だいすきを伝えて(ミルムル)
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◆
『だいしゅきを伝えて』
だんだんと……ゆっくりでしゅが、意識がはっきりとしてくるでしゅ……。
あれは、ぼくがお兄たまが好 きだって気付いた夜の出来事でしゅ。お兄たまがボクを必死に探してくれて、ボクのために泣いていたでしゅ……。ボク、お兄たまがしゅき……大好 きでしゅ。だからこそ、お兄たまには――
「……ルモ、ムルモ……」
「おにいたま……ボク……」
「ムルモ……気付いたか」
ここはお兄たまの部屋のベッドの上でしゅね。天井が見えて、窓から茜色の光が差し込んでいる、静かで温かい空間でしゅ。お兄たまはボクの顔を見て、かすかに優しく笑ってから手をぎゅっと握ってきましゅ。お兄たまの手は暖かくて、陽だまりのようなぬくもりを感じるでしゅ。
「ごめんな、ムルモ……」
「謝るのはボクのほうでしゅ…」
お兄たま、ボクはお兄たまのことが『だいしゅき』でしゅ……でもボクは苦しいんでしゅ。まるで今まで、ボクが抑えていたお兄たまへの気持ちが溢れ出しているみたいに、身体中が痛いでしゅ……。
「お兄たまのグレートバッチグーチョコを勝手に食べたこと、勝手に家出したこと、そして……お兄たまを泣かせてしまったこと、あったでしゅよね……ごめんなしゃい。ちゃんと謝りたかったんでしゅ……」
お兄たまが一瞬、息を漏らして驚いたような顔をしたでしゅが「そうか」と言って、すぐに優しい表情に戻るでしゅ。それを見つめながら、ボクは息を吸い込んで、声を振り絞るでしゅ。
「それともうひとつ……わ、分かってるんでしゅ。ボクがこんなこと言うのは、おかしいって……お兄たまにはリルムしゃんがいて……ボクは、弟で……でもボク、お兄たまが……お兄たまのこと…じゅっと、じゅっと…しゅきでしゅ、だいしゅきなんでしゅ……!」
急に溜まっていた涙が溢れて、声が震えましゅ。お兄たまが滲んでみえましゅね。お兄たまは「ムルモ……」と何か言いかけたでしゅが、その後は何も言わず、そっと手を握ったままでしゅ。
「笑っちゃいましゅよね…! でも…でも、言わないと……ボク、壊れちゃいましゅ……だからっ…!」
胸が締め付けられそうで、腕で自分の身体を抑えましゅ。お兄たまに気持ちを伝えたはずなのに、胸の痛みは消えるどころかますます強くなって、全身に稲妻のような激痛が走るでしゅ。まるで、行き場のないお兄たまへの想いが身体の中で暴れているみたいで、息が出来なくなっていくでしゅ……。
バチッ、バチチッ! 触覚がオーバーヒートして、火花を散らしはじめるでしゅ。焦げ臭い匂いがして、再び意識が無くなりそうでしゅ……もう、どうしたらいいんでしゅか…!
「おにい、たまっ……」
「……ムルモ、リボンだ。お前の本当の願いを言え」
「ほんとうの、ねがい……」
お兄たまからリボンを受け取りましゅ。ボクはリボンを見つめるとまぶたの奥に残っていた涙が全て、リボンへと流れ落ちるでしゅ。
お兄たまの優しい顔を見ていたら、決心が揺らぎそうになって、甘えてしまいそうでしゅ……でも、巻き込むのはイヤでしゅ。もう、お兄たまを悲しませたくないんでしゅ……!
――もしも、ボクがただの『弟』に戻ることさえできれば……お兄たまも喜んでくれましゅよね? ボクは、ぎゅっとリボンを握りしめて覚悟を決めたでしゅ。ボクのたったひとつの、本当の願いは……
「……もとの弟に戻りましゅ! お兄たまの気持ち、わすれま……」
「ばかっ……!」
お兄たまはリボンごとボクの手を掴むと……一瞬にして、ボクはお兄たまの胸の中でしゅ……お兄たま、どうしてしょんなことを?
だ……だめでしゅ! お兄たまが、黒焦げに…!
「お願いでしゅ、離れてくだしゃいっ…!」
ボクは最後のチカラを振り絞って、お兄たまを突き飛ばそうとするでしゅ。
「分かってらぁ……忘れたら、オレの気持ちはどうなるんだ……!」
……全身が、いたいどころじゃないでしゅ。ボク、本当にもう……
――ムルモ、オレは構わねえ!
「はなしてくだしゃいっ……!」
「はなさねぇ、そばにいろ……!」
お兄たまは顔を歪めながら、ボクを全身で受け止めたでしゅ。お兄たまの『そばにいろ』っていう強い言葉、そして……無限大の『願う力』が届いて、リボンに伝わったんでしゅ。ボクの手の中のリボンが、胸の奥と同じくらいぽかぽかと暖かくなって、まばゆい光を放ってボクたちを照らし出したでしゅ……
『ムルモ……悪かった。オレが素直じゃねーばっかりに……』
『お兄たま、安心してくだしゃい』
『ムルモ? お前、本当に大丈夫なのか?』
『あい……っ!』
声にしていないのに心が通じ合って、お兄たまの気持ちが、手にとるみたいに伝わってきましゅ。太陽みたいに暖かくて優しい、魔法よりしゅごいキセキの光と一緒に……。光はお兄たまとボクをふわりと包み込んで、身体中の痛みが、まるで雪が溶けるみたいにすーっと消えていって、あれほど苦しかったのが嘘みたいに無くなったでしゅ。
『……オレさ、お前のおかげで「だいすき」って想いに全力で向き合えた。ムルモの想いにも、オレの想いにも……ありがとな、ムルモ。
おめーのこと「だいすき」だ。ずっとそばにいてやるからな……!』
お兄たまが眩しい一番星のような、とびっきりの笑顔を見せてきたでしゅ。
『もっちろんでしゅ! ……ボク、お兄たまの想い、「だいしゅき」をうーんと受け取ったでしゅよ。今度はボクが、お兄たまをたっくしゃん支えてやるでしゅ! キャハ♡』
ボクはお兄たまに笑顔のお返しをすると、お兄たまはボクの頭を撫でて「……ありがとな」と、言ってきましゅ。……照れくしゃいけど、お兄たまの手が暖かくて…とっても嬉しいでしゅ。
『――お前たちの「願う力」、そして……「だいすき」という想い、受け取ったぞ!』
光がうーんと強くなるでしゅ。ボクたちの目の前に現れたのは、しゅごいオーラを纏った五人の見知らぬ妖精でしゅね……一見、お兄たまと同じ年頃の妖精に見えましゅが……。
「おめーら……どうなってやがんだ!?」
「お兄たまぁ……! あの人たち誰なんでしゅか?」
ボクは怖くなってお兄たまの服の袖をチカラいっぱいに掴むでしゅ。お兄たまも平気なふりをしてましゅが、ほんの少 し震えてましゅ。
『オレはフィア! 少しは骨のあるやつと思ったが、とんだ手違いだったか?』
あの炎のようにメラメラしてる妖精、『フィア』って言ったでしゅ……ということは……
『ボサッとするんじゃねえ〜! お前らは「願う力」でここまできたんだぞ……』
『落ち着いてフィア、そんな言い方じゃふたりとも分からないよ。アクアでポンッ!』
噴水のような帽子を被った妖精が手を上にかざすと、光が消えて、目の前には不思議な光景が広がるでしゅ……
――真っ青な空に木と一体になった神殿……妖精の里とは大違いでしゅ。ボクたち、本当にしゅごい場所に来ちゃったでしゅ……!
