嘘という名の毒を
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アタシの顔を見て何かを飲み込むように口を閉ざすアイ。彼女にアタシの想いを伝えたのはもう随分と前の事。けれど彼女はその想いに応えるでも無碍にするでもなく、今までと同じようにアタシの側でルークの淹れた紅茶を楽しんでいる。その光景に愛しさを感じる事すら何も変わらず、らしくもなく焦る気持ちのままに口にした言葉に動揺を悟られないようにアタシも紅茶に口を付けた。
「全く、アタシの事を何だと思ってるのよ……。」
え、と戸惑い混じりに漏れた声はルークである訳がなく、アイのもので、彼女は一拍置いて家族のように思っていると答えた。
そんな事、アタシは求めてないのよ。埃に塗れていたアイを見つけ、此処まで磨いたのは他でもないアタシ。髪の毛の一本まで手入れの方法を仕込み、日々の食生活や睡眠も管理して完璧に仕上げた。頭から爪先までアタシの色に染まった彼女に心奪われない筈もない。だからこそ、何をしてでも手に入れたい。
「嘘ね。」
アタシは真っ向からアイの発言を否定する。半分は願望、残りの半分は賭けだ。
身勝手に自分の価値観を押し付けた自覚はある。アタシの美意識に無理して応えていたのも知っている。迷惑だっただろう。それでもこれだけの伸び代を持っていてドブに捨てるなんて許せなかった。
アイは誤魔化すように紅茶に口を付け、美味しい、と吐息混じりに溢した。そんなの、ルークが淹れたのだから当たり前よ、と返すと困ったように眉をハの字に下げる。それでもこの話題を終わらせるつもりなんてサラサラなく、それで?と彼女の言葉を促した。
「本当にね、ヴィルくんの事は家族みたいだと思ってるよ。色々と甘えちゃってるし。」
アイの言葉に重たい溜息が漏れる。違う。アタシが欲しい言葉はそんな模範解答ではない。そんな"大人"な言葉ではなくて、アタシが欲しいのはアイとしての本心だ。
「アタシが欲しいのはそんな言葉じゃないわ。」
「そう言われても……。」
アイが困ったように眉を寄せる度に自分の焦りを自覚する。
「
「ちょっと黙ってなさい。ルーク。」
ピシャリとルークの言葉を切り捨てると、おや、ご機嫌斜めかな、なんて言いながらアタシのカップにお茶を注ぎアイにウインクを投げた。
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