だいすきを伝えて(ミルムル)
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◆
『だいすきのその先へ』
「……ミラクルな!?」
「二人組だとぉ!?」
オレとムルモは目をぱちくりと見合わせたあと、動揺のあまり時間差でもう一度おったまげた。
「大スクープよ! 号外決定ね、準備に取り掛かりましょう!」
「うんうん!」
『ミラクルな二人組でちゅって! ちゅごいわぁ……!』
話を聞いていたニュース三人娘や、パピィが色めき立って大声をあげた。
親父が自分で自分を抱きしめて、なんかこう……ポワポワしたなにかを漂わせながら、うっとりしてやがる。
「そうじゃ! さっきピカーンと思いついたのだ! このネーミングセンス、傑作じゃろ? うーん、ワシが怖い! 誰にも真似できんこの才能……自分で自分を褒めてやりたいのう……!」
『ズコーーッ!』皆で揃って、本日三回目のズッコケだ!
「……ボク、しゅごく期待しちゃったの、間違ってたでしゅか?」
「うん、間違ってたかもな」
「まあ……あの人らしいわね」
ムルモが倒れながらオレに聞いてきて、オレはそっけなく返した。おふくろが納得いってるのが不思議だな。とそこに、部屋の外でこっそりと覗き見してた大臣のやつがマントをなびかせながらドカドカと部屋に入ってやがった……!
「国王様ーーー!」
親父のそばまで詰めた大臣は、この世の終わりみてえな深刻そうな顔をして親父のやつにバンと詰め寄った。
「国王様、先程おっしゃられたことは本当なのですか!?」
「マジじゃ。先程がっちりとちぎって『ミラクル宣言』したではないか」
ちぎって……「ミラクル宣言」だあ? オレとムルモの人生最大の出来事だぞ! 軽い感じで言うなよな!
「そんな……この大臣、納得がいきませぬ! ミルモ王子のご婚約や、魔法のご継承はどうなるのですか……! ムルモ王子の将来のことも……私はおふたりのスケジュールを組んでいた身でございます。それを全て無に帰すようなことを、なぜ……?」
あいつ、スケジュールなんか組んでたのかよ? しかし口調は優しいが、大臣はいつになく真剣かつ怖い顔をしてやがる。まるで怒ったときのおふくろだ。本当に嵐を呼んじまいそうだ。
「ばかもーん! さっきの話を聞いて分からんか! ミルモとムルモは『真の王』に相応しいチカラを目覚めさせた……それだけではなく、ふたりは自分の気持ちを嘘偽りなく、正直に打ち明けてくれたのじゃぞ」
「それでも納得がいきませぬ……五大元素を極め、五つの光を生み出す魔法の力を、いったい誰が継承するのですか? ミルモ様やムルモ様が魔法の継承を行わず、お世継ぎを作らないということになれば……この妖精界は滅亡します!」
親父がどらの鳴るような声でどやしたが、大臣は食い下がらなかった。
隣にいるムルモがぷるぷると小刻みに震えている。
「大臣しゃん、どうしてあんなことを言うんでしゅか……?」
なんとなくだがオレには分かるぜ。大臣の言いたいことが。じわじわと、大臣の心の声が伝わってくる。
――国王様は、なぜこのようなことを……確かに『魂の絆』は素晴らしいチカラに違いないでしょう。しかし……五つの光は妖精界全てを照らす、偉大な力にございます。言ってしまえば太陽の力そのもの。その光を生み出す魔法の力を継承する者がいなくなれば、この妖精界は一体どうなるのですか……。
もしその光が無くなれば、大臣の言ってる通り……本当に妖精界が滅んじまう。それに……怒ってるだけじゃねえ。
――ミルモ様にムルモ様、おふたりがどうなってもいいと言うのですか……。
大臣はオレたちのことを大事に思ってるからこそ、親父の言ってることが受け入れられねえんだ。
――子供のいない私にとっては、ミルモ様とムルモ様は孫に等しい存在……そのふたりが、なぜ……?
そういや誕生日プレゼントだって毎年貰ってたし、記念行事もやけに気合いが入っていたような……オレの胸が締め付けられて、ズキズキと痛んできやがる。
――お兄たま……。ボクたちでなんとかしてあげないと……
――ムルモも聞こえてるのか?
