えぺ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…しんど」
激務の合間に訪れた、つかの間の休息。安物のベッドに身を投げた僕を、ソファで優雅にティーブレイクを楽しむライフラ姉さんが労わってくれた。
「大変だね、アンタも」
「ありがとう姉さん…」
D.O.Cに癒してもらいながら、オクタンが押し付けてきたタブレットから流れる動画を見る。内容は予想通りというかなんというか、やはり彼の活躍シーン集だった。
何度見たかわからない映像だが、それでも見る者を魅了する動きは、休暇中にのんびり眺めるには程よく心地良い映像と言える。
否、疲れきっているこの状態で見るには少しばかりカロリーが高いというかなんというか、オクタンが活躍する裏で起こっている数々の惨状を考えると、素直に喜べないものであるが。
「ハハッ! 相変わらず体力ねぇなぁ」
当のオクタンはと言うと、僕が寝そべっているベッドのすぐ横に置かれたパイプ椅子に座ってこちらの気苦労など全く意に介さない様子で煽ってくる。
「激務すぎるんだよ、誰かさんのせいでね…」
「だとさアネキ、困ったもんだな」
「オー! アンタ少しは考えて喋りなさい!」
とぼけるオクタンを諌める姉さん。流石に懲りたのかそれ以上彼は何も言わなかったが、僕の苦労を欠片もわかっていなさそうな様子には呆れてものも言えなかった。
尤も全部が全部オクタンが悪いわけでもないので、彼の反応がこうなるのも仕方のないことではあるが。
「…もっと自分のこと以外も考えて欲しい」
観戦中、および試合の前後における作業を省みての嘆息を零す。彼の戦いに限らず、胃が痛くなるような惨状に出会す頻度があまりに多すぎるのだ。
見ている側だからこそ言えることだと詰られればそれまでだが、だとしても苦言を呈したくなる程ということは参加する人間には知っていて欲しいと願ってしまう。
「って言われてもよ…戦ってる最中は無理だぜ、目の前に敵が居るんだから殺らなきゃこっちがやられちまう」
「それで返り討ちに遭ってアタシが助けなきゃいけない羽目になるんでしょうが」
「アネキがチンタラしすぎなんだ。アイテムかき集めてる間、敵は待っちゃくれねえぞ」
オクタンにすかさず反論するライフラ姉さん。しかしオクタンも負けじと言い返す。どちらの考えが正しいかは、戦場に降りたことの無い僕には判断出来ず口論を見守ることにする。
無謀な行動は味方全員の危機に繋がるが、確かにライフラ姉さんが接敵したオクタンを余所に物資集めに勤しんでいるのであれば、チームとしての連携はボロボロと言えるだろう。
「…マキナはどう思う?」
「えっいや、僕に聞かれても…」
分が悪いと感じて僕を味方につけようとしたのだろうライフラ姉さんが、唐突に同意を求める目で見つめてくる。けれど僕は彼女のその真意を察するより早く、困惑を口にしてしまっていた。
「マキナを言いくるめようったってそうはいかねーぜ。もう一人はちゃんと俺に合わせて戦ってたんだからよ」
「あ、そこは三人で全員違うことしてた訳では無いんだね。そうなると流石にライフラ姉さんの援護が遅かったと推測せざるを得ないかな」
「うっ…それが良くなかったのは今ならわかる。でも距離が離れてると思ってたから敵に取られる前に先に物資を集めておかなきゃって…」
オクタンが補足した情報が正しいなら、単独行動で数的不利を作り出していた姉さんが隙を作る要因となってしまったのは間違いない。
そう指摘すると、姉さんにとってその失態は存外胸に刺さっていたらしく、僕の想像していたよりもずっと哀しげに項垂れる。
そこまで彼女を責めるつもりは無かったのに、こうも卑屈になられてしまうと逆に申し訳ない気持ちになる。
それはオクタンも同じだったようで、いつの間にか僕の方へにじり寄って肘を突いて小声で囁いてきた。