「ここ、どこなんでしゅか……?」
しゅごいオーラを漂わせて、皆しゃんがどんどん近付いてきましゅ。お兄たまが驚いたように「ガイアの里……か?」と口を開いたでしゅ。
今度は草の帽子をかぶった、土色の髪の妖精がどっしりと構えて話しだしましゅ。
「ここ、ガイアの里の『聖なる木の神殿』」
「ヒョヒョヒョー! キミたちに大事な話があるから来てもらったんだぁ〜」
頭に風車を付けた妖精が髪をなびかせて、ぴょーんと飛び上がるでしゅ。
「あなた、この間マイクをもらいに来た妖精よね? 隣のかわいらしい妖精は……あら、気にしないで」
雲のようなふわふわ髪の妖精が優しくボクの手をとって握手してきたでしゅ……もう、何なんでしゅか!?
「あの……皆しゃん、ガイア族でしゅよね? ボクたちをいきなりへんな場所に飛ばして…あっ…握手だなんて……!? いくらボクがアイドルだからって……触覚ビィーームッ!!」
ボクはパンクして、頭から煙を出しそうになりましゅ。パニック状態で思いっきり触覚ビームを撃ち込もうとすると、お兄たまがボクを庇うように飛びついてきて、ビリビリと感電してしまいましゅ。またまた丸焦げのマシュマロ状態でしゅ……っ!
◆
「このガキ、なんて危ねえものぶっ放すんだ!」
フィアしゃんが慌てて飛び退いたあと、炎の髪をより一層メラメラさせてボクを怒鳴りつけましゅ。
「フィア、落ち着きなよ。この子は驚いちゃったんだよ。ねえ?」
アクアしゃんが優しく声をかけてくれましゅ。ボクは少ししょんぼりして頷きましゅ。
「あ、あい……ごめんなしゃい」
「落ち着いてられるかぁ〜!」
「気にしないで。フィアはいつもこうなの」
ピクモしゃんも優しくフォローしてくれましゅ。フィアしゃんは、まるでおやつのチョコを食べてやったときのお兄たまみたいで、ちょっとだけ怖いでしゅ。
アクアしゃんとピクモしゃんが近くに寄ってきて、黒焦げのお兄たまに手をかざすと、お兄たまがみるみる元に戻っていきましゅ……しゅごい魔法でしゅ!
「いってて……ムルモ、お前なにやってんだぁ……」
お兄たまは頭をさすりながら起き上がると、ボクのほっぺをつんつんしてきましゅ。
「おい、でも威力がいつも通りだぞ? ほんとに良くなったんだな、お前!」
「……病気、本当に治ったんでしゅか?」
「他人事みてぇに言うなよ」
「しょれに……」
ボクの病気が治っただけじゃないみたいでしゅ。さっきお兄たまがボクを抱きしめてくれた時、今までは胸がドキドキして苦しかったのに、今は全然違う気持ちなんでしゅ。ぽかぽか暖かくて、なんだかチカラが湧いてくるような……。
「あの……ガイア族の皆しゃん」
ボクは勇気を出して尋ねましゅ。
「このあたたかい気持ちはいったい何なんでしゅか? しょれに……ボクたち、どうしてガイアの里まで来ちゃったんでしゅか? 教えてくだしゃい、お願いしましゅ!」
ボクはお兄たまのそばから一歩離れて、ガイア族の皆しゃんにぺこりと頭を下げましゅ。
ドンタしゃんが「……礼儀正しい子」と小さく頷いたのが見えましゅ。すると、頭に風車を付けたウィンしゃんが、風車をくるりと回しながら言いましゅ。
「そうだね~、教えてあげよっか。ヒョヒョ! まずは、君たちがどうしてここにいるか……だね!」
ボクたちが、どうしてここに……でしゅか?
ウィンしゃんが促すと、今度は噴水みたいな帽子のアクアしゃんが一歩前に出てきましゅ。アクアしゃんの澄んだ瞳が、太陽の光を浴びた湖のようにキラリとして、ドキッとしましゅ……!