――あい。大臣しゃん、とっても悲しんでましゅ……。
そうだ。大臣の言ってることはもっともだ。オレたちがこんな選択をしなかったら、こんな大変なことにはなってねえんだ。……でも、でもよ……!
『――さっそく、お前たちのチカラが試されるときが来たようだな!』
突然、ガイア族のフィアの声が響いて、オレたちの心に語りかけてきやがった。
『オレたちの……』
『チカラ……?』
次の瞬間、ガイア族の連中の姿がオレたちの心の中に、次々と浮かび上がってきた。
『試練の時がやってきたんだよ。ミルモとムルモくん……君たちのチカラを僕たちも見せてもらうよ』
アクアのやつ、優しいカオして言ってくれるじゃねえか。
『さっき言ったけど、カンタンなことじゃない。ふたりが持ってる全てのチカラを出し切って』
ドンタは相変わらず、岩みてえに重てえ感じだな。
『でも成功すれば、すっごくスペシャルで、ミラクルなことが起こる予感がしちゃうかも〜! ヒョヒョー!』
ウィンの飛び上がる様が目に浮かぶぜ。
『さあ、きれいな虹の光を妖精界全てに行き渡らせるの。準備はいいかしら?』
ピクモ、分かりにくいこと言うなよな。でも、それをオレたちがやらなきゃいけねーんだよな……!
「虹の光か……やってやるぜ!」
「あいでしゅ!」
胸に手をあてて、互いの顔を見合わせる。……言葉にしなくても分かる。この『あたたかい、チカラ強い気持ちを皆にも感じてもらう』ってことが……オレとムルモの気持ちがピタリと揃った。
最後にフィアが、もう一度語りかけてくる。こいつはムカつくけど、なんか憎めねえんだよな……。
『「魂の絆」のチカラを全開にして「虹の魔法」をお前たちのものにしろ! 心の奥底から「[[rb:絶対>ぜってー]]叶える」って思うんだ! オレはお前たち、ミルモとムルモを信じてるからな……』
目の前にマラカスと小太鼓が現れる。まるでオレたちの気持ちに応えたかのようだ。
――虹の、魔法……。
オレとムルモの気持ちが今までにねえ程、ひとつになる。それと同時にふたつの楽器がぼうっと、虹色の光を放つ。
――ムルモ、やってやろうぜ。どんな魔法よりも凄え、オレたちの……
――ボクたちの、『魂の絆』のチカラを見せてやるでしゅ!
オレとムルモは楽器を手に取り――盛大に奏でた。
「ミルモで……」「ムルモで……」
『ポーーーーーーン!』
瞬く間に鳴らした楽器からまばゆい、オーロラのような虹色の光が溢れ出て、視界が一気に虹色に染まる。そしてその光が目も開けられねえ程にまで、一番星よりも……もしかすると太陽よりも強いくらいの、世界で一番強い輝きをバアアッ……と解き放つ。余りにも強い光だったもんだから、周りにいる他のやつの顔は何も見えなかった。しかし、オレの中に他のやつらの気持ちが、きらきらとしたシャボン玉みてえな形でたくさん……心いっぱいに伝わってくる!
『お兄たま……ボクたちの魔法のチカラでしゅ!』
『ああ、やったぜ……!』
――ミルモ様にムルモ様、三時のおやつでございます。仲良く半分こするのですぞ。
『これは……大臣の記憶みてえだ……』
オレとムルモの中に大臣の記憶……それも、オレとムルモが一緒のときの記憶がいっぱい伝わってくる。
――おやおや、布団がずれていますな。風邪を引かれたら困りますからな……。
これはオレがムルモを寝かしつけてた頃のことだ。布団、掛けてくれてたんだな……
――ふたりとも、寄り添って眠っておられますな。この先もずっと、仲良くいてほしいものです……。
『お兄たま。ボクたち、とっても大事にされてたんでしゅね。思っていたよりも、じゅっと……』
『ああ……』
オレとムルモは嬉しくなって、思わず手を繋ぎあわせた。
『――虹の魔法、成功おめでとうー!』
オレたちの頭の中に、ガイア族の声が再び響く。
『それが「魂の絆」を持った、お前たちの本当のチカラ……五色の光を超える、[[rb:奇跡>キセキ]]を呼ぶ「虹の魔法」だ――これからは、ふたりでチカラを合わせろよ』
『これから「は」じゃねえ、これから「も」だろ!』
『ははは、言ってくれるじゃねえか! そうだ、外に出てみろ。いいものが見れるぜ。それじゃ……また会おうな……!』
フィアの生意気で、それでいてスカッとする笑い顔が目に浮かぶぜ……!
