えぺ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
唐突だが、僕は今蝋燭の灯り一つしかない暗闇の中にいる。少し冷えた空気の中で、向かい側に座る"彼女"のセッティングの元、何をするかも聞かされることなく招かれた小部屋にて、灯火で辛うじて見える範囲に設えられた質素なチェアに座らされている状況だ。
「今日は来てくれてありがとう。戦場で組んだチームメイトから、とても興味深い星の元に生まれた技師が居るって聞いて、楽しみにしていたのよ」
と、言うことらしい。どうやら此度の新たなレジェンドは、神秘的な信仰を嗜む者のようだ。
僕自身は占いや呪 いの類に関して特別毛嫌いする程では無いが、そこまで信憑性があるものとも思わない。一般的よりは懐疑的な見方をしている方かもしれない。
「…僕は自分がそんなに特異な存在だとは思ってませんけども」
オビさんがそうだと言われるのはわかる。彼にとっては不本意ではあれど、母星の大事件と時を同じくして生まれた身では無理もない。
だが、僕にはそんな特別なことは今はもうない。確かに昔は機械が話をすると思っていた、否、確かに彼らの声が聞こえていた時期こそあったが、その特技だか異能だかも、既に失って久しいものだ。
というかそもそも、僕に向けて興味深い星という表現をすること自体が違和感でしかない。そういうのはレジェンドの皆が持つもので、末端技師の僕が与えられるものじゃないだろう。
「そうかしら。少なくとも、多くのレジェンドが貴方のことを評価している…それが技師としての実力によるものだけだと、本当に言い切れる?」
僕の全てを見透かすような瞳が、暗がりに浮かび上がる。息を呑むような魅力に気圧されそうになりつつ、僕はそれでも彼女の言葉を肯定出来なかった。
「それ以外にもあるからだと、カタリストさん…貴方はそう思っているのですか?」
「質問に質問で返すのはズルいわよ。ま、私も意地悪な言い方をしたからおあいこだけど。でも今のでわかったでしょう、普通に話していても面白い反応が見られる。それだけで充分、貴方が魅力的な人である証拠よ」
少し不貞腐れた後にそう笑んでみせて、僕の手を握るカタリスト氏。僅かに抱いた違和感に戸惑っていると、彼女は小さく溜息を零して。
「あら、気付いた? 少し触っただけでわかるなんて、もしかして貴方も…」
「…」
ああ、そういうことか。彼女の反応から察すると共に、僕は言葉を失う。彼女は、生まれた時からずっと"彼女"だったわけではないようだ。
いつ頃かは定かではないが、かつて"彼"だった過去を断ち切って今に至るということらしい。
そのことで仲間意識を持たれてしまうのは些か心苦しいものがある。僕は一人称こそ"僕"ではあるが、性を違えて生まれてきたと思ったことは一度もないのだ。
「いえ、僕は…残念ながら違います。ただの…虚勢みたいなものです。すみません」
ゆっくりと口を開く。汗が滲むのは、蝋燭の熱が篭もるせいだろうか。
けれど僕が"僕"である理由なんて、きっと彼女が抱いてきた苦しみに比べればほんの些細なもの。
確かに、多少は打算もある。女だと思われた瞬間、僕の技師としての評価が正当なものでなくなるというのは、恐怖や不安ではなく事実として過去にあったことだ。
たかが一人称ひとつでその不快な印象と固定観念が曲げられるのなら、安いものだ。逆に言ってしまえば、そんな程度のものでしかない。
いや、"なかった"という方が正しいか。今となってはあまりに自分のことを"僕"と言い続けた時間が長すぎて、今更変えようがないのも身に染みて感じている。
「…いいのよ。謝らないで」
