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骸さんと。


冷たい風の吹く冬の日、早めに出しておいた炬燵に潜りながら女は息を吐き出した。12月の頭だというのに、こんなに寒くなるとは。異常気象を恨みたくなる。そんな彼女の向かいに座っている男_______もとい六道骸は、天板に乗っている蜜柑をつつきながらこう言った。

「溜め息なんかついてどうしたんです?」
『いや…冬が越せるのか心配になって』

クフフ、と特殊な笑い声をあげた骸を彼女はじとりと睨む。彼にはジョークに聞こえたのだろうが、彼女にとっては笑い事ではないのだ。
風が打ちつけて窓をガタガタと揺らした。重たい曇り空に気分も落ち込むようで、炬燵がより一層暖かく感じられる。

「冬はいいじゃないですか。雪も降りますし」
『骸って雪好きだっけ?』
「まあ。聞いた話では、日本の雪はチョコレートに変わると」

今度は彼女が笑い声をあげる。冗談か何かかと思ったら、彼はきょとんとした顔で首をかしげている。そんな様子がさらに可笑しくて、彼女は腹を抱えた。

『ちょ、それ…どこのCMよ…っ』

彼女があまりに笑うので骸もさすがに嘘だと気づき、頬を少し赤くして「犬め…」と呟いた。
いつも掴み所のなくのらりくらりしている骸の意外な一面を見て満足したのか、彼女は幸せそうな顔で炬燵の天板に顔をもたげる。

『今年一笑った…骸のおかげね』
「…それはよかったです
でも、本当に雪がチョコレートに変わったら素敵じゃないですか?」

そう言いながら彼女の隣に座り直す骸。

『んー…確かにね』

炬燵に預けていた体を起こすと肩を抱き寄せられた。炬燵に入っていても、骸の体温がじんわり伝わってくるのが分かる。

「雪の日に君と、チョコレートで溢れた世界を歩く…クフフフフ、僕の好きなものだらけじゃないですか」

耳元で幸せそうに囁く骸に、頬を撫でられそのまま流れるようにキスをおとされる。優しく重ねられた唇はいつもに増して熱を帯びていた。

『…寒いはずなのに、溶けてしまいそうね』
「クフフ、全くですね」


熱に溶けるチョコレヰト
(熱いのは炬燵のせいじゃなさそう)
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