ぎんたま
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…で近藤さん、流星群とやらはまだ見れないんですかィ」
「もうそろそろのはずなんだけどなぁ」
「じゃ、流れ始めたら起こしてくだせェ」
望遠鏡を覗き込んで答えるは、真選組局長の近藤勲。隣で寝ぼけ眼を擦る部下こと沖田総悟は、口元を隠すことなく大きな欠伸をした後、額に持ち上げていたアイマスクを下ろす。
「まぁそう冷たいこと言わないで総悟くん、待ってるのも楽しみのひとつだよ」
あからさまに退屈そうな総悟を宥めアイマスクを無理矢理ずり上げるのは、勲と同じく流星群を心待ちにする娘こと新見祈莉。
彼女自身は真選組の隊員でこそないものの、彼らとは故郷の武州で暮らす頃からの旧知の仲であり、今夜も勲に誘われ流星群を見るべく彼らの元へやって来ていた。
「つっても祈莉、今日のは近藤さんのしょーもねェ思いつきだろ? 本当に流れてくんのか信じられんぞ」
「今日は違いますぅー朝の占いで今夜は流星群だって言ってましたァー」
総悟程ではないものの手持ち無沙汰の状態で苛立ちを隠しきれない様子の青年、もとい真選組副長の土方十四郎がぶっきらぼうに吐き捨てる。
しかしすぐさま勲は十四郎の言葉を否定し、それが根拠のある情報だと提示するのだった。
「占い…あぁ、確かに今朝のテレビで言ってやしたね、おうし座の貴方は今夜マヨネーズに溺れて死ぬでしょうってな風に」
「…マジか」
「待って土方さんなんでちょっと嬉しそうなの、そしてなんで流星群全く関係ない話になってるの」
総悟が勲に同意したように見せかけ十四郎を脅かす。しかしマヨネーズという単語のせいでどこか浮ついた様子を見せ始める十四郎に祈莉が冷静に突っ込む。
そうした他愛もない話をしながら、四人は星が疎らに煌めく空を見上げる。流星こそ見えないが、都会でもまだ綺麗と評することの出来る星空は見られるのだとそれぞれが感心していた。
「武州で見てた星空に比べちゃ地味だが、江戸の星空も場所さえ選べば充分綺麗なもんだな」
覗き込んでいた望遠鏡から顔を上げ、勲が笑う。建造物の建ち並ぶ中心地では星も輝きを失ってしまうが、今日来ているこの場所は、天体観測をするには申し分ない好立地だった。
「ですね。お兄も来れれば良かったのになぁ」
勲の感慨深い呟きに、今はこの場に来ることの出来ない兄を想う祈莉が嘆きつつ彼の言に同意する。
その言葉を聞いた十四郎が、彼女の兄であり同胞の新見一識に対して思うことを伝えるべく吐露する。
「そういや一識は今日から夜勤だったな。アイツはどっかのドSバカと違ってクソ真面目すぎる、有休すらちっとも消化しやがらねェ。祈莉、アイツが帰ったら"たまにゃ休め"って言っといてくれ」
「祈莉ネェさん、俺からも伝言頼んます。"余ってるんなら俺にその有休くだせェ"って痛ッ」
総悟のジョークに間髪入れずに拳骨を落としながら、十四郎はとうとう耐えかねてタバコに火をつける。
それがストレスの軽減のためと知る総悟と勲は何も言わずに許容するが、ただ一人彼女だけはどうしても快く思うことが出来なかった。
いつから彼が喫煙するようになったか祈莉には覚えがなかったが、燻らす煙は何度見ても慣れることは困難で。
「…土方さんのそれも、中々辞められなさそうですね」
「あぁ…悪ィ、癖で出しちまった」
「吸うこと自体は私がとやかく言うことじゃないですけど…身体には気をつけてくださいね」
哀しげに笑ってみせる祈莉から目を逸らして、十四郎は空を仰ぐ。ゆっくりと流れる風が煙を導いて、星空の彼方へ揺らいで行く。
その刹那、一筋の光が空を駆け抜けていくのが見える。しかしタバコを吸うことに気を取られ空をぼんやりとしか眺めていなかったせいで、十四郎はそれが流星であると認識出来ていなかった。
