を感じない言葉に、頼み事ですか?と聞き返すと目の前の目が三日月型の弧を描いた。