「ミルモとムルモくんがここにいるのは、君たちふたりの強い「願う力」……そして、お互いを想う「だいすき」な気持ちが、僕たちのところまで届いたからさ」
「ボクたちの願いと、だいすきな気持ち……?」
ボクはアクアしゃんの言った言葉を、不思議な気持ちで繰り返しましゅ……。
「そうだよ」と、アクアしゃんはこくりと頷きましゅ。
「ミルモ、君が叫んだ「そばにいろ」という願い。
――ムルモくんが生きていてほしい、元気になってほしい、幸せになってほしい……そして、彼とずっーと一緒にいたいという強い想い……それが、あのリボンを通して増幅されて、ものすごい奇跡を引き起こしたんだよ」
「オレの、願い……」
隣でお兄たまが、さっきの出来事を思い返しているのか、ばっちりと目を大きく見開いているのが見えましゅ。お兄たまの願いは、ボクのこと……。
「……あのとき、ムルモが生まれたての頃のこと…思い出したんだよ。こいつが笑ってくれて、ぜってー幸せにしてやるって本気で思ったのによ……」
お兄たまが少し俯いて呟きましゅ。
「だから思ったよ……離すもんか、ってさぁ……」
「お兄たま……」
ボクはお兄たまの袖をそっと掴みましゅ。胸がきゅっとなりましゅ。
「まあ……」
ピクモしゃんが少し悲しそうな顔をしゅるでしゅ。他のガイア族の皆しゃんも、なんだかしんみりした空気になりましゅ。
「……フィア、頭の火が消えてる」
ドンタしゃんがポツリと言いましゅ。
「……はっ、ほんとうかっ!? おりゃあああっーー!」
フィアしゃんは慌てて髪の毛の炎をボワッと燃やすと、なぜか焼き芋をポッと作り出して、お兄たまにズイッと差し出しましゅ。
「食え! 腹減ってんだろ? 元気出せ!」
「……わあったよっ…!」
お兄たまはちょっと驚きながらも焼き芋を受け取って、むしゃむしゃと食べ始めましゅ。食べ終えて少し元気が出たみたいなお兄たまは、フィアしゃんに「……ありがとよ」と言ったあと、ボクの隣に戻ってきましゅ。……フィアしゃんって、いつも怒ってるのかと思ったら、優しいところもあるんでしゅね。
「ミルモに、ムルモくん……」
アクアしゃんがお兄たまを見て微笑んだあと、今度は優しい視線をボクに向けてくれましゅ。
「そうだ、ムルモくん。君は願いをかけようとしたとき、リボンに涙を落としたよね?」
「あい……?」
「……そうか、マイクを貰ったときとおんなじだ! 涙はなによりも強え、願う力なんだったよな?」
お兄たまがパチンと指を弾きましゅ。……でも、不思議でしゅ。ボクの涙が、どうして……?
「あの、涙って強いんでしゅか?」
ボクは不思議に思って聞きましゅ。
「うん……涙はね、とても純粋で強い「願う力」の源になることがあるんだ。でもそれだけじゃないよ」
アクアしゃんは優しく教えてくれましゅ。
「君が今感じている、その「暖かくて、チカラ強い気持ち」は大切な人と離れたり、失いたくないって気持ちから解き放たれて、ミルモ……お兄ちゃんとのすごーい「絆」を心のすべて……「魂」で感じ取っている証拠かもしれないね」
「き、きずな…たましい……」
ボクは自分の胸にそっと手を当てましゅ。今までの恋のドキドキとは違う……もっと深くて、大きくて、あたたかい魂の繋がり……。これが、お兄たまとの絆……。ボクの胸がほんのり、じんわりと温かくなるでしゅ。
「さて、そこでだ」
フィアしゃんが、焼き芋のときとは違う真剣な顔をしゅるでしゅ。ドキッとして、思わずお兄たまに寄り添いましゅ。
「お前たちのその力……ただもんじゃねえってことは分かった。だが、その力が何を意味するか、分かってるのか?」
「フィアの言う通り。妖精の魔法は、大昔から五つの要素で出来ている…」
「ここで問題。五つの要素、つまり……五大元素 をそれぞれ何ていうか、分かるかな〜? 正解者には、とっておきのソフトクリームをプレゼントしちゃうよ〜!」
「ムルモ〜、分かるか?」
いきなりウィンしゃんがクイズを出してきたでしゅ。お兄たまがボクに答えさせるために肘をついてきたでしゅ。でもボク分かるんでしゅよ。学校で習いましゅもん!
「『火』『水』『土』『風』、しょれと『雲』の五つでしゅよね!」
ボクが自信満々に言うと、アクアしゃんが微笑んで頷きましゅ。
「その通りだよ、ムルモくん。その『五大元素』が、僕たち妖精の魔法の基本なんだ」
「ヒョー、完璧じゃん! はい!」
「ありがとうございましゅ、キャハ♡」
ウィンしゃんからソフトクリームを受け取って、ペロペロとなめるとふんわりとした甘さが口いっぱいに広がるでしゅ……
「ふぇぇ、お……おいしいでしゅ♡」
「チェッ、ぶりっ子しやがって」
「でね、でね……その五つの力をぜーんぶマスターしたすごぉーい妖精の証として、大昔から伝わる魔法陣があるんだ! ヒョヒョヒョー!」
ウィンしゃんがつむじ風のように、くるくると宙高く舞い上がると、目の前の空間にキラキラと光る五つの星の、妖精の魔法陣が現れましゅ。星の頂点にはそれぞれの元素のシンボルが、そして真ん中には真っ赤なハートが輝いていましゅ。
「わぁ……きれいでしゅ! ねっ、お兄たま?」
「あ…あぁ、そうだな……」
お兄たまはほっぺに汗をにじませてそう答えたでしゅ。……暑くないのに、どうしたんでしゅか?
「そうだろ。この魔法陣を完全にマスターして自分のものにすると、使う魔法が超パワーアップするんだ! そのうえ……」
フィアしゃんが説明しかけると、ピクモしゃんがふんわりと言葉を続けましゅ。
「その妖精が魔法を使うと、楽器から五つのとっても綺麗な光が出るようになるの。まるで雲の上にかかる虹みたいよ……!」
ピクモしゃんがうっとりした表情をするでしゅ。瞳がキラキラしてましゅね……!
「五つの光……!」
お兄たまが目を見開いて呟きましゅ。
「ってことは、親父のアレか……! 王様になるには、アレができないといけねーって、だからオレは…」
五つの光といえば、お父たまが魔法を使うと、楽器から出てくる、あの光のことでしゅか……?
「お兄たま?」
「やっぱり、ミルモくんも練習してたんだねー?」
ウィンしゃんがお兄たまの言葉を察したみたいに尋ねましゅ。
「……ああ。ガキの頃、無理やりな」
お兄たまが苦々しい顔で認めると、ボクはびっくりして聞き返しゅでしゅ。
「お兄たまが練習を…? ボク、そんなの全然知らなかったでしゅ……どうして黙ってたんでしゅか……?」
お兄たまはボクに向き直ると、少し照れたような、でもすごく真剣な、優しい目で言ったでしゅ。
「……んな面倒くせーもん、おめーにやらせるわけねーだろ。
オレが親父と約束したんだ。『ムルモには関係ねえ、あいつは自由に、好きなことだけしてりゃいいんだ』ってな。お前には、そんなもんに縛られてほしくなかったんだよ」
「お兄たま……っ!」
またボクの目から涙が溢れてきましゅ。ボクのこと、そんなに大切に想ってくれてたなんて……。お兄たまの隣にいられて、本当に幸せでしゅ!