「おっ、おい! お前ら今の見えたか!?」
重苦しい空気を振り払うように、勲が突如騒ぎ始める。どうやら今夜の本来の目的であった流星を彼も見たようで、彼は年甲斐もなく興奮し前のめりになっていた。
その言葉に慌てて二人は目を凝らして星空を見上げる。祈莉に至っては望遠鏡に飛びついて、次の流星群が流れてくるのを今か今かと待つ始末だった。
「あ…!」
「…こりゃ壮観だな」
星降る空は瞬く間に輝きを増し、まるで滝のように次々と流れていく。四人は流星のお約束である願い事を叫ぶことも忘れ、その光景に釘付けになっていた。
「そういや近藤さん、願い事するために流星群を見に来たんでしょ」
「あぁそうだったそうだった、よし…」
いち早く我に返り流星群のお約束を思い出した総悟が、徐に勲の方へ向いてそれを指摘する。
その指摘を受けて、彼は姿勢を伸ばし両肘を直角に上げ両手を合わせ、念仏のように願いを唱える。
「お妙さんと結婚出来ますようにお妙さんと結婚出来ますように」
念仏とも、あるいは呪詛ともつかぬその願いは、今はまだ到底叶いそうにない絵空事だった。
祈莉は初めて見る彼の知られざる一面を前に、軽蔑を僅かに隠しきれない眼差しで総悟へと問う。
「…総悟くん、近藤さんってこんな人だったっけ」
「あぁ…ネェさんの知らない間にすっかり変わっちまいやした。どうもキャバクラで運命のゴリラと出会っちまったらしくてね」
「え、ゴリ…なんて?」
一度耳にしただけでは脳が理解を拒絶する単語を告げられ、彼女は思わず流星すら忘れ首を傾げる。
だがその単語を刷り込みするかのごとく十四郎が祈莉の肩をそっと叩き、彼女へと念を押す。
「安心しろ祈莉。近藤さんは最初っからゴリラだったぞ」
「あ、あれ…? そうだったんだ…?」
困惑しつつも納得してしまいそうになる祈莉。欲望に正直な類人猿こと近藤勲は、彼女の誤解を訂正することなく願い事に夢中になっていた。
「お妙さーーーん!! 結婚してくれェェーーッ!!」
「もうそろそろのはずなんだけどなぁ」
「じゃ、流れ始めたら起こしてくだせェ」
望遠鏡を覗き込んで答えるは、真選組局長の近藤勲。隣で寝ぼけ眼を擦る部下こと沖田総悟は、口元を隠すことなく大きな欠伸をした後、額に持ち上げていたアイマスクを下ろす。
「まぁそう冷たいこと言わないで総悟くん、待ってるのも楽しみのひとつだよ」
あからさまに退屈そうな総悟を宥めアイマスクを無理矢理ずり上げるのは、勲と同じく流星群を心待ちにする娘こと新見祈莉。
彼女自身は真選組の隊員でこそないものの、彼らとは故郷の武州で暮らす頃からの旧知の仲であり、今夜も勲に誘われ流星群を見るべく彼らの元へやって来ていた。
「つっても祈莉、今日のは近藤さんのしょーもねェ思いつきだろ? 本当に流れてくんのか信じられんぞ」
「今日は違いますぅー朝の占いで今夜は流星群だって言ってましたァー」
総悟程ではないものの手持ち無沙汰の状態で苛立ちを隠しきれない様子の青年、もとい真選組副長の土方十四郎がぶっきらぼうに吐き捨てる。
しかしすぐさま勲は十四郎の言葉を否定し、それが根拠のある情報だと提示するのだった。
「占い…あぁ、確かに今朝のテレビで言ってやしたね、おうし座の貴方は今夜マヨネーズに溺れて死ぬでしょうってな風に」
「…マジか」
「待って土方さんなんでちょっと嬉しそうなの、そしてなんで流星群全く関係ない話になってるの」
総悟が勲に同意したように見せかけ十四郎を脅かす。しかしマヨネーズという単語のせいでどこか浮ついた様子を見せ始める十四郎に祈莉が冷静に突っ込む。
そうした他愛もない話をしながら、四人は星が疎らに煌めく空を見上げる。流星こそ見えないが、都会でもまだ綺麗と評することの出来る星空は見られるのだとそれぞれが感心していた。
