えぺ
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「は…?」
新しいシーズンを迎えるにあたっての武器に関する調整内容が記された企画書が転送されてきた。それを見て、僕は気を失いそうな気分に陥る。
武器間のアモタイプ変更。僕にとってはかなり嫌いな仕事に分類されるものが、二種。
それもひとつは技術者としての視点から見るとかなり面倒で大掛かりな変更で、作業量を考えるともう既に頭が痛い。
「どうした。新シーズンの情報か」
「はい…でもこれ、レジェンドの皆さんにはあまり言いたくない…というか言ってはいけない話ではあるんですが」
「前も愚痴ってたじゃねぇか。言って楽になって良いんだぜ」
僕の表情を見て心情を察したブラハさんが、案じるように声をかけてくる。それに追従して、ヒューズ氏も情報を引き出したいらしく僕を嗾ける。
一応は機密にあたる情報ではあるのだが、口の軽い者が密かに広めてしまい正式に発表される前に参加者に知られていることが殆どだ。
かく言う僕も、この件に関しては今回も含め愚痴を吐きたい気分になることの方が多く、結果として一部のレジェンドに漏らしている場合が多いので誰を咎めることも出来ないが。
「…わかりました、ありがとうございます。一応他言無用とは言っておきますが、まあお二人なら大丈夫でしょう」
「おう。んで、今回は何がどう変わるってんだ?」
期待半分、不安半分の眼差しで尋ねるヒューズ氏。軍需品を多量に必要とする彼にとっては悲報となる可能性の高い話題があるのが胃が重い。
「いくつかの通常武器において、対応するアモの変更が入ります」
「ふむ…確かにマキナ、貴方が苦悩するのも無理はない話だ、前にも嘆いていたのをよく覚えている。またトリプルテイクか?」
「いえ、今回は違います。スピットファイアと…あと一本が今回最大の問題児なんですよ」
武器種ごとにアモがそれぞれ異なる理由は至極明快で、そもそもアモごとに仕様が根本から違っているのだ。
拡散するショットガンや、鉛ではない特殊な電磁波や量子を集束させて射撃するエネルギー系武器が特にわかりやすいだろう。
そのように、一度規格を定めた武器を別の種類へと変更させるというのは、相応に手間のかかる調整が必要なものとなる。
そして、これでも相当の年月をかけてアモタイプの統一が成功した方で、昔は別の武器に弾を流用することさえ出来なかった。だから簡単に変えろなどと言われてもこちらも困るという話で。
「よぉマキナ、勿体ぶらずにそのもう一本をさっさと教えてくれ」
若干苛立ちの混じった口調で、ヒューズ氏が煽ってくる。彼のような30-30リピーターを愛用している者にとってはある意味吉報とも言えるその報せを、僕は一呼吸置いて二人へと伝える。
「ウィングマンがスナイパーアモ武器になります」
「おいおい、エイプリルフールはまだまだ先だぜ。あのちっこいピストルにスナイパーアモを入れるなんてどんな冗談だ?」
「ええ、本当に。だからアモ変更の仕事は嫌いなんですよ…」
概ね予想通りの反応を返すヒューズ氏。僕も彼のように悪い冗談か夢だと一蹴したかった。
だが、それが仕事なのだ。諦めて対応するしかない。ブラハさんが慰めてくれるのだけが唯一の救いだ。
「マキナの苦悩、察するに余りある。だが、スナイパーアモへの変更により、ウィングマンを使う際はそれだけ軍需品や回復を持てる数が減るということに繋がる」
「どういうことだ?」
ブラハさんが説明してくれたが、ヒューズ氏はいまいち理解していないらしい。補足をつけると、ようやく把握したらしく表情が明るくなった。
「今よりも弾持ちが悪くなる以上、バックパックの中身を弾薬に多く割かないといけなくなりますからね」
「…なるほどな。確かに一理ある。ってことはつまりあれか、これで30-30が劣化ウィングマンだと煽られることもなくなるってか! そいつは良い知らせだ!」
僕がリピーター使いにとって吉報と称した点はそこだ。ウィングマンとリピーターの大きな利点のひとつに、弾薬一枠における総ダメージ量の高さがある。
本来ならば競合することがない筈のピストルとマークスマンが比較対象になる理由の一番はそこにあると言えるだろう。