「マズイぜアミーゴ、こうなるとシェは長引きやすいんだ。何かフォローしてくれよ」
「わ…わかった」
幼馴染かつ腐れ縁らしい、彼なりのライフラ姉さんへの気遣い。根無し草の僕には眩しすぎる、堅く結ばれた絆を垣間見た気がした。
まあ、そもそもレジェンドのメンタルケアも僕の仕事の一環だと言うのに、その僕が図星を突いて落ち込ませてしまってはサポートメンバーとしての名折れだ。
わざとらしく咳払いをして場の空気をリセットした上で、僕はライフラ姉さんに向き直って語りかける。
「でも姉さん、きっとその時も姉さんが集めた物資のおかげで敵を反撃出来たんでしょう? なら問題ないと思うよ」
「…ありがとうマキナ。確かに考えてみればそうだったわ、やっぱりアタシがいたお陰で命拾いしたってことよね」
流石と言うべきか、素早く立ち直ってそう豪語する。些か極端すぎるようにも感じる姉さんの思考回路に、密かに僕はオクタンと肩を竦め合った。
「でも姉さん、味方同士で足並み揃えるのはとても大事なことだから…オクタンも敵が居るって声掛けひたすらするとか、姉さんもアレもコレもじゃなく本当に今必要なものだけ取るとか。上手く折り合いをつけて欲しいかな」
僕なりの考えを伝えると、二人はぽかんとした表情で揃って僕の方を見つめる。
「確かにあまり仲間の状況考えたこと無かったな…これからは気を付けるぜ」
「アタシも…皆の分までアイテムを占有してたことが少なくない気がする。ちゃんと考えて取らないとダメってことよね」
どうやら先の呆然とした顔は、僕という全く別の視点からの指摘を姉さんもオクタンも素直に受け止めて納得してくれたからだったようだ。
彼らも意識しきれていなかった面に気付きを与えられたということだろうか。だとしたら僕もレジェンドの役に立ててとても嬉しい。
「そうやって互いを高めて行けるのはいいチームの証だよ。月並みなことしか言えないけど、これからも頑張って」
願うようにそう口にする。想いは正しく伝わったらしく、オクタンがいつものようにコルナを見せながらこちらに笑いかけてくれた。
「ありがとよ、マキナ。ファンからの声援ってのはやっぱ良いもんだな」
「…ファンと言うには、僕の位置は皆に近すぎるようにも思うけどね」
そう、ファンでありながらもエンジニアとして面と向かってレジェンドと対面するなど、本来有り得ないことだ。
そして更に、一介のエンジニアという立場を越えてレジェンドの皆と親交を深めているのを黙認されてるのも、我ながら恐れ多いことだとは思っている。
尤もこれは、オクタンとライフラ姉さん以外にも言えることだが。こんな状態が許されるのはやはり僕の後ろにブリスクおじさんがいるから、なのだろう。
「ま…それはそうね。でも一番近くで見てくれてるからこそ、さっきのようなアドバイスも素直に受け入れられるのは確かよ」
「ハハッ、どうかな。アネキは頑固だからな」
「シルバに言われたくないわよ。アンタ一度言い出したら聞かないじゃない」
二人の言い争いを、先程まで集中して見れない為に止めていたオクタンの映像集を眺める傍らで聞き入る。
何年経っても変わらないまま続いてきたであろうやり取りが、僕にとっては心地よいBGMのように感じられた。
だがどうやら僕が聞き流していた間に互いにヒートアップしすぎたらしく、とうとうオクタンが頭に血が昇りすぎているとしか思えない言葉を口にする。
「もう我慢ならねえ。マキナ、誤射防止の味方防御プログラムって無くせないのか? 戦場で決着着けなきゃ気がすまねえぞ!」
「無理」
これ以上なく手短に、彼の憤りを無視するように努めて答える。フレンドリーファイアシステムなどという、百害あって一利なしの仕様を望む参加者なんて言語道断だ。
