切り札は最後の
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ふわっと欠伸を漏らして身体の向きを変えた。枕を胸元に抱き、半分以上働いてない頭で騒音の原因を手探りで探すも見当たらない。ぼーっとそのまま少しの時を過ごして瞼が落ちようかと言うとき、頭上から声が降ってきた。
「エースくん。朝だよ。」
「んー……後5分……。」
「遅刻するからダメ。起きて。」
シャッという音はカーテンを開けた音か、とぼんやり考えると今度は身体を覆っていた温もりが剥ぎ取られる。季節柄寒さを感じる物でもないが、反射的に身体を縮こまらせた。
その頃には少しずつ頭も覚醒していて、どうしてオレがアイさんのベッドで寝ているかを思い出し、同時に首元の圧迫感も自覚した。昨日の夜、寮長に首を跳ねられ、その理不尽さにハーツラビュル寮を家出して来たんだった。うわーダッセ。けたたましく鳴っていたアラームは少し前にアイさんの手で止められている。
「……はよーございまーす。」
「うん、おはよう。あたしは先に行くからエースくんも遅れないようにね。」
そう言いながら自室を出ようとするアイさんの腕を引く。細い手首はオレの手で掴むと指先が余るほどで、少し力を込めれば折れてしまいそうだ。それ程非力なうえに魔法も使えない癖に、頼めばホイホイと泊めてくれるのはどうかと思うけどなー。流石に。今はオレも魔法を使えないとはいえ、それを無視してもオレの方が強いのに。
客室の掃除が進んでないらしく、使える部屋は談話室と監督生の部屋、それからアイさんの自室しか無いからとオンボロ寮に泊まる時はいつもこの人の部屋に通される。いつしかこの人の匂いの布団に包まれる事も慣れてしまって、それ以上を望むオレがいる。ぼすんと少し埃を立ててベッドの縁に腰を沈めたアイさんの腰を抱き寄せた。
「エースくん寝ぼけてる?」
「起きてますって。」
「なら離して。エースくんも準備する時間がいるでしょ?」
ね?と宥めるような声色に返した、やだ、の一言にニヤリと口角を上げると、腰を捻って困ったように此方を見るアイさんと目があった。ぐっと腕に力を入れると布団よりもダイレクトにアイさんの香りがする。昨日はオレも同じシャンプーに同じボディソープを使ったはずなのに、この人はオレと違って優しい匂いがする。
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