触れていた掌を強く握り締め、カタリスト氏は大きく首を振る。恐らくは勝手に解釈して僕に不快な想いをさせたことを悔いているのだと思うが、もしそれが本当だとしたら根本から間違いだ。
悪いのは曖昧な僕で、カタリスト氏ではない。寧ろ、同志だと期待させるだけさせて落胆させてしまったことの方が申し訳ない。
「私とは異なる形で、貴方も多くの苦悩に苛まれてきたのね」
「…貴方にとってはなんてことのない、ちっぽけなことですよ」
「クオレ、そうやって自分を卑下する必要はないわ。感じ方は人それぞれだもの、貴方が過去に受けた苦しみは否定しなくていいのよ」
握った手を使い、僕の頭を引き寄せる。そして割れ物に触れるようにそっと撫でて、ゆっくりとその身を近付ける。
「そう…ですね。ありがとうございます」
少しだけ晴れぬ気持ちを抱えつつ、緩やかに瞳を閉じて感謝の意を伝える。カタリスト氏の無償の優しさが、今だけはどうにも痛いと、そう感じてしまう。
僕とそんなに歳が離れていない筈なのに、彼女がこんなにも達観しているのは、やはりそれだけ多くの苦難を乗り越えて来たからではないのかとは思わずにはいられなかった。
「お礼なんていいのよ、私は貴方のことをもっと知りたいの。ゲームのアシスタントとしてではない、ありのままのクオレ・マキネッタという人物を」
そう告げると彼女は徐に暗闇の中へと身を潜めて、何やら荷物をゴソゴソと漁り始める。
どんな代物が出てくるのか不安半分期待半分で待ち構えていると、準備が整ったらしく手に持ったものを明かりの元に照らす。
見せられたのは、束ねられたカード。トランプか何かだろうか、小洒落た模様が目に入った。それを慣れた手付きで混ぜて、僕の眼前に差し出してきた。
「私がやったのと同じように混ぜてみて」
「わ、わかりました」
渡されたカードの束を両手で受け取り、カタリスト氏の手捌きを思い返しながら無作為に混ぜていく。
だが当然ながら彼女のように洗練された混ぜ方が出来るはずもなく、向きも疎らにごちゃ混ぜになってしまった。
判別出来る範囲で上下を整えようとしたところを、そっと制止されそのまま持って行かれる。どうやら意識して直そうとしてはいけないらしい。
「タロット占いは向きも大事な要素なの。どちらが上か考えて作為的に変えようとしてはダメ」
ああ、なるほど。手頃なカードの束という点だけでトランプかと思い込んでいたが、似て非なるものだったということか。
「深呼吸して、何も意識しない状態で一枚選んで」
「これにします」
「ありがとう。じゃあ、視るわね」
選んだ一枚をめくった途端、カタリスト氏は驚嘆した様子で口許を抑える。動揺を隠しきれないその様からするに、あまり良くない引きだったのかと不安が過ぎる。
だが、どうもその逆らしい。動揺に見えたそれはやがて興奮に変わり、上擦った声で彼女は僕が引いたカードの意味を語ってくれた。
「審判 の正位置はワンオラクルにおいてはとてもいい結果なの。世の理が貴方を認めてくれている、そう言っても差し支えないくらい」
突拍子もないというか、あまりにも壮大な語り口で俄には信じられずにいると、それを察知した彼女が苦笑を零す。
「嘘みたい、って思ってる顔でしょそれ。でも言霊って本当にあるのよ、だから信じてくれると嬉しいわ」
「ど…努力します」
カタリスト氏の笑みが、無言の圧力にしか感じられない。だが僕自身、技術面以外に対する評価が低いことは常日頃色んな仲間から指摘されているのはその通りなので、ここは頷くしか出来なかった。
けれど、僕が人ではない何に認められていると言うのだろう。彼女もブラハさんのように、信じる神を胸に抱く人なのか?