「どうしてもと言うなら、チーム解消して別々に参加して互いを殺し合う以外無いんじゃないかな。それでもいいなら今ここで僕がその為の手続きを承ろうか?」
怒りを抑えつつ淡々と、脅すように問う。具体的な案を出されてようやく彼は我に返ったのか、慌てた様に両手を振る。
「ああいや悪かった。チーム解消するのは勘弁してくれ」
「それなら、謝る相手は僕じゃないでしょ?」
「…そうだな」
僕が介入してから沈黙を守る姉さんの方を一瞥する。背けていた顔は見えず、表情を窺い知ることは出来なかった。
「すまねえ姉貴。どうかしてた」
「いい…アタシも少し言い過ぎた」
微かに掠れた声で、静かに姉さんが首を振る。仲違いによるチーム解消はどうにか未遂に終わって、僕は心の底から安堵する。
それにしても、本当に肝が冷えた。ここまでの緊張感を味わったのは、この業務に携わるようになってから初めてのことかもしれない。
「…一時はどうなるかと思ったけど、無事に仲直り出来て何より。今度二人が試合に出る時は、口論になっても仲裁が出来る人と組めるように進言しておくよ。ジブさんとか空いてるといいね」
「気遣わせてごめんマキナ。 …昔からいつもそう。シルバと言い合ってるとつい熱くなっちゃう」
お互い大事に想っている筈なのに、いや、だからこそなのかな。本音を何度もぶつけあって、それでも離れることなく傍に居続ける。
何かの切っ掛けでいつか彼らが道を違える日が来てしまうのかもしれないが、そうなる日は永遠に来ないで欲しいと、二人のファンとして願わずにはいられなかった。
「口論してたら疲れちまったな…姉貴、俺もD.O.C繋いでいいか」
「ダメよ、アタシが先」
「それなら僕はもう充分だから、オクタンはこっちのコードを使って」
僕に繋いでいたコードを掴んで、オクタンに受け渡す。しかしオクタンが接続するより先、姉さんが繋いですぐに、D.O.Cからエネルギー切れを知らせる無慈悲な音が響くのだった。
「…あっ」
激務の合間に訪れた、つかの間の休息。安物のベッドに身を投げた僕を、ソファで優雅にティーブレイクを楽しむライフラ姉さんが労わってくれた。
「大変だね、アンタも」
「ありがとう姉さん…」
D.O.Cに癒してもらいながら、オクタンが押し付けてきたタブレットから流れる動画を見る。内容は予想通りというかなんというか、やはり彼の活躍シーン集だった。
何度見たかわからない映像だが、それでも見る者を魅了する動きは、休暇中にのんびり眺めるには程よく心地良い映像と言える。
否、疲れきっているこの状態で見るには少しばかりカロリーが高いというかなんというか、オクタンが活躍する裏で起こっている数々の惨状を考えると、素直に喜べないものであるが。
「ハハッ! 相変わらず体力ねぇなぁ」
当のオクタンはと言うと、僕が寝そべっているベッドのすぐ横に置かれたパイプ椅子に座ってこちらの気苦労など全く意に介さない様子で煽ってくる。
「激務すぎるんだよ、誰かさんのせいでね…」
「だとさアネキ、困ったもんだな」
「オー! アンタ少しは考えて喋りなさい!」
とぼけるオクタンを諌める姉さん。流石に懲りたのかそれ以上彼は何も言わなかったが、僕の苦労を欠片もわかっていなさそうな様子には呆れてものも言えなかった。
尤も全部が全部オクタンが悪いわけでもないので、彼の反応がこうなるのも仕方のないことではあるが。
「…もっと自分のこと以外も考えて欲しい」
観戦中、および試合の前後における作業を省みての嘆息を零す。彼の戦いに限らず、胃が痛くなるような惨状に出会す頻度があまりに多すぎるのだ。
見ている側だからこそ言えることだと詰られればそれまでだが、だとしても苦言を呈したくなる程ということは参加する人間には知っていて欲しいと願ってしまう。
