Wellcome to the Villain's world.
Name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ボロボロのベッドに横になり、はぁと大きな溜息を吐き出すと漸く肩の荷が降りた感覚がして、少しだけ身体がベッドに沈んだような気がする。ユウちゃんもきっと同じ筈なのに薄い壁に阻まれた向こう側からは掃除をしている物音だろうか、ガタガタと大きな音がする。元気なものだ。若いって素晴らしい。
反対にあたしの方はというと、最低限の掃除すらせず横たえている状態だ。あの後の事は思い出したくない。それくらいに激動すぎて一日での出来事だと思いたくなかった。
寮分けをしてくれるらしい鏡にあたし達二人は魔法が使えないことを暴露され、グリムが暴れだし追い出されたかと思うと、鏡はあたし達の住んでいた国など無いという。少なくともあたしが20年余り過ごした日本という国は確かに存在していた筈なのに帰る事は出来ないと絶望を突きつけられた。けれど捨てる神あれば拾う神ありという感じで、クロウリー先生が帰る方法が見つかるまで学園への滞在を許可してくれたものだから事なきを得たが、それで何かが解決したのかと言われると何も解決していないのだ。変わらずあたしとユウちゃんは右も左も分からない世界で生きていかねばならないのだから。
パタリと隣の部屋の音が止む。掃除が終わったのかもしれない。あぁ、そういえばここのお風呂はどうなっているのだろう。寮なのだから大浴場なり各部屋の備え付けのシャワーだったり何かしらあるだろうが、この調子ではその辺りも酷い有様だろう。お風呂に入ってかえって汚れてしまうなんて馬鹿馬鹿しい。仕方ない、ユウちゃんにお風呂を勧める前に軽くでも掃除をしておくべきだろう。そもそも場所すら分からないのだし。あたしは自室の有様には手を付けず、オンボロ寮を探索するべく廊下へと踏み出した。お風呂場については先程のゴースト達に聞いてみればいい。長い間ここで暮らしているようだったから知っているかもしれない。
「ゴーストさん、居ます?お風呂の場所を聞きたいんですが。」
しん、と静まり返る空間に湧き上がるのは寂しさではない。大胆な独り言に対する羞恥心だ。先程同じくして居候が許可されたグリムとユウちゃんにぼこぼこにされた事を根に持っているのか、単純にここに居ないだけなのか。とにかくあたしの言葉に返ってくるものはなく、仕方なくあたしはユウちゃんの部屋のある方へ足を向けた。