そういえばブラハさんは確かにカタリスト氏と話が合いそうだとふと思う。自らの性について思い悩む身として、腹を割って話したことがあるかもしれない。
「努力、ね…」
意味深に反芻して、それきり押し黙る。今の彼女は、オビさんによって努力を台無しにされてしまったも同然、あまりに迂闊な発言だったと後悔する。
「すみません」
「うん? どうして貴方が謝るの?」
「…僕のせいで気分を害してしまったと思って」
「大丈夫よ、考えていたのはクレオのことじゃないわ」
頭を垂れつつ抱いた後悔の念をを伝えると、カタリスト氏は慌てた様子で両手を振る。
杞憂だからと笑ってこそくれたが、その笑みには覇気がなかった。どちらかと言うと、僕が下手に変なことを言ったせいで意識してしまった可能性が高いような気さえする。
「クオレ」
唐突に名を呼ばれ、思わず背筋が伸びる。カタリスト氏も真剣な眼差しでこちらを見つめて、僕もよく知るあのマークが刻印されたカードを掲げた。
「貴方が今居る地位は、努力によって勝ち取ったもの? それとも運命に身を委ねた結果?」
「どちらの要素もあります。ゲームに関わるようになったのは偶然とは言え、身につけた技術は紛れもなく僕自身の努力の結果だと信じています」
深い闇の中に居るせいか、少し寒気を感じつつそう答える。彼女がどういう経緯でゲームへの参戦資格を得たか定かでない以上、迂闊に僕とブリスクおじさんとの関係性を暴露するのは控えておいた。
しかしこれで彼女が納得する答えになっているかは些か不安があるが、神妙な面持ちから察するにどうやら受け入れ難いものではなかったようだ。
「…それを聞いて安心したわ。なら私も…欲しいものは自分の手できちんと勝ち取らないとね」
欲しいもの、というのはボレアスの未来か。あるいは砕けた月クレオだけを指しているのかもしれないが、それは今の会話だけでは判断しようがなかった。
「僕からは月並みなことしか言えませんが…頑張ってください」
「ええ、ありがとう。折角だから、私が願いを叶えられるか…クオレ、占ってくれない?」
「そう言われましても…知識も何も無いんですが」
「大丈夫、手取り足取り教えるから」
そのまま逃げることさえ出来ないまま、僕は深い沼へと引きずり込まれる。
まあでも、自分の知らない見識を得られるのはいい機会だ。想像よりもずっと奥が深い神秘に魅力を感じる人が絶えないのも、わかる気がした。
「今日は来てくれてありがとう。戦場で組んだチームメイトから、とても興味深い星の元に生まれた技師が居るって聞いて、楽しみにしていたのよ」
と、言うことらしい。どうやら此度の新たなレジェンドは、神秘的な信仰を嗜む者のようだ。
僕自身は占いや
「…僕は自分がそんなに特異な存在だとは思ってませんけども」
オビさんがそうだと言われるのはわかる。彼にとっては不本意ではあれど、母星の大事件と時を同じくして生まれた身では無理もない。
だが、僕にはそんな特別なことは今はもうない。確かに昔は機械が話をすると思っていた、否、確かに彼らの声が聞こえていた時期こそあったが、その特技だか異能だかも、既に失って久しいものだ。
というかそもそも、僕に向けて興味深い星という表現をすること自体が違和感でしかない。そういうのはレジェンドの皆が持つもので、末端技師の僕が与えられるものじゃないだろう。
「そうかしら。少なくとも、多くのレジェンドが貴方のことを評価している…それが技師としての実力によるものだけだと、本当に言い切れる?」
僕の全てを見透かすような瞳が、暗がりに浮かび上がる。息を呑むような魅力に気圧されそうになりつつ、僕はそれでも彼女の言葉を肯定出来なかった。
「それ以外にもあるからだと、カタリストさん…貴方はそう思っているのですか?」