徐々に、あんなに強かったはずの光が霧みてえにパァーと消えていく。
その次の瞬間にはあんなに強かった光が嘘みてえに止んでしまっていて、オレとムルモは何事も無かったかのように、他の連中に顔を向けて突っ立っていた……
「お兄たま……」
「ムルモ……」
オレとムルモは放心状態で互いの目を見合わせた。
オレの目の前に大臣がぼんやりした様子で、胸に両手をあてて膝まづいていた。
「なにが起こったのでしょう? この胸のあたたかい気持ちは……、見たことのない虹の光は……一体?」
あれは夢なんかじゃねえ。本当にオレたち、やったんだな……!
――そうだ、外に出てみろ。いいものが見れるぜ。
「ムルモ、外だ!」
「あいでしゅ!」
オレとムルモは目を見合わせるや否や、部屋を出て走り出した。
城の外に出ると、空はもうすっかりすみれ色に染まっていた。そして、キラリと光る一番星がひとつ、きらきらと輝いていた。
「いつもの夜空だろ。なんにもねーじゃなえかぁ」
フィアのやつ、嘘つきやがったのか?
「お兄たま……あれはなんでしゅか?」
城に戻ろうとしたオレを、ムルモが服の袖をぎゅっと引っ張って止めた。
「おいおい、なにすんだよ」
「あれでしゅよ。ほら、ひらひらした……虹色のカーテンみたいな……とっーてもきれいでしゅ!」
ムルモがぴんと背伸びして、真上の空を指差した。指差した先には……本当に虹色のカーテンみてえな、ひらひらとしたオーロラが段々と広がっていって……やがて空いっぱい、ずぅーと上にまで広がった! でもオーロラなんか[[rb:妖精の里>ここ]]じゃ観れねえものが、なんで……?
「ボク、あんなの初めてみましゅ!」
「おおっ……! ムルモ、あれはオーロラだ」
「オーロラ?」
きょとんと首を傾げたムルモに、オレが教えてやる。
「そういやおめー、あの時は留守番してたな……オレがガキの頃に、親父と観に行ったことあるんだ。でもなんでだ? ここじゃぜってー観れねえはずなのによ……」
「お兄たま、観たことあるんでしゅか!? どうしてボクも一緒じゃなかったんでしゅか……?」
「ムルモは小さかったんだぜ。仕方ねーだろぉ…」
ムルモが拗ねたんで、オレはしゃがんでムルモを肩車してやる。
「おめーと……ムルモと一緒に観たかったんだ。夢が叶ってよかったぜ」
「お兄たま……だいしゅきでしゅ!」
ムルモがオレの頭にほっぺを思いっきり擦り寄せた。
「やめろ! バランス崩すだろ!」
「ミルモにムルモ! ……これはいったい?」
親父の声がして、そばに寄ってきた。その途端、オレはとうとうバランスを崩してドンと尻もちをついて、そのはずみでムルモがオレの身体の上に乗った。
「親父、腰抜かしたんじゃねえのかよ!?」
「それがすっかり治ってしまってのう。お前たちの魔法のおかげじゃ……一緒に空を観るぞ」
親父がオレに向かってニカッと笑って、オレとムルモの隣に上を向いて寝そべった。それにしてもあの魔法、人の気持ちが覗けたり、親父の腰が治しちまうとは、本当に物[[rb:凄>すげ]]え魔法なんだな……。
「オーロラを観るなど、ミルモが小さかったとき以来じゃ。あれから色々あった。――ミルモ、お前にも苦労をかけた。そしてムルモ、お前にもだ……」
「ボク、でしゅか?」
ムルモが自分で自分を指差した。
「そうじゃ。ワシがミルモを人間界へ修行にやって、ふたりを引き離したばかりに、お前を危険な目に遭わせてしもうたのじゃ。
