アルバイトの話
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うへぇ、と床に散らばる諸々を見て思わず口をついた言葉は無反応で切り捨てられる。つい数日前に片付けた筈のレオナ青年の部屋は足場すら無い程脱ぎっぱなしの服で溢れかえっていた。
「ラギー少年、職務怠慢でしょ、コレ!」
24時間レオナさんの子守とかお断りッスよ、とラギー少年が散らばった服を拾いながら返す。此処まで言われている当の本人は微かな寝息を立てて夢の世界に旅立っている。此処が私のバイト先だ。
「えー……今日、私の仕事洗濯だけだったんだけど。」
「レオナさんの場合は拾うとこからが洗濯なんで。」
まじかーと呟きながらバイトの先輩であるラギー少年に倣って服を拾い始める。籠がいっぱいになったところで抱え上げてランドリーに向かうべく足を出入り口へ向けた。山盛りの洗濯籠を抱えてよたよたとよろけながらドアを開けようと苦戦する私にラギー少年の声は容赦がない。
「あ、ランドリー行くならオレの洗濯物もお願いするッス。」
「ふざけんな
ドアを開けてくれるでもなく、此方に顔を向けるでもなく、ただ作業を続けながらさらっと言われた言葉に暴言で答える。そこで私がドアを開けられずにもたついている事に気がついたようでドアを開ける為に近づいて来た。
「アイさんも一緒に洗濯したらいいでしょ。レオナさんの洗剤、結構良いやつなんでフワフワになるッスよ。」
「増えたやつも干すの私じゃん。」
「まーそれが今日のアイさんの仕事なんで!」
シシシと笑いながらドアを開けたラギー少年に背中を押されて追い出された廊下にはレオナ青年の洗濯物の量とは正反対の少量の洗濯物が入った籠が置いてある。それがラギー少年の物だと気づいて、まぁ確かにこのくらいならついでと言えるかもしれないと、それを抱えていた洗濯籠の上に乗せた。
スラム育ちの彼は単純に物量が少ないらしいから小まめに洗濯して回しているんだろう、と若干同情しかけて気付く。私も同じじゃん。
スラム育ちではないがこの身一つでやってきた私の私物といえば、生徒達からのお下がりの運動着と化粧品程度。小まめに洗濯しないといけないのも同じで、レオナ青年からのバイト代にはラギー少年の洗濯物は当たり前に含まれていないのだからご丁寧に私がしてやる必要はない。そもそもサバナクロー寮からオンボロ寮に戻って自分の洗濯物を持ってくるのも面倒だし、そっちの方が手間だ。
「ふっざけんな!!あんのクソハイエナ!!」
バタンと大きな音を立てて洗濯機の蓋を閉めるとスタートボタンを押してから私はダッシュでレオナ青年の部屋に戻った。