「質問に質問で返すのはズルいわよ。ま、私も意地悪な言い方をしたからおあいこだけど。でも今のでわかったでしょう、普通に話していても面白い反応が見られる。それだけで充分、貴方が魅力的な人である証拠よ」
少し不貞腐れた後にそう笑んでみせて、僕の手を握るカタリスト氏。僅かに抱いた違和感に戸惑っていると、彼女は小さく溜息を零して。
「あら、気付いた? 少し触っただけでわかるなんて、もしかして貴方も…」
「…」
ああ、そういうことか。彼女の反応から察すると共に、僕は言葉を失う。彼女は、生まれた時からずっと"彼女"だったわけではないようだ。
いつ頃かは定かではないが、かつて"彼"だった過去を断ち切って今に至るということらしい。
そのことで仲間意識を持たれてしまうのは些か心苦しいものがある。僕は一人称こそ"僕"ではあるが、性を違えて生まれてきたと思ったことは一度もないのだ。
「いえ、僕は…残念ながら違います。ただの…虚勢みたいなものです。すみません」
ゆっくりと口を開く。汗が滲むのは、蝋燭の熱が篭もるせいだろうか。
けれど僕が"僕"である理由なんて、きっと彼女が抱いてきた苦しみに比べればほんの些細なもの。
確かに、多少は打算もある。女だと思われた瞬間、僕の技師としての評価が正当なものでなくなるというのは、恐怖や不安ではなく事実として過去にあったことだ。
たかが一人称ひとつでその不快な印象と固定観念が曲げられるのなら、安いものだ。逆に言ってしまえば、そんな程度のものでしかない。
いや、"なかった"という方が正しいか。今となってはあまりに自分のことを"僕"と言い続けた時間が長すぎて、今更変えようがないのも身に染みて感じている。
「…いいのよ。謝らないで」
触れていた掌を強く握り締め、カタリスト氏は大きく首を振る。恐らくは勝手に解釈して僕に不快な想いをさせたことを悔いているのだと思うが、もしそれが本当だとしたら根本から間違いだ。
悪いのは曖昧な僕で、カタリスト氏ではない。寧ろ、同志だと期待させるだけさせて落胆させてしまったことの方が申し訳ない。
「私とは異なる形で、貴方も多くの苦悩に苛まれてきたのね」
「…貴方にとってはなんてことのない、ちっぽけなことですよ」
「クオレ、そうやって自分を卑下する必要はないわ。感じ方は人それぞれだもの、貴方が過去に受けた苦しみは否定しなくていいのよ」
握った手を使い、僕の頭を引き寄せる。そして割れ物に触れるようにそっと撫でて、ゆっくりとその身を近付ける。
「そう…ですね。ありがとうございます」
少しだけ晴れぬ気持ちを抱えつつ、緩やかに瞳を閉じて感謝の意を伝える。カタリスト氏の無償の優しさが、今だけはどうにも痛いと、そう感じてしまう。
僕とそんなに歳が離れていない筈なのに、彼女がこんなにも達観しているのは、やはりそれだけ多くの苦難を乗り越えて来たからではないのかとは思わずにはいられなかった。
「お礼なんていいのよ、私は貴方のことをもっと知りたいの。ゲームのアシスタントとしてではない、ありのままのクオレ・マキネッタという人物を」
そう告げると彼女は徐に暗闇の中へと身を潜めて、何やら荷物をゴソゴソと漁り始める。
どんな代物が出てくるのか不安半分期待半分で待ち構えていると、準備が整ったらしく手に持ったものを明かりの元に照らす。
見せられたのは、束ねられたカード。トランプか何かだろうか、小洒落た模様が目に入った。それを慣れた手付きで混ぜて、僕の眼前に差し出してきた。
「私がやったのと同じように混ぜてみて」
「わ、わかりました」
渡されたカードの束を両手で受け取り、カタリスト氏の手捌きを思い返しながら無作為に混ぜていく。
だが当然ながら彼女のように洗練された混ぜ方が出来るはずもなく、向きも疎らにごちゃ混ぜになってしまった。
判別出来る範囲で上下を整えようとしたところを、そっと制止されそのまま持って行かれる。どうやら意識して直そうとしてはいけないらしい。