「武州で見てた星空に比べちゃ地味だが、江戸の星空も場所さえ選べば充分綺麗なもんだな」
覗き込んでいた望遠鏡から顔を上げ、勲が笑う。建造物の建ち並ぶ中心地では星も輝きを失ってしまうが、今日来ているこの場所は、天体観測をするには申し分ない好立地だった。
「ですね。お兄も来れれば良かったのになぁ」
勲の感慨深い呟きに、今はこの場に来ることの出来ない兄を想う祈莉が嘆きつつ彼の言に同意する。
その言葉を聞いた十四郎が、彼女の兄であり同胞の新見一識に対して思うことを伝えるべく吐露する。
「そういや一識は今日から夜勤だったな。アイツはどっかのドSバカと違ってクソ真面目すぎる、有休すらちっとも消化しやがらねェ。祈莉、アイツが帰ったら"たまにゃ休め"って言っといてくれ」
「祈莉ネェさん、俺からも伝言頼んます。"余ってるんなら俺にその有休くだせェ"って痛ッ」
総悟のジョークに間髪入れずに拳骨を落としながら、十四郎はとうとう耐えかねてタバコに火をつける。
それがストレスの軽減のためと知る総悟と勲は何も言わずに許容するが、ただ一人彼女だけはどうしても快く思うことが出来なかった。
いつから彼が喫煙するようになったか祈莉には覚えがなかったが、燻らす煙は何度見ても慣れることは困難で。
「…土方さんのそれも、中々辞められなさそうですね」
「あぁ…悪ィ、癖で出しちまった」
「吸うこと自体は私がとやかく言うことじゃないですけど…身体には気をつけてくださいね」
哀しげに笑ってみせる祈莉から目を逸らして、十四郎は空を仰ぐ。ゆっくりと流れる風が煙を導いて、星空の彼方へ揺らいで行く。
その刹那、一筋の光が空を駆け抜けていくのが見える。しかしタバコを吸うことに気を取られ空をぼんやりとしか眺めていなかったせいで、十四郎はそれが流星であると認識出来ていなかった。
「おっ、おい! お前ら今の見えたか!?」
重苦しい空気を振り払うように、勲が突如騒ぎ始める。どうやら今夜の本来の目的であった流星を彼も見たようで、彼は年甲斐もなく興奮し前のめりになっていた。
その言葉に慌てて二人は目を凝らして星空を見上げる。祈莉に至っては望遠鏡に飛びついて、次の流星群が流れてくるのを今か今かと待つ始末だった。
「あ…!」
「…こりゃ壮観だな」
星降る空は瞬く間に輝きを増し、まるで滝のように次々と流れていく。四人は流星のお約束である願い事を叫ぶことも忘れ、その光景に釘付けになっていた。
「そういや近藤さん、願い事するために流星群を見に来たんでしょ」
「あぁそうだったそうだった、よし…」
いち早く我に返り流星群のお約束を思い出した総悟が、徐に勲の方へ向いてそれを指摘する。
その指摘を受けて、彼は姿勢を伸ばし両肘を直角に上げ両手を合わせ、念仏のように願いを唱える。
「お妙さんと結婚出来ますようにお妙さんと結婚出来ますように」
念仏とも、あるいは呪詛ともつかぬその願いは、今はまだ到底叶いそうにない絵空事だった。
祈莉は初めて見る彼の知られざる一面を前に、軽蔑を僅かに隠しきれない眼差しで総悟へと問う。
「…総悟くん、近藤さんってこんな人だったっけ」
「あぁ…ネェさんの知らない間にすっかり変わっちまいやした。どうもキャバクラで運命のゴリラと出会っちまったらしくてね」
「え、ゴリ…なんて?」
一度耳にしただけでは脳が理解を拒絶する単語を告げられ、彼女は思わず流星すら忘れ首を傾げる。
だがその単語を刷り込みするかのごとく十四郎が祈莉の肩をそっと叩き、彼女へと念を押す。
「安心しろ祈莉。近藤さんは最初っからゴリラだったぞ」
「あ、あれ…? そうだったんだ…?」
困惑しつつも納得してしまいそうになる祈莉。欲望に正直な類人猿こと近藤勲は、彼女の誤解を訂正することなく願い事に夢中になっていた。
「お妙さーーーん!! 結婚してくれェェーーッ!!」
13/36ページ