それだけではない。ミルモを立派な王に育てることに夢中になり、ミルモだけではなく、ムルモの気持ちも分かってあげられなかった……ワシは国王どころか、父親としても失格じゃ……」
「お父たま……」
親父は、一瞬俯いてから……再び上を向いた。
「しかしお前たちは、そのような困難に挫けず『魂の絆』を結び、そのうえ奇跡といわれる『虹の魔法』を成し遂げたのだ」
「『虹の魔法』?」
「ああ。奇跡のチカラを持つ、究極の魔法じゃ。伝説の中だけのことかと思ったが、まさかふたりがそれを使うとはな……」
親父がオレの手を繋いできた。
「――もう二度と、お前たちを引き離すことはしない」
星空をオーロラがきらきらとひらひらと揺らめいて、空を昼のように明るく照らしている。
「さっきは『ミラクルな二人組』などという大層なネーミングを授けたが、ワシにとってはふたりが産まれてきたこと自体が[[rb:ミラクル>奇跡]]そのものじゃ。
さあ……掟などものともせず、自由に生きるのだ。ミルモとムルモ、ふたりはワシの……『最高の息子』じゃからな」
「お父たま……」
まったく、言ってくれるじゃねえか。
親父は名残惜しそうにオーロラを見つめてから、オレとムルモの方に視線を移した。
「さあ、行くぞ。今夜はパーティーじゃ!」
『ほんとう(でしゅ)か!?』
親父が立ち上がると、木漏れ日のような笑顔を浮かべてから、オレたちの肩をポンと持った。それから背を向けて、城門へとゆっくりと歩いていった。オレは親父の見せる後ろ姿がやけにでかく、格好よく見えたものだから目を見開いて、瞬きをした。
「お兄たま、ボクたちも行くでしゅ」
「そうだな」
オレたちも顔を見合わせてから、一緒に明かりのつく城の方へ……親父に追いついてから手を握りしめ、歩いていった。
夜空で輝く虹色のオーロラが、オレたちふたりと親父のことを、優しく見守っている気がした――
『だいすきのその先へ』
「……ミラクルな!?」
「二人組だとぉ!?」
オレとムルモは目をぱちくりと見合わせたあと、動揺のあまり時間差でもう一度おったまげた。
「大スクープよ! 号外決定ね、準備に取り掛かりましょう!」
「うんうん!」
『ミラクルな二人組でちゅって! ちゅごいわぁ……!』
話を聞いていたニュース三人娘や、パピィが色めき立って大声をあげた。
親父が自分で自分を抱きしめて、なんかこう……ポワポワしたなにかを漂わせながら、うっとりしてやがる。
「そうじゃ! さっきピカーンと思いついたのだ! このネーミングセンス、傑作じゃろ? うーん、ワシが怖い! 誰にも真似できんこの才能……自分で自分を褒めてやりたいのう……!」
『ズコーーッ!』皆で揃って、本日三回目のズッコケだ!
「……ボク、しゅごく期待しちゃったの、間違ってたでしゅか?」
「うん、間違ってたかもな」
「まあ……あの人らしいわね」
ムルモが倒れながらオレに聞いてきて、オレはそっけなく返した。おふくろが納得いってるのが不思議だな。とそこに、部屋の外でこっそりと覗き見してた大臣のやつがマントをなびかせながらドカドカと部屋に入ってやがった……!
「国王様ーーー!」
親父のそばまで詰めた大臣は、この世の終わりみてえな深刻そうな顔をして親父のやつにバンと詰め寄った。
「国王様、先程おっしゃられたことは本当なのですか!?」
「マジじゃ。先程がっちりとちぎって『ミラクル宣言』したではないか」
ちぎって……「ミラクル宣言」だあ? オレとムルモの人生最大の出来事だぞ! 軽い感じで言うなよな!