「タロット占いは向きも大事な要素なの。どちらが上か考えて作為的に変えようとしてはダメ」
ああ、なるほど。手頃なカードの束という点だけでトランプかと思い込んでいたが、似て非なるものだったということか。
「深呼吸して、何も意識しない状態で一枚選んで」
「これにします」
「ありがとう。じゃあ、視るわね」
選んだ一枚をめくった途端、カタリスト氏は驚嘆した様子で口許を抑える。動揺を隠しきれないその様からするに、あまり良くない引きだったのかと不安が過ぎる。
だが、どうもその逆らしい。動揺に見えたそれはやがて興奮に変わり、上擦った声で彼女は僕が引いたカードの意味を語ってくれた。
「
突拍子もないというか、あまりにも壮大な語り口で俄には信じられずにいると、それを察知した彼女が苦笑を零す。
「嘘みたい、って思ってる顔でしょそれ。でも言霊って本当にあるのよ、だから信じてくれると嬉しいわ」
「ど…努力します」
カタリスト氏の笑みが、無言の圧力にしか感じられない。だが僕自身、技術面以外に対する評価が低いことは常日頃色んな仲間から指摘されているのはその通りなので、ここは頷くしか出来なかった。
けれど、僕が人ではない何に認められていると言うのだろう。彼女もブラハさんのように、信じる神を胸に抱く人なのか?
そういえばブラハさんは確かにカタリスト氏と話が合いそうだとふと思う。自らの性について思い悩む身として、腹を割って話したことがあるかもしれない。
「努力、ね…」
意味深に反芻して、それきり押し黙る。今の彼女は、オビさんによって努力を台無しにされてしまったも同然、あまりに迂闊な発言だったと後悔する。
「すみません」
「うん? どうして貴方が謝るの?」
「…僕のせいで気分を害してしまったと思って」
「大丈夫よ、考えていたのはクレオのことじゃないわ」
頭を垂れつつ抱いた後悔の念をを伝えると、カタリスト氏は慌てた様子で両手を振る。
杞憂だからと笑ってこそくれたが、その笑みには覇気がなかった。どちらかと言うと、僕が下手に変なことを言ったせいで意識してしまった可能性が高いような気さえする。
「クオレ」
唐突に名を呼ばれ、思わず背筋が伸びる。カタリスト氏も真剣な眼差しでこちらを見つめて、僕もよく知るあのマークが刻印されたカードを掲げた。
「貴方が今居る地位は、努力によって勝ち取ったもの? それとも運命に身を委ねた結果?」
「どちらの要素もあります。ゲームに関わるようになったのは偶然とは言え、身につけた技術は紛れもなく僕自身の努力の結果だと信じています」
深い闇の中に居るせいか、少し寒気を感じつつそう答える。彼女がどういう経緯でゲームへの参戦資格を得たか定かでない以上、迂闊に僕とブリスクおじさんとの関係性を暴露するのは控えておいた。
しかしこれで彼女が納得する答えになっているかは些か不安があるが、神妙な面持ちから察するにどうやら受け入れ難いものではなかったようだ。
「…それを聞いて安心したわ。なら私も…欲しいものは自分の手できちんと勝ち取らないとね」
欲しいもの、というのはボレアスの未来か。あるいは砕けた月クレオだけを指しているのかもしれないが、それは今の会話だけでは判断しようがなかった。
「僕からは月並みなことしか言えませんが…頑張ってください」
「ええ、ありがとう。折角だから、私が願いを叶えられるか…クオレ、占ってくれない?」
「そう言われましても…知識も何も無いんですが」
「大丈夫、手取り足取り教えるから」
そのまま逃げることさえ出来ないまま、僕は深い沼へと引きずり込まれる。
まあでも、自分の知らない見識を得られるのはいい機会だ。想像よりもずっと奥が深い神秘に魅力を感じる人が絶えないのも、わかる気がした。
25/28ページ