「お兄たま好 きでしゅ……だいしゅきでしゅ!」
「おいムルモ、何すんだ! 甘えやがって……」
ボクはお兄たまに思いっきり抱きつくでしゅ。
アクアしゃんがそれを見て嬉しそうに笑うと、静かに、でもはっきりとした声で続けましゅ。
「元素の力も、それをマスターすることも、もちろん素晴らしいことだよ。でもね……この魔法陣で本当に、いっちばん大切で、強い力は…ここなんだ」
アクアしゃんが指し示したのは、魔法陣の中心で、ひときわ強く赤く輝いているハートのシンボルでしゅ。
「星の中心にあるのは『心 』……妖精が誰かを、何かを、心の底から強く想う『願う力 』。どんな魔法よりも強い、本当の力の源はそこにあるんだよ」
ボクとお兄たまは、吸い込まれるように魔法陣のハートを見つめましゅ。さっき、ボクたちを包んだ光の暖かさ、そして心の声が聞こえた不思議な感覚……。あれが、「願う力」の奇跡だったんでしゅね。
「そうだ! 何かを『叶えたい!』って強く願えば、普通の魔法なんか軽く超えちまう、とんでもねえ奇跡だって起こせる! お前たちがさっきやったみたいにな!」
フィアしゃんがニカッと笑って言いましゅ。
「あなたたち二人の、『だいすき』っていう強い強い想いが起こした、素敵な奇跡なのよ」
ピクモしゃんが、優しく微笑んでくれましゅ。
ボクは隣にいるお兄たまの顔を見上げましゅ。お兄たまも、ボクのことを見ていましゅ。
――ガイア族の皆しゃんの言葉が、ボクたちの間に生まれたこの暖かくて強い絆が……本当に特別で、すごい力を持っているということを、改めて教えてくれているようでしゅ。ボクは胸いっぱいの幸せを感じながら、お兄たまににっこりと微笑み返したでしゅ。
「そして、その力は…」
ドンタしゃんが、さらに重々しい声で続けましゅ。「使い方によっては、この妖精界の古い掟や、決められた運命さえも、変える可能性を秘めている…」
「掟を、変える力……?」
お兄たまが息を呑むのが分かりましゅ。ボクもドキドキしてしまいましゅ。掟を変える…?
「そうだよ〜!」
ウィンしゃんがくるりと一回転しましゅ。
「だから聞きたいんだ。キミたちは、その特別な力と絆をもって、これからどうしたい? 古い決まりごとに縛られ続けるのかい? それとも……」
ガイア族の皆しゃんの五対の目が、真っ直ぐにボクとお兄たまに向けられましゅ。それは、ただ聞いているだけじゃない、ボクたちの未来への覚悟を試すような……真剣な眼差しを感じるでしゅ――。
ボクは隣にいるお兄たまの顔を見上げましゅ。お兄たまも、ボクのことを見て力強く頷いてくれましゅ。その目にはもう迷いはありましぇん。ボクもぎゅっとお兄たまの手を握りましゅ。大丈夫でしゅ。お兄たまとなら、きっと……!
お兄たまが一歩前に出て、ガイア族の皆しゃんを真っ直ぐに見据えましゅ。
「そんなの決まってらぁ。オレは、こいつの…ムルモのそばにいる。誰にも、何にも邪魔させねえ」
その力強い言葉に、ボクの胸も熱くなりましゅ。ボクも隣に並んで、精一杯の声で叫びましゅ!
「……ボクも、お兄たまのそばにずっといましゅ! ボクたちの『だいしゅき』な気持ちと、このあたたかい『絆』があれば、なんだってできるって信じてましゅ…… お兄たまとなら、どんな未来だって創っていけましゅ!」
お兄たまが続けましゅ。少し照れたような、でもすごく強い意志のこもった声でしゅ。
「掟でもなんでもかかってこい! もしそれが邪魔をするってんなら、『願う力』で変えてみせる! それが、オレたちの選ぶ道だ!」
お兄たまの言葉は、すごく頼もしくて、カッコよくて……ボクは胸がいっぱいになりましゅ。
『合格 !』
ガイア族の皆しゃんが揃えて声をあげたでしゅ……! 表情も、なんだかふっと和らいだように見えましゅ。
アクアしゃんが、優しい笑顔で頷きましゅ。
「……その言葉、受け取ったよ。ふたりとも素晴らしい覚悟だよ」
ドンタしゃんも、静かに……そして威厳のある声で言いましゅ。
「君たちの『願う力』は、妖精界そのものを変える可能性を秘めている……でも、忘れないで。道はカンタンじゃない。ふたりの絆が試される時も来るかも」
「望むところだぁ!」
お兄たまがニッと笑うのが見えましゅ。その顔は、堂々とした自信が満ちあふれてるでしゅ。
ボクも負けずに胸を張りましゅ!