「そんな……この大臣、納得がいきませぬ! ミルモ王子のご婚約や、魔法のご継承はどうなるのですか……! ムルモ王子の将来のことも……私はおふたりのスケジュールを組んでいた身でございます。それを全て無に帰すようなことを、なぜ……?」
あいつ、スケジュールなんか組んでたのかよ? しかし口調は優しいが、大臣はいつになく真剣かつ怖い顔をしてやがる。まるで怒ったときのおふくろだ。本当に嵐を呼んじまいそうだ。
「ばかもーん! さっきの話を聞いて分からんか! ミルモとムルモは『真の王』に相応しいチカラを目覚めさせた……それだけではなく、ふたりは自分の気持ちを嘘偽りなく、正直に打ち明けてくれたのじゃぞ」
「それでも納得がいきませぬ……五大元素を極め、五つの光を生み出す魔法の力を、いったい誰が継承するのですか? ミルモ様やムルモ様が魔法の継承を行わず、お世継ぎを作らないということになれば……この妖精界は滅亡します!」
親父がどらの鳴るような声でどやしたが、大臣は食い下がらなかった。
隣にいるムルモがぷるぷると小刻みに震えている。
「大臣しゃん、どうしてあんなことを言うんでしゅか……?」
なんとなくだがオレには分かるぜ。大臣の言いたいことが。じわじわと、大臣の心の声が伝わってくる。
――国王様は、なぜこのようなことを……確かに『魂の絆』は素晴らしいチカラに違いないでしょう。しかし……五つの光は妖精界全てを照らす、偉大な力にございます。言ってしまえば太陽の力そのもの。その光を生み出す魔法の力を継承する者がいなくなれば、この妖精界は一体どうなるのですか……。
もしその光が無くなれば、大臣の言ってる通り……本当に妖精界が滅んじまう。それに……怒ってるだけじゃねえ。
――ミルモ様にムルモ様、おふたりがどうなってもいいと言うのですか……。
大臣はオレたちのことを大事に思ってるからこそ、親父の言ってることが受け入れられねえんだ。
――子供のいない私にとっては、ミルモ様とムルモ様は孫に等しい存在……そのふたりが、なぜ……?
そういや誕生日プレゼントだって毎年貰ってたし、記念行事もやけに気合いが入っていたような……オレの胸が締め付けられて、ズキズキと痛んできやがる。
――お兄たま……。ボクたちでなんとかしてあげないと……
――ムルモも聞こえてるのか?
――あい。大臣しゃん、とっても悲しんでましゅ……。
そうだ。大臣の言ってることはもっともだ。オレたちがこんな選択をしなかったら、こんな大変なことにはなってねえんだ。……でも、でもよ……!
『――さっそく、お前たちのチカラが試されるときが来たようだな!』
突然、ガイア族のフィアの声が響いて、オレたちの心に語りかけてきやがった。
『オレたちの……』
『チカラ……?』
次の瞬間、ガイア族の連中の姿がオレたちの心の中に、次々と浮かび上がってきた。
『試練の時がやってきたんだよ。ミルモとムルモくん……君たちのチカラを僕たちも見せてもらうよ』
アクアのやつ、優しいカオして言ってくれるじゃねえか。
『さっき言ったけど、カンタンなことじゃない。ふたりが持ってる全てのチカラを出し切って』
ドンタは相変わらず、岩みてえに重てえ感じだな。
『でも成功すれば、すっごくスペシャルで、ミラクルなことが起こる予感がしちゃうかも〜! ヒョヒョー!』
ウィンの飛び上がる様が目に浮かぶぜ。
『さあ、きれいな虹の光を妖精界全てに行き渡らせるの。準備はいいかしら?』
ピクモ、分かりにくいこと言うなよな。でも、それをオレたちがやらなきゃいけねーんだよな……!
「虹の光か……やってやるぜ!」
「あいでしゅ!」
胸に手をあてて、互いの顔を見合わせる。……言葉にしなくても分かる。この『あたたかい、チカラ強い気持ちを皆にも感じてもらう』ってことが……オレとムルモの気持ちがピタリと揃った。
最後にフィアが、もう一度語りかけてくる。こいつはムカつくけど、なんか憎めねえんだよな……。
『「魂の絆」のチカラを全開にして「虹の魔法」をお前たちのものにしろ! 心の奥底から「[[rb:絶対>ぜってー]]叶える」って思うんだ! オレはお前たち、ミルモとムルモを信じてるからな……』
目の前にマラカスと小太鼓が現れる。まるでオレたちの気持ちに応えたかのようだ。
――虹の、魔法……。
オレとムルモの気持ちが今までにねえ程、ひとつになる。それと同時にふたつの楽器がぼうっと、虹色の光を放つ。
――ムルモ、やってやろうぜ。どんな魔法よりも凄え、オレたちの……
――ボクたちの、『魂の絆』のチカラを見せてやるでしゅ!