スナイパーアモになることで、その前提が大きく変わってくる。ヘビーアモは一枠が60発だが、スナイパーアモは来期から28発。
これまでの24発から多少増やされるとはいえ、単純に半分以下にまで下がるのだ。この差は大きいだろう。
「リピーター自体も、かなりの大幅強化が入りますよ。デュアルシェルの機能を内蔵するのと、スカルピアサーアタッチメントに対応するようになります」
「スカルピアサーが? ほぉ、そいつは確かに強ぇな」
代わりにシャッターキャップが消失してしまい、近距離戦闘には使えそうもなくなることは黙っておく。
そしてスカルピアサーの話題を出したことで、ブラハさんの方が今度は暗い面持ちで嘆息する。
「…あのアタッチメントが戻ってくるのか。それは…私にとっては聞きたくなかった報せだ」
嘆くブラハさん。頭に値する面積が大きい分、狙われた際の危険が増すスカルピアサーは苦手なのだろう。
「ホップアップはローテーションするものだろ、仕方ねぇさ。試合の時はなるべく良いヘルメットを譲ってやるから頑張れよ」
「ウォルター…ありがとう、助かる。ならば私は貴方の為に出来るだけ高ランクのバックパックを探そう」
互いに助け合う約束をして結束を強める二人に、微笑ましい気持ちになる。
限られた物資を取り合うのがバトルロワイヤルではあるが、仲間内では譲り合うのも大切なことだ。
「いいですね。次からはレベル4のバックパックならシールドバッテリーが一枠に三本入りますし、ヒューズ氏は今まで以上に軍需品を大量に持てるのでは?」
それを伝えると、ヒューズ氏はあまりの嬉しさにかブラハさんの背中を叩き始めた。
痛そうな音が響くが、ブラハさんは意に介さない様子で淡々と彼に同意するのみだった。
「なんだって! 30-30の強化と言い、俺にとって最高のシーズンじゃねえか! 楽しみだなぁ、なあブラハ!?」
「…そうだな」
仮面に隠されて窺い知れない瞳は、少し憂いを帯びているようにも見えた。ブラハさんにとって、新たなシーズンが辛いものにならないことを願うばかりだ。
新しいシーズンを迎えるにあたっての武器に関する調整内容が記された企画書が転送されてきた。それを見て、僕は気を失いそうな気分に陥る。
武器間のアモタイプ変更。僕にとってはかなり嫌いな仕事に分類されるものが、二種。
それもひとつは技術者としての視点から見るとかなり面倒で大掛かりな変更で、作業量を考えるともう既に頭が痛い。
「どうした。新シーズンの情報か」
「はい…でもこれ、レジェンドの皆さんにはあまり言いたくない…というか言ってはいけない話ではあるんですが」
「前も愚痴ってたじゃねぇか。言って楽になって良いんだぜ」
僕の表情を見て心情を察したブラハさんが、案じるように声をかけてくる。それに追従して、ヒューズ氏も情報を引き出したいらしく僕を嗾ける。
一応は機密にあたる情報ではあるのだが、口の軽い者が密かに広めてしまい正式に発表される前に参加者に知られていることが殆どだ。
かく言う僕も、この件に関しては今回も含め愚痴を吐きたい気分になることの方が多く、結果として一部のレジェンドに漏らしている場合が多いので誰を咎めることも出来ないが。
「…わかりました、ありがとうございます。一応他言無用とは言っておきますが、まあお二人なら大丈夫でしょう」
「おう。んで、今回は何がどう変わるってんだ?」
期待半分、不安半分の眼差しで尋ねるヒューズ氏。軍需品を多量に必要とする彼にとっては悲報となる可能性の高い話題があるのが胃が重い。
「いくつかの通常武器において、対応するアモの変更が入ります」
「ふむ…確かにマキナ、貴方が苦悩するのも無理はない話だ、前にも嘆いていたのをよく覚えている。またトリプルテイクか?」
「いえ、今回は違います。スピットファイアと…あと一本が今回最大の問題児なんですよ」
武器種ごとにアモがそれぞれ異なる理由は至極明快で、そもそもアモごとに仕様が根本から違っているのだ。
拡散するショットガンや、鉛ではない特殊な電磁波や量子を集束させて射撃するエネルギー系武器が特にわかりやすいだろう。