「ボクたちふたりなら、絶対に大丈夫でしゅ!」
ピクモしゃんが、ふんわりと微笑んでくれましゅ。
「あら、頼もしいわ。ふたりの未来に、虹が架かりますように……」
「ボクたちも応援してるからねー! ヒョヒョ!」
と、ウィンしゃんが手を振ってくれましゅ。
「へっ……まあ、困ったことがあったら、いつでも焼き芋くらいは差し入れしてやるよ! 別に心配してるわけじゃねーけどな……!」
フィアしゃんはそっぽを向きながらも、なんだかちょっとだけ嬉しそうでしゅ。
「ソフトクリームも出すからまたおいでよ〜」
「水あめも出そうよ」
「わたあめもあるといいわね」
「……団子もね」
皆しゃん、本当は優しいんでしゅね。
最後に、アクアしゃんがボクたちに優しく語りかけましゅ。
『君たちらしい『自由』な道を、その『特別な絆』と共に、力強く歩んでいくといいよ……』
皆しゃんがそっと手をかざすでしゅ。
『ガイアでポーンーーッ!』
再び温かくて優しい光がボクたちを包み込みましゅ。ガイアの里の景色と、ガイア族の皆しゃんの姿が薄くなって、だんだんと光の中に溶けていくでしゅ……。
『ボク、お兄たまとチカラを合わせて、妖精界をもっともっーと幸せな場所にしていくでしゅ。だから……どうか見守っていてくだしゃい!』
光に向かって、ボクは精一杯叫ぶでしゅ。最後に見たガイア族の皆しゃんはとても穏やかで、力強い笑顔だった気がしましゅ――。
『だいしゅきを伝えて』
だんだんと……ゆっくりでしゅが、意識がはっきりとしてくるでしゅ……。
あれは、ぼくがお兄たまが
「……ルモ、ムルモ……」
「おにいたま……ボク……」
「ムルモ……気付いたか」
ここはお兄たまの部屋のベッドの上でしゅね。天井が見えて、窓から茜色の光が差し込んでいる、静かで温かい空間でしゅ。お兄たまはボクの顔を見て、かすかに優しく笑ってから手をぎゅっと握ってきましゅ。お兄たまの手は暖かくて、陽だまりのようなぬくもりを感じるでしゅ。
「ごめんな、ムルモ……」
「謝るのはボクのほうでしゅ…」
お兄たま、ボクはお兄たまのことが『だいしゅき』でしゅ……でもボクは苦しいんでしゅ。まるで今まで、ボクが抑えていたお兄たまへの気持ちが溢れ出しているみたいに、身体中が痛いでしゅ……。
「お兄たまのグレートバッチグーチョコを勝手に食べたこと、勝手に家出したこと、そして……お兄たまを泣かせてしまったこと、あったでしゅよね……ごめんなしゃい。ちゃんと謝りたかったんでしゅ……」
お兄たまが一瞬、息を漏らして驚いたような顔をしたでしゅが「そうか」と言って、すぐに優しい表情に戻るでしゅ。それを見つめながら、ボクは息を吸い込んで、声を振り絞るでしゅ。
「それともうひとつ……わ、分かってるんでしゅ。ボクがこんなこと言うのは、おかしいって……お兄たまにはリルムしゃんがいて……ボクは、弟で……でもボク、お兄たまが……お兄たまのこと…じゅっと、じゅっと…しゅきでしゅ、だいしゅきなんでしゅ……!」
急に溜まっていた涙が溢れて、声が震えましゅ。お兄たまが滲んでみえましゅね。お兄たまは「ムルモ……」と何か言いかけたでしゅが、その後は何も言わず、そっと手を握ったままでしゅ。
「笑っちゃいましゅよね…! でも…でも、言わないと……ボク、壊れちゃいましゅ……だからっ…!」
胸が締め付けられそうで、腕で自分の身体を抑えましゅ。お兄たまに気持ちを伝えたはずなのに、胸の痛みは消えるどころかますます強くなって、全身に稲妻のような激痛が走るでしゅ。まるで、行き場のないお兄たまへの想いが身体の中で暴れているみたいで、息が出来なくなっていくでしゅ……。
バチッ、バチチッ! 触覚がオーバーヒートして、火花を散らしはじめるでしゅ。焦げ臭い匂いがして、再び意識が無くなりそうでしゅ……もう、どうしたらいいんでしゅか…!
「おにい、たまっ……」
「……ムルモ、リボンだ。お前の本当の願いを言え」
「ほんとうの、ねがい……」
お兄たまからリボンを受け取りましゅ。ボクはリボンを見つめるとまぶたの奥に残っていた涙が全て、リボンへと流れ落ちるでしゅ。
お兄たまの優しい顔を見ていたら、決心が揺らぎそうになって、甘えてしまいそうでしゅ……でも、巻き込むのはイヤでしゅ。もう、お兄たまを悲しませたくないんでしゅ……!
――もしも、ボクがただの『弟』に戻ることさえできれば……お兄たまも喜んでくれましゅよね? ボクは、ぎゅっとリボンを握りしめて覚悟を決めたでしゅ。ボクのたったひとつの、本当の願いは……
「……もとの弟に戻りましゅ! お兄たまの気持ち、わすれま……」
「ばかっ……!」
お兄たまはリボンごとボクの手を掴むと……一瞬にして、ボクはお兄たまの胸の中でしゅ……お兄たま、どうしてしょんなことを?
だ……だめでしゅ! お兄たまが、黒焦げに…!
「お願いでしゅ、離れてくだしゃいっ…!」
ボクは最後のチカラを振り絞って、お兄たまを突き飛ばそうとするでしゅ。
「分かってらぁ……忘れたら、オレの気持ちはどうなるんだ……!」
……全身が、いたいどころじゃないでしゅ。ボク、本当にもう……
――ムルモ、オレは構わねえ!
「はなしてくだしゃいっ……!」
「はなさねぇ、そばにいろ……!」
お兄たまは顔を歪めながら、ボクを全身で受け止めたでしゅ。お兄たまの『そばにいろ』っていう強い言葉、そして……無限大の『願う力』が届いて、リボンに伝わったんでしゅ。ボクの手の中のリボンが、胸の奥と同じくらいぽかぽかと暖かくなって、まばゆい光を放ってボクたちを照らし出したでしゅ……
『ムルモ……悪かった。オレが素直じゃねーばっかりに……』
『お兄たま、安心してくだしゃい』
『ムルモ? お前、本当に大丈夫なのか?』
『あい……っ!』
声にしていないのに心が通じ合って、お兄たまの気持ちが、手にとるみたいに伝わってきましゅ。太陽みたいに暖かくて優しい、魔法よりしゅごいキセキの光と一緒に……。光はお兄たまとボクをふわりと包み込んで、身体中の痛みが、まるで雪が溶けるみたいにすーっと消えていって、あれほど苦しかったのが嘘みたいに無くなったでしゅ。
『……オレさ、お前のおかげで「だいすき」って想いに全力で向き合えた。ムルモの想いにも、オレの想いにも……ありがとな、ムルモ。
おめーのこと「だいすき」だ。ずっとそばにいてやるからな……!』
お兄たまが眩しい一番星のような、とびっきりの笑顔を見せてきたでしゅ。
『もっちろんでしゅ! ……ボク、お兄たまの想い、「だいしゅき」をうーんと受け取ったでしゅよ。今度はボクが、お兄たまをたっくしゃん支えてやるでしゅ! キャハ♡』
ボクはお兄たまに笑顔のお返しをすると、お兄たまはボクの頭を撫でて「……ありがとな」と、言ってきましゅ。……照れくしゃいけど、お兄たまの手が暖かくて…とっても嬉しいでしゅ。
『――お前たちの「願う力」、そして……「だいすき」という想い、受け取ったぞ!』
光がうーんと強くなるでしゅ。ボクたちの目の前に現れたのは、しゅごいオーラを纏った五人の見知らぬ妖精でしゅね……一見、お兄たまと同じ年頃の妖精に見えましゅが……。
「おめーら……どうなってやがんだ!?」
「お兄たまぁ……! あの人たち誰なんでしゅか?」
ボクは怖くなってお兄たまの服の袖をチカラいっぱいに掴むでしゅ。お兄たまも平気なふりをしてましゅが、ほんの
『オレはフィア! 少しは骨のあるやつと思ったが、とんだ手違いだったか?』
あの炎のようにメラメラしてる妖精、『フィア』って言ったでしゅ……ということは……
『ボサッとするんじゃねえ〜! お前らは「願う力」でここまできたんだぞ……』
『落ち着いてフィア、そんな言い方じゃふたりとも分からないよ。アクアでポンッ!』
噴水のような帽子を被った妖精が手を上にかざすと、光が消えて、目の前には不思議な光景が広がるでしゅ……
――真っ青な空に木と一体になった神殿……妖精の里とは大違いでしゅ。ボクたち、本当にしゅごい場所に来ちゃったでしゅ……!