オレとムルモは楽器を手に取り――盛大に奏でた。
「ミルモで……」「ムルモで……」
『ポーーーーーーン!』
瞬く間に鳴らした楽器からまばゆい、オーロラのような虹色の光が溢れ出て、視界が一気に虹色に染まる。そしてその光が目も開けられねえ程にまで、一番星よりも……もしかすると太陽よりも強いくらいの、世界で一番強い輝きをバアアッ……と解き放つ。余りにも強い光だったもんだから、周りにいる他のやつの顔は何も見えなかった。しかし、オレの中に他のやつらの気持ちが、きらきらとしたシャボン玉みてえな形でたくさん……心いっぱいに伝わってくる!
『お兄たま……ボクたちの魔法のチカラでしゅ!』
『ああ、やったぜ……!』
――ミルモ様にムルモ様、三時のおやつでございます。仲良く半分こするのですぞ。
『これは……大臣の記憶みてえだ……』
オレとムルモの中に大臣の記憶……それも、オレとムルモが一緒のときの記憶がいっぱい伝わってくる。
――おやおや、布団がずれていますな。風邪を引かれたら困りますからな……。
これはオレがムルモを寝かしつけてた頃のことだ。布団、掛けてくれてたんだな……
――ふたりとも、寄り添って眠っておられますな。この先もずっと、仲良くいてほしいものです……。
『お兄たま。ボクたち、とっても大事にされてたんでしゅね。思っていたよりも、じゅっと……』
『ああ……』
オレとムルモは嬉しくなって、思わず手を繋ぎあわせた。
『――虹の魔法、成功おめでとうー!』
オレたちの頭の中に、ガイア族の声が再び響く。
『それが「魂の絆」を持った、お前たちの本当のチカラ……五色の光を超える、[[rb:奇跡>キセキ]]を呼ぶ「虹の魔法」だ――これからは、ふたりでチカラを合わせろよ』
『これから「は」じゃねえ、これから「も」だろ!』
『ははは、言ってくれるじゃねえか! そうだ、外に出てみろ。いいものが見れるぜ。それじゃ……また会おうな……!』
フィアの生意気で、それでいてスカッとする笑い顔が目に浮かぶぜ……!
徐々に、あんなに強かったはずの光が霧みてえにパァーと消えていく。
その次の瞬間にはあんなに強かった光が嘘みてえに止んでしまっていて、オレとムルモは何事も無かったかのように、他の連中に顔を向けて突っ立っていた……
「お兄たま……」
「ムルモ……」
オレとムルモは放心状態で互いの目を見合わせた。
オレの目の前に大臣がぼんやりした様子で、胸に両手をあてて膝まづいていた。
「なにが起こったのでしょう? この胸のあたたかい気持ちは……、見たことのない虹の光は……一体?」
あれは夢なんかじゃねえ。本当にオレたち、やったんだな……!
――そうだ、外に出てみろ。いいものが見れるぜ。
「ムルモ、外だ!」
「あいでしゅ!」
オレとムルモは目を見合わせるや否や、部屋を出て走り出した。
城の外に出ると、空はもうすっかりすみれ色に染まっていた。そして、キラリと光る一番星がひとつ、きらきらと輝いていた。
「いつもの夜空だろ。なんにもねーじゃなえかぁ」
フィアのやつ、嘘つきやがったのか?
「お兄たま……あれはなんでしゅか?」
城に戻ろうとしたオレを、ムルモが服の袖をぎゅっと引っ張って止めた。
「おいおい、なにすんだよ」
「あれでしゅよ。ほら、ひらひらした……虹色のカーテンみたいな……とっーてもきれいでしゅ!」
ムルモがぴんと背伸びして、真上の空を指差した。指差した先には……本当に虹色のカーテンみてえな、ひらひらとしたオーロラが段々と広がっていって……やがて空いっぱい、ずぅーと上にまで広がった! でもオーロラなんか[[rb:妖精の里>ここ]]じゃ観れねえものが、なんで……?