そのように、一度規格を定めた武器を別の種類へと変更させるというのは、相応に手間のかかる調整が必要なものとなる。
そして、これでも相当の年月をかけてアモタイプの統一が成功した方で、昔は別の武器に弾を流用することさえ出来なかった。だから簡単に変えろなどと言われてもこちらも困るという話で。
「よぉマキナ、勿体ぶらずにそのもう一本をさっさと教えてくれ」
若干苛立ちの混じった口調で、ヒューズ氏が煽ってくる。彼のような30-30リピーターを愛用している者にとってはある意味吉報とも言えるその報せを、僕は一呼吸置いて二人へと伝える。
「ウィングマンがスナイパーアモ武器になります」
「おいおい、エイプリルフールはまだまだ先だぜ。あのちっこいピストルにスナイパーアモを入れるなんてどんな冗談だ?」
「ええ、本当に。だからアモ変更の仕事は嫌いなんですよ…」
概ね予想通りの反応を返すヒューズ氏。僕も彼のように悪い冗談か夢だと一蹴したかった。
だが、それが仕事なのだ。諦めて対応するしかない。ブラハさんが慰めてくれるのだけが唯一の救いだ。
「マキナの苦悩、察するに余りある。だが、スナイパーアモへの変更により、ウィングマンを使う際はそれだけ軍需品や回復を持てる数が減るということに繋がる」
「どういうことだ?」
ブラハさんが説明してくれたが、ヒューズ氏はいまいち理解していないらしい。補足をつけると、ようやく把握したらしく表情が明るくなった。
「今よりも弾持ちが悪くなる以上、バックパックの中身を弾薬に多く割かないといけなくなりますからね」
「…なるほどな。確かに一理ある。ってことはつまりあれか、これで30-30が劣化ウィングマンだと煽られることもなくなるってか! そいつは良い知らせだ!」
僕がリピーター使いにとって吉報と称した点はそこだ。ウィングマンとリピーターの大きな利点のひとつに、弾薬一枠における総ダメージ量の高さがある。
本来ならば競合することがない筈のピストルとマークスマンが比較対象になる理由の一番はそこにあると言えるだろう。
スナイパーアモになることで、その前提が大きく変わってくる。ヘビーアモは一枠が60発だが、スナイパーアモは来期から28発。
これまでの24発から多少増やされるとはいえ、単純に半分以下にまで下がるのだ。この差は大きいだろう。
「リピーター自体も、かなりの大幅強化が入りますよ。デュアルシェルの機能を内蔵するのと、スカルピアサーアタッチメントに対応するようになります」
「スカルピアサーが? ほぉ、そいつは確かに強ぇな」
代わりにシャッターキャップが消失してしまい、近距離戦闘には使えそうもなくなることは黙っておく。
そしてスカルピアサーの話題を出したことで、ブラハさんの方が今度は暗い面持ちで嘆息する。
「…あのアタッチメントが戻ってくるのか。それは…私にとっては聞きたくなかった報せだ」
嘆くブラハさん。頭に値する面積が大きい分、狙われた際の危険が増すスカルピアサーは苦手なのだろう。
「ホップアップはローテーションするものだろ、仕方ねぇさ。試合の時はなるべく良いヘルメットを譲ってやるから頑張れよ」
「ウォルター…ありがとう、助かる。ならば私は貴方の為に出来るだけ高ランクのバックパックを探そう」
互いに助け合う約束をして結束を強める二人に、微笑ましい気持ちになる。
限られた物資を取り合うのがバトルロワイヤルではあるが、仲間内では譲り合うのも大切なことだ。
「いいですね。次からはレベル4のバックパックならシールドバッテリーが一枠に三本入りますし、ヒューズ氏は今まで以上に軍需品を大量に持てるのでは?」
それを伝えると、ヒューズ氏はあまりの嬉しさにかブラハさんの背中を叩き始めた。
痛そうな音が響くが、ブラハさんは意に介さない様子で淡々と彼に同意するのみだった。
「なんだって! 30-30の強化と言い、俺にとって最高のシーズンじゃねえか! 楽しみだなぁ、なあブラハ!?」
「…そうだな」
仮面に隠されて窺い知れない瞳は、少し憂いを帯びているようにも見えた。ブラハさんにとって、新たなシーズンが辛いものにならないことを願うばかりだ。
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