「って言われてもよ…戦ってる最中は無理だぜ、目の前に敵が居るんだから殺らなきゃこっちがやられちまう」
「それで返り討ちに遭ってアタシが助けなきゃいけない羽目になるんでしょうが」
「アネキがチンタラしすぎなんだ。アイテムかき集めてる間、敵は待っちゃくれねえぞ」
オクタンにすかさず反論するライフラ姉さん。しかしオクタンも負けじと言い返す。どちらの考えが正しいかは、戦場に降りたことの無い僕には判断出来ず口論を見守ることにする。
無謀な行動は味方全員の危機に繋がるが、確かにライフラ姉さんが接敵したオクタンを余所に物資集めに勤しんでいるのであれば、チームとしての連携はボロボロと言えるだろう。
「…マキナはどう思う?」
「えっいや、僕に聞かれても…」
分が悪いと感じて僕を味方につけようとしたのだろうライフラ姉さんが、唐突に同意を求める目で見つめてくる。けれど僕は彼女のその真意を察するより早く、困惑を口にしてしまっていた。
「マキナを言いくるめようったってそうはいかねーぜ。もう一人はちゃんと俺に合わせて戦ってたんだからよ」
「あ、そこは三人で全員違うことしてた訳では無いんだね。そうなると流石にライフラ姉さんの援護が遅かったと推測せざるを得ないかな」
「うっ…それが良くなかったのは今ならわかる。でも距離が離れてると思ってたから敵に取られる前に先に物資を集めておかなきゃって…」
オクタンが補足した情報が正しいなら、単独行動で数的不利を作り出していた姉さんが隙を作る要因となってしまったのは間違いない。
そう指摘すると、姉さんにとってその失態は存外胸に刺さっていたらしく、僕の想像していたよりもずっと哀しげに項垂れる。
そこまで彼女を責めるつもりは無かったのに、こうも卑屈になられてしまうと逆に申し訳ない気持ちになる。
それはオクタンも同じだったようで、いつの間にか僕の方へにじり寄って肘を突いて小声で囁いてきた。
「マズイぜアミーゴ、こうなるとシェは長引きやすいんだ。何かフォローしてくれよ」
「わ…わかった」
幼馴染かつ腐れ縁らしい、彼なりのライフラ姉さんへの気遣い。根無し草の僕には眩しすぎる、堅く結ばれた絆を垣間見た気がした。
まあ、そもそもレジェンドのメンタルケアも僕の仕事の一環だと言うのに、その僕が図星を突いて落ち込ませてしまってはサポートメンバーとしての名折れだ。
わざとらしく咳払いをして場の空気をリセットした上で、僕はライフラ姉さんに向き直って語りかける。
「でも姉さん、きっとその時も姉さんが集めた物資のおかげで敵を反撃出来たんでしょう? なら問題ないと思うよ」
「…ありがとうマキナ。確かに考えてみればそうだったわ、やっぱりアタシがいたお陰で命拾いしたってことよね」
流石と言うべきか、素早く立ち直ってそう豪語する。些か極端すぎるようにも感じる姉さんの思考回路に、密かに僕はオクタンと肩を竦め合った。
「でも姉さん、味方同士で足並み揃えるのはとても大事なことだから…オクタンも敵が居るって声掛けひたすらするとか、姉さんもアレもコレもじゃなく本当に今必要なものだけ取るとか。上手く折り合いをつけて欲しいかな」
僕なりの考えを伝えると、二人はぽかんとした表情で揃って僕の方を見つめる。
「確かにあまり仲間の状況考えたこと無かったな…これからは気を付けるぜ」
「アタシも…皆の分までアイテムを占有してたことが少なくない気がする。ちゃんと考えて取らないとダメってことよね」
どうやら先の呆然とした顔は、僕という全く別の視点からの指摘を姉さんもオクタンも素直に受け止めて納得してくれたからだったようだ。
彼らも意識しきれていなかった面に気付きを与えられたということだろうか。だとしたら僕もレジェンドの役に立ててとても嬉しい。
「そうやって互いを高めて行けるのはいいチームの証だよ。月並みなことしか言えないけど、これからも頑張って」