「ボク、あんなの初めてみましゅ!」
「おおっ……! ムルモ、あれはオーロラだ」
「オーロラ?」
きょとんと首を傾げたムルモに、オレが教えてやる。
「そういやおめー、あの時は留守番してたな……オレがガキの頃に、親父と観に行ったことあるんだ。でもなんでだ? ここじゃぜってー観れねえはずなのによ……」
「お兄たま、観たことあるんでしゅか!? どうしてボクも一緒じゃなかったんでしゅか……?」
「ムルモは小さかったんだぜ。仕方ねーだろぉ…」
ムルモが拗ねたんで、オレはしゃがんでムルモを肩車してやる。
「おめーと……ムルモと一緒に観たかったんだ。夢が叶ってよかったぜ」
「お兄たま……だいしゅきでしゅ!」
ムルモがオレの頭にほっぺを思いっきり擦り寄せた。
「やめろ! バランス崩すだろ!」
「ミルモにムルモ! ……これはいったい?」
親父の声がして、そばに寄ってきた。その途端、オレはとうとうバランスを崩してドンと尻もちをついて、そのはずみでムルモがオレの身体の上に乗った。
「親父、腰抜かしたんじゃねえのかよ!?」
「それがすっかり治ってしまってのう。お前たちの魔法のおかげじゃ……一緒に空を観るぞ」
親父がオレに向かってニカッと笑って、オレとムルモの隣に上を向いて寝そべった。それにしてもあの魔法、人の気持ちが覗けたり、親父の腰が治しちまうとは、本当に物[[rb:凄>すげ]]え魔法なんだな……。
「オーロラを観るなど、ミルモが小さかったとき以来じゃ。あれから色々あった。――ミルモ、お前にも苦労をかけた。そしてムルモ、お前にもだ……」
「ボク、でしゅか?」
ムルモが自分で自分を指差した。
「そうじゃ。ワシがミルモを人間界へ修行にやって、ふたりを引き離したばかりに、お前を危険な目に遭わせてしもうたのじゃ。
それだけではない。ミルモを立派な王に育てることに夢中になり、ミルモだけではなく、ムルモの気持ちも分かってあげられなかった……ワシは国王どころか、父親としても失格じゃ……」
「お父たま……」
親父は、一瞬俯いてから……再び上を向いた。
「しかしお前たちは、そのような困難に挫けず『魂の絆』を結び、そのうえ奇跡といわれる『虹の魔法』を成し遂げたのだ」
「『虹の魔法』?」
「ああ。奇跡のチカラを持つ、究極の魔法じゃ。伝説の中だけのことかと思ったが、まさかふたりがそれを使うとはな……」
親父がオレの手を繋いできた。
「――もう二度と、お前たちを引き離すことはしない」
星空をオーロラがきらきらとひらひらと揺らめいて、空を昼のように明るく照らしている。
「さっきは『ミラクルな二人組』などという大層なネーミングを授けたが、ワシにとってはふたりが産まれてきたこと自体が[[rb:ミラクル>奇跡]]そのものじゃ。
さあ……掟などものともせず、自由に生きるのだ。ミルモとムルモ、ふたりはワシの……『最高の息子』じゃからな」
「お父たま……」
まったく、言ってくれるじゃねえか。
親父は名残惜しそうにオーロラを見つめてから、オレとムルモの方に視線を移した。
「さあ、行くぞ。今夜はパーティーじゃ!」
『ほんとう(でしゅ)か!?』
親父が立ち上がると、木漏れ日のような笑顔を浮かべてから、オレたちの肩をポンと持った。それから背を向けて、城門へとゆっくりと歩いていった。オレは親父の見せる後ろ姿がやけにでかく、格好よく見えたものだから目を見開いて、瞬きをした。
「お兄たま、ボクたちも行くでしゅ」
「そうだな」
オレたちも顔を見合わせてから、一緒に明かりのつく城の方へ……親父に追いついてから手を握りしめ、歩いていった。
夜空で輝く虹色のオーロラが、オレたちふたりと親父のことを、優しく見守っている気がした――