「ここ、どこなんでしゅか……?」
しゅごいオーラを漂わせて、皆しゃんがどんどん近付いてきましゅ。お兄たまが驚いたように「ガイアの里……か?」と口を開いたでしゅ。
今度は草の帽子をかぶった、土色の髪の妖精がどっしりと構えて話しだしましゅ。
「ここ、ガイアの里の『聖なる木の神殿』」
「ヒョヒョヒョー! キミたちに大事な話があるから来てもらったんだぁ〜」
頭に風車を付けた妖精が髪をなびかせて、ぴょーんと飛び上がるでしゅ。
「あなた、この間マイクをもらいに来た妖精よね? 隣のかわいらしい妖精は……あら、気にしないで」
雲のようなふわふわ髪の妖精が優しくボクの手をとって握手してきたでしゅ……もう、何なんでしゅか!?
「あの……皆しゃん、ガイア族でしゅよね? ボクたちをいきなりへんな場所に飛ばして…あっ…握手だなんて……!? いくらボクがアイドルだからって……触覚ビィーームッ!!」
ボクはパンクして、頭から煙を出しそうになりましゅ。パニック状態で思いっきり触覚ビームを撃ち込もうとすると、お兄たまがボクを庇うように飛びついてきて、ビリビリと感電してしまいましゅ。またまた丸焦げのマシュマロ状態でしゅ……っ!
◆
「このガキ、なんて危ねえものぶっ放すんだ!」
フィアしゃんが慌てて飛び退いたあと、炎の髪をより一層メラメラさせてボクを怒鳴りつけましゅ。
「フィア、落ち着きなよ。この子は驚いちゃったんだよ。ねえ?」
アクアしゃんが優しく声をかけてくれましゅ。ボクは少ししょんぼりして頷きましゅ。
「あ、あい……ごめんなしゃい」
「落ち着いてられるかぁ〜!」
「気にしないで。フィアはいつもこうなの」
ピクモしゃんも優しくフォローしてくれましゅ。フィアしゃんは、まるでおやつのチョコを食べてやったときのお兄たまみたいで、ちょっとだけ怖いでしゅ。
アクアしゃんとピクモしゃんが近くに寄ってきて、黒焦げのお兄たまに手をかざすと、お兄たまがみるみる元に戻っていきましゅ……しゅごい魔法でしゅ!
「いってて……ムルモ、お前なにやってんだぁ……」
お兄たまは頭をさすりながら起き上がると、ボクのほっぺをつんつんしてきましゅ。
「おい、でも威力がいつも通りだぞ? ほんとに良くなったんだな、お前!」
「……病気、本当に治ったんでしゅか?」
「他人事みてぇに言うなよ」
「しょれに……」
ボクの病気が治っただけじゃないみたいでしゅ。さっきお兄たまがボクを抱きしめてくれた時、今までは胸がドキドキして苦しかったのに、今は全然違う気持ちなんでしゅ。ぽかぽか暖かくて、なんだかチカラが湧いてくるような……。
「あの……ガイア族の皆しゃん」
ボクは勇気を出して尋ねましゅ。
「このあたたかい気持ちはいったい何なんでしゅか? しょれに……ボクたち、どうしてガイアの里まで来ちゃったんでしゅか? 教えてくだしゃい、お願いしましゅ!」
ボクはお兄たまのそばから一歩離れて、ガイア族の皆しゃんにぺこりと頭を下げましゅ。
ドンタしゃんが「……礼儀正しい子」と小さく頷いたのが見えましゅ。すると、頭に風車を付けたウィンしゃんが、風車をくるりと回しながら言いましゅ。
「そうだね~、教えてあげよっか。ヒョヒョ! まずは、君たちがどうしてここにいるか……だね!」
ボクたちが、どうしてここに……でしゅか?
ウィンしゃんが促すと、今度は噴水みたいな帽子のアクアしゃんが一歩前に出てきましゅ。アクアしゃんの澄んだ瞳が、太陽の光を浴びた湖のようにキラリとして、ドキッとしましゅ……!