願うようにそう口にする。想いは正しく伝わったらしく、オクタンがいつものようにコルナを見せながらこちらに笑いかけてくれた。
「ありがとよ、マキナ。ファンからの声援ってのはやっぱ良いもんだな」
「…ファンと言うには、僕の位置は皆に近すぎるようにも思うけどね」
そう、ファンでありながらもエンジニアとして面と向かってレジェンドと対面するなど、本来有り得ないことだ。
そして更に、一介のエンジニアという立場を越えてレジェンドの皆と親交を深めているのを黙認されてるのも、我ながら恐れ多いことだとは思っている。
尤もこれは、オクタンとライフラ姉さん以外にも言えることだが。こんな状態が許されるのはやはり僕の後ろにブリスクおじさんがいるから、なのだろう。
「ま…それはそうね。でも一番近くで見てくれてるからこそ、さっきのようなアドバイスも素直に受け入れられるのは確かよ」
「ハハッ、どうかな。アネキは頑固だからな」
「シルバに言われたくないわよ。アンタ一度言い出したら聞かないじゃない」
二人の言い争いを、先程まで集中して見れない為に止めていたオクタンの映像集を眺める傍らで聞き入る。
何年経っても変わらないまま続いてきたであろうやり取りが、僕にとっては心地よいBGMのように感じられた。
だがどうやら僕が聞き流していた間に互いにヒートアップしすぎたらしく、とうとうオクタンが頭に血が昇りすぎているとしか思えない言葉を口にする。
「もう我慢ならねえ。マキナ、誤射防止の味方防御プログラムって無くせないのか? 戦場で決着着けなきゃ気がすまねえぞ!」
「無理」
これ以上なく手短に、彼の憤りを無視するように努めて答える。フレンドリーファイアシステムなどという、百害あって一利なしの仕様を望む参加者なんて言語道断だ。
「どうしてもと言うなら、チーム解消して別々に参加して互いを殺し合う以外無いんじゃないかな。それでもいいなら今ここで僕がその為の手続きを承ろうか?」
怒りを抑えつつ淡々と、脅すように問う。具体的な案を出されてようやく彼は我に返ったのか、慌てた様に両手を振る。
「ああいや悪かった。チーム解消するのは勘弁してくれ」
「それなら、謝る相手は僕じゃないでしょ?」
「…そうだな」
僕が介入してから沈黙を守る姉さんの方を一瞥する。背けていた顔は見えず、表情を窺い知ることは出来なかった。
「すまねえ姉貴。どうかしてた」
「いい…アタシも少し言い過ぎた」
微かに掠れた声で、静かに姉さんが首を振る。仲違いによるチーム解消はどうにか未遂に終わって、僕は心の底から安堵する。
それにしても、本当に肝が冷えた。ここまでの緊張感を味わったのは、この業務に携わるようになってから初めてのことかもしれない。
「…一時はどうなるかと思ったけど、無事に仲直り出来て何より。今度二人が試合に出る時は、口論になっても仲裁が出来る人と組めるように進言しておくよ。ジブさんとか空いてるといいね」
「気遣わせてごめんマキナ。 …昔からいつもそう。シルバと言い合ってるとつい熱くなっちゃう」
お互い大事に想っている筈なのに、いや、だからこそなのかな。本音を何度もぶつけあって、それでも離れることなく傍に居続ける。
何かの切っ掛けでいつか彼らが道を違える日が来てしまうのかもしれないが、そうなる日は永遠に来ないで欲しいと、二人のファンとして願わずにはいられなかった。
「口論してたら疲れちまったな…姉貴、俺もD.O.C繋いでいいか」
「ダメよ、アタシが先」
「それなら僕はもう充分だから、オクタンはこっちのコードを使って」
僕に繋いでいたコードを掴んで、オクタンに受け渡す。しかしオクタンが接続するより先、姉さんが繋いですぐに、D.O.Cからエネルギー切れを知らせる無慈悲な音が響くのだった。
「…あっ」
6/28ページ