子供部屋のドアを
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パタパタと天井に当たる雨音を心地好いと感じるのは濡れない場所で聞いている時に限る。けれど現実は急に降り出した雨に濡れたシャツが貼りつき気持ちが悪い。あぁジャケットもこれはクリーニング行きだ。肩口で跳ねる滴の音をバシャバシャと水分の多い土を踏む音が掻き消し、俺とアイさんの二人分の荒い息遣いが雨音に呑まれていく。
ここからだとオンボロ寮に駆け込むのと校舎に戻るのとどちらが早いだろうか、と考えるも現在地は丁度中間の辺りでどちらも然程差はないように思える。とりあえず少し先に大きめの木が見えて、雨宿りするべくアイさんに声をかけようと口を開くが、それよりもアイさんの方が早かった。
「デュースくん、とりあえず雨宿りしよう。」
俺と同じ結論に至ったらしいアイさんが大木の辺りを指差す。あぁそうだな、と言葉少なに返事をして隣の彼女の手を引いた。
そもそもの発端は用務員の仕事で図書室に居たアイさんをエースと監督生と共に迎えに行ったのが最初。そして偶然ローズハート寮長とクローバー先輩も図書室に居て、そして本当の本当に偶然だと思いたいが寮長が僕たちの前回の小テストの点数を知っていたものだから突発的に勉強会が始まったのだ。勿論エースは抵抗したが、寮長に通用する筈もなく首をはねられ、首輪をつけたままの勉強会は開催となった。結論として、あまりの理解力の無さにその首輪は監督生と俺にもついていたのだが。
「デュースくん的にはちょっと災難だったね。」
「いや、そうでもないが……。」
事実、本来ならエースと監督生とついでにグリムと共に四人と一匹でついていたであろう帰路を、こうして二人で手を繋いで辿っているのだから災難でもなんでもない。寧ろ幸運とさえ思える。アイさんは用務員だから授業を受ける事はないし、昼食時は生徒とずれているから日中は共に過ごす事は出来ない。運良く飛行術の授業中に校舎の窓を掃除しているアイさんを見つけられれば軽く手を振って貰える程度だ。
第一、17時頃に寮長の都合でお開きになった勉強会を一人で延長すると言った俺に付き合ってくれたのはアイさんの方で、災難だと言うのなら彼女の方が災難だろう。ちらりと横目で見遣ると彼女も大概濡れ鼠だ。
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