「ミルモとムルモくんがここにいるのは、君たちふたりの強い「願う力」……そして、お互いを想う「だいすき」な気持ちが、僕たちのところまで届いたからさ」
「ボクたちの願いと、だいすきな気持ち……?」
ボクはアクアしゃんの言った言葉を、不思議な気持ちで繰り返しましゅ……。
「そうだよ」と、アクアしゃんはこくりと頷きましゅ。
「ミルモ、君が叫んだ「そばにいろ」という願い。
――ムルモくんが生きていてほしい、元気になってほしい、幸せになってほしい……そして、彼とずっーと一緒にいたいという強い想い……それが、あのリボンを通して増幅されて、ものすごい奇跡を引き起こしたんだよ」
「オレの、願い……」
隣でお兄たまが、さっきの出来事を思い返しているのか、ばっちりと目を大きく見開いているのが見えましゅ。お兄たまの願いは、ボクのこと……。
「……あのとき、ムルモが生まれたての頃のこと…思い出したんだよ。こいつが笑ってくれて、ぜってー幸せにしてやるって本気で思ったのによ……」
お兄たまが少し俯いて呟きましゅ。
「だから思ったよ……離すもんか、ってさぁ……」
「お兄たま……」
ボクはお兄たまの袖をそっと掴みましゅ。胸がきゅっとなりましゅ。
「まあ……」
ピクモしゃんが少し悲しそうな顔をしゅるでしゅ。他のガイア族の皆しゃんも、なんだかしんみりした空気になりましゅ。
「……フィア、頭の火が消えてる」
ドンタしゃんがポツリと言いましゅ。
「……はっ、ほんとうかっ!? おりゃあああっーー!」
フィアしゃんは慌てて髪の毛の炎をボワッと燃やすと、なぜか焼き芋をポッと作り出して、お兄たまにズイッと差し出しましゅ。
「食え! 腹減ってんだろ? 元気出せ!」
「……わあったよっ…!」
お兄たまはちょっと驚きながらも焼き芋を受け取って、むしゃむしゃと食べ始めましゅ。食べ終えて少し元気が出たみたいなお兄たまは、フィアしゃんに「……ありがとよ」と言ったあと、ボクの隣に戻ってきましゅ。……フィアしゃんって、いつも怒ってるのかと思ったら、優しいところもあるんでしゅね。
「ミルモに、ムルモくん……」
アクアしゃんがお兄たまを見て微笑んだあと、今度は優しい視線をボクに向けてくれましゅ。
「そうだ、ムルモくん。君は願いをかけようとしたとき、リボンに涙を落としたよね?」
「あい……?」
「……そうか、マイクを貰ったときとおんなじだ! 涙はなによりも強え、願う力なんだったよな?」
お兄たまがパチンと指を弾きましゅ。……でも、不思議でしゅ。ボクの涙が、どうして……?
「あの、涙って強いんでしゅか?」
ボクは不思議に思って聞きましゅ。
「うん……涙はね、とても純粋で強い「願う力」の源になることがあるんだ。でもそれだけじゃないよ」
アクアしゃんは優しく教えてくれましゅ。
「君が今感じている、その「暖かくて、チカラ強い気持ち」は大切な人と離れたり、失いたくないって気持ちから解き放たれて、ミルモ……お兄ちゃんとのすごーい「絆」を心のすべて……「魂」で感じ取っている証拠かもしれないね」
「き、きずな…たましい……」
ボクは自分の胸にそっと手を当てましゅ。今までの恋のドキドキとは違う……もっと深くて、大きくて、あたたかい魂の繋がり……。これが、お兄たまとの絆……。ボクの胸がほんのり、じんわりと温かくなるでしゅ。
「さて、そこでだ」
フィアしゃんが、焼き芋のときとは違う真剣な顔をしゅるでしゅ。ドキッとして、思わずお兄たまに寄り添いましゅ。
「お前たちのその力……ただもんじゃねえってことは分かった。だが、その力が何を意味するか、分かってるのか?」
「フィアの言う通り。妖精の魔法は、大昔から五つの要素で出来ている…」
「ここで問題。五つの要素、つまり……
「ムルモ〜、分かるか?」
いきなりウィンしゃんがクイズを出してきたでしゅ。お兄たまがボクに答えさせるために肘をついてきたでしゅ。でもボク分かるんでしゅよ。学校で習いましゅもん!
「『火』『水』『土』『風』、しょれと『雲』の五つでしゅよね!」
ボクが自信満々に言うと、アクアしゃんが微笑んで頷きましゅ。
「その通りだよ、ムルモくん。その『五大元素』が、僕たち妖精の魔法の基本なんだ」
「ヒョー、完璧じゃん! はい!」
「ありがとうございましゅ、キャハ♡」
ウィンしゃんからソフトクリームを受け取って、ペロペロとなめるとふんわりとした甘さが口いっぱいに広がるでしゅ……
「ふぇぇ、お……おいしいでしゅ♡」
「チェッ、ぶりっ子しやがって」
「でね、でね……その五つの力をぜーんぶマスターしたすごぉーい妖精の証として、大昔から伝わる魔法陣があるんだ! ヒョヒョヒョー!」
ウィンしゃんがつむじ風のように、くるくると宙高く舞い上がると、目の前の空間にキラキラと光る五つの星の、妖精の魔法陣が現れましゅ。星の頂点にはそれぞれの元素のシンボルが、そして真ん中には真っ赤なハートが輝いていましゅ。
「わぁ……きれいでしゅ! ねっ、お兄たま?」
「あ…あぁ、そうだな……」
お兄たまはほっぺに汗をにじませてそう答えたでしゅ。……暑くないのに、どうしたんでしゅか?
「そうだろ。この魔法陣を完全にマスターして自分のものにすると、使う魔法が超パワーアップするんだ! そのうえ……」
フィアしゃんが説明しかけると、ピクモしゃんがふんわりと言葉を続けましゅ。
「その妖精が魔法を使うと、楽器から五つのとっても綺麗な光が出るようになるの。まるで雲の上にかかる虹みたいよ……!」
ピクモしゃんがうっとりした表情をするでしゅ。瞳がキラキラしてましゅね……!
「五つの光……!」
お兄たまが目を見開いて呟きましゅ。
「ってことは、親父のアレか……! 王様になるには、アレができないといけねーって、だからオレは…」
五つの光といえば、お父たまが魔法を使うと、楽器から出てくる、あの光のことでしゅか……?
「お兄たま?」
「やっぱり、ミルモくんも練習してたんだねー?」
ウィンしゃんがお兄たまの言葉を察したみたいに尋ねましゅ。
「……ああ。ガキの頃、無理やりな」
お兄たまが苦々しい顔で認めると、ボクはびっくりして聞き返しゅでしゅ。
「お兄たまが練習を…? ボク、そんなの全然知らなかったでしゅ……どうして黙ってたんでしゅか……?」
お兄たまはボクに向き直ると、少し照れたような、でもすごく真剣な、優しい目で言ったでしゅ。
「……んな面倒くせーもん、おめーにやらせるわけねーだろ。
オレが親父と約束したんだ。『ムルモには関係ねえ、あいつは自由に、好きなことだけしてりゃいいんだ』ってな。お前には、そんなもんに縛られてほしくなかったんだよ」
「お兄たま……っ!」
またボクの目から涙が溢れてきましゅ。ボクのこと、そんなに大切に想ってくれてたなんて……。お兄たまの隣にいられて、本当に幸せでしゅ!
「お兄たま
「おいムルモ、何すんだ! 甘えやがって……」
ボクはお兄たまに思いっきり抱きつくでしゅ。
アクアしゃんがそれを見て嬉しそうに笑うと、静かに、でもはっきりとした声で続けましゅ。
「元素の力も、それをマスターすることも、もちろん素晴らしいことだよ。でもね……この魔法陣で本当に、いっちばん大切で、強い力は…ここなんだ」
アクアしゃんが指し示したのは、魔法陣の中心で、ひときわ強く赤く輝いているハートのシンボルでしゅ。
「星の中心にあるのは『
ボクとお兄たまは、吸い込まれるように魔法陣のハートを見つめましゅ。さっき、ボクたちを包んだ光の暖かさ、そして心の声が聞こえた不思議な感覚……。あれが、「願う力」の奇跡だったんでしゅね。
「そうだ! 何かを『叶えたい!』って強く願えば、普通の魔法なんか軽く超えちまう、とんでもねえ奇跡だって起こせる! お前たちがさっきやったみたいにな!」
フィアしゃんがニカッと笑って言いましゅ。
「あなたたち二人の、『だいすき』っていう強い強い想いが起こした、素敵な奇跡なのよ」
ピクモしゃんが、優しく微笑んでくれましゅ。
ボクは隣にいるお兄たまの顔を見上げましゅ。お兄たまも、ボクのことを見ていましゅ。
――ガイア族の皆しゃんの言葉が、ボクたちの間に生まれたこの暖かくて強い絆が……本当に特別で、すごい力を持っているということを、改めて教えてくれているようでしゅ。ボクは胸いっぱいの幸せを感じながら、お兄たまににっこりと微笑み返したでしゅ。
「そして、その力は…」
ドンタしゃんが、さらに重々しい声で続けましゅ。「使い方によっては、この妖精界の古い掟や、決められた運命さえも、変える可能性を秘めている…」
「掟を、変える力……?」
お兄たまが息を呑むのが分かりましゅ。ボクもドキドキしてしまいましゅ。掟を変える…?
「そうだよ〜!」
ウィンしゃんがくるりと一回転しましゅ。
「だから聞きたいんだ。キミたちは、その特別な力と絆をもって、これからどうしたい? 古い決まりごとに縛られ続けるのかい? それとも……」
ガイア族の皆しゃんの五対の目が、真っ直ぐにボクとお兄たまに向けられましゅ。それは、ただ聞いているだけじゃない、ボクたちの未来への覚悟を試すような……真剣な眼差しを感じるでしゅ――。
ボクは隣にいるお兄たまの顔を見上げましゅ。お兄たまも、ボクのことを見て力強く頷いてくれましゅ。その目にはもう迷いはありましぇん。ボクもぎゅっとお兄たまの手を握りましゅ。大丈夫でしゅ。お兄たまとなら、きっと……!
お兄たまが一歩前に出て、ガイア族の皆しゃんを真っ直ぐに見据えましゅ。
「そんなの決まってらぁ。オレは、こいつの…ムルモのそばにいる。誰にも、何にも邪魔させねえ」
その力強い言葉に、ボクの胸も熱くなりましゅ。ボクも隣に並んで、精一杯の声で叫びましゅ!
「……ボクも、お兄たまのそばにずっといましゅ! ボクたちの『だいしゅき』な気持ちと、このあたたかい『絆』があれば、なんだってできるって信じてましゅ…… お兄たまとなら、どんな未来だって創っていけましゅ!」
お兄たまが続けましゅ。少し照れたような、でもすごく強い意志のこもった声でしゅ。
「掟でもなんでもかかってこい! もしそれが邪魔をするってんなら、『願う力』で変えてみせる! それが、オレたちの選ぶ道だ!」
お兄たまの言葉は、すごく頼もしくて、カッコよくて……ボクは胸がいっぱいになりましゅ。
『
ガイア族の皆しゃんが揃えて声をあげたでしゅ……! 表情も、なんだかふっと和らいだように見えましゅ。
アクアしゃんが、優しい笑顔で頷きましゅ。
「……その言葉、受け取ったよ。ふたりとも素晴らしい覚悟だよ」
ドンタしゃんも、静かに……そして威厳のある声で言いましゅ。
「君たちの『願う力』は、妖精界そのものを変える可能性を秘めている……でも、忘れないで。道はカンタンじゃない。ふたりの絆が試される時も来るかも」
「望むところだぁ!」
お兄たまがニッと笑うのが見えましゅ。その顔は、堂々とした自信が満ちあふれてるでしゅ。
ボクも負けずに胸を張りましゅ!
「ボクたちふたりなら、絶対に大丈夫でしゅ!」
ピクモしゃんが、ふんわりと微笑んでくれましゅ。
「あら、頼もしいわ。ふたりの未来に、虹が架かりますように……」
「ボクたちも応援してるからねー! ヒョヒョ!」
と、ウィンしゃんが手を振ってくれましゅ。
「へっ……まあ、困ったことがあったら、いつでも焼き芋くらいは差し入れしてやるよ! 別に心配してるわけじゃねーけどな……!」
フィアしゃんはそっぽを向きながらも、なんだかちょっとだけ嬉しそうでしゅ。
「ソフトクリームも出すからまたおいでよ〜」
「水あめも出そうよ」
「わたあめもあるといいわね」
「……団子もね」
皆しゃん、本当は優しいんでしゅね。
最後に、アクアしゃんがボクたちに優しく語りかけましゅ。
『君たちらしい『自由』な道を、その『特別な絆』と共に、力強く歩んでいくといいよ……』
皆しゃんがそっと手をかざすでしゅ。
『ガイアでポーンーーッ!』
再び温かくて優しい光がボクたちを包み込みましゅ。ガイアの里の景色と、ガイア族の皆しゃんの姿が薄くなって、だんだんと光の中に溶けていくでしゅ……。
『ボク、お兄たまとチカラを合わせて、妖精界をもっともっーと幸せな場所にしていくでしゅ。だから……どうか見守っていてくだしゃい!』
光に向かって、ボクは精一杯叫ぶでしゅ。最後に見たガイア族の皆しゃんはとても穏やかで、力強い笑顔だった気がしましゅ――。
