羽休めは君の隣で
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異様な感覚だった。上下に揺れているのはこの部屋か、いや違う、私の胴体だ。胸元から喉元にまで引かれた細い線が、強く張ったり緩んだり…そんな感覚がする。
サイドテーブルの上に立つスタンドライトが点いている。ということは、未だ真夜中なのだろう。いつもの自分なら枕元に横たわる携帯を起こして時間帯を確認するだろうが、今はそんな余裕なんてなかった。
激しい息苦しさで目が覚めた私は、思わず体を起こし、平生の安定した呼吸を取り戻すのに必死だった。浅い呼吸をする度に、喉元からヒューヒューという喘鳴が聞こえる。
遺伝から生まれつき喘息を持っているが、最近発作が起きる頻度が増えていた。原因は気圧か、ストレスか…大して心当たりがないのが厄介だった。
しかし突如襲ってきたこの発作は、いつもとは比べ物にならないくらい悍ましかった。とにかく息が苦しくて堪らない。視界がぼやぼやと狭まり、目尻には涙が浮かぶ。
少しでも足を踏み外せば意識を持っていかれそうな感覚、これぞ生と死の境目に立たされているような気分だ。早く薬を飲まないといけないが、絶え絶えになった気息が邪魔して立ち上がることすら困難だった。
私はこのまま死ぬのか?
否、いっそのこと意識を飛ばした方がマシかもしれない
これ以上、苦しい思いは懲り懲りだ。
誰か、私を殺してくれ
簓___
「おっ、まだ起きとったんか。今帰ったで」
寝室の扉が開いたと思うと、廊下の電気が差し込むとともに恋人が顔を覗かせた。
「簓……」
助けを求めるように彼の名前を呼び、手を伸ばす。明らかに私の様子がおかしいため、簓はすぐに目付きを変えてベットに駆け寄った。
「どないした、苦しいんか」
力無く頷くと、簓は寝室を飛び出て、リビングに常備してある吸入機を持って来た。私はそれを受け取って蓋を開け、吸入口から薬を吸い込んだ。
その間も簓が背中を摩ってくれていたのもあり、乱れていた呼吸が少しずつ安定してきた。
「ありがと…助かった」
未だ喉から溢れ出るヒュウヒュウという音は止まないが、私は救世主の方を向いて笑いかけた。
すると彼の腕が伸びたと思うと、強く抱き締められた。いつもより緊迫感漂うその素振りに、一瞬驚きながらも、すぐにふっと頬を緩ませて彼の背中に腕を回して抱き締め返した。
「…ごめん、心配かけたね」
真横にある彼の頭が、ふるふると横に振られた。身体はそう表しながらも、彼はきっと言葉には到底出来ない大きな大きな不安に駆られていたのだろう。
「ありがとう」
私は簓の柔らかくふんわりした髪に触れ、そっと触れるだけの口付けを落とした。
サイドテーブルの上に立つスタンドライトが点いている。ということは、未だ真夜中なのだろう。いつもの自分なら枕元に横たわる携帯を起こして時間帯を確認するだろうが、今はそんな余裕なんてなかった。
激しい息苦しさで目が覚めた私は、思わず体を起こし、平生の安定した呼吸を取り戻すのに必死だった。浅い呼吸をする度に、喉元からヒューヒューという喘鳴が聞こえる。
遺伝から生まれつき喘息を持っているが、最近発作が起きる頻度が増えていた。原因は気圧か、ストレスか…大して心当たりがないのが厄介だった。
しかし突如襲ってきたこの発作は、いつもとは比べ物にならないくらい悍ましかった。とにかく息が苦しくて堪らない。視界がぼやぼやと狭まり、目尻には涙が浮かぶ。
少しでも足を踏み外せば意識を持っていかれそうな感覚、これぞ生と死の境目に立たされているような気分だ。早く薬を飲まないといけないが、絶え絶えになった気息が邪魔して立ち上がることすら困難だった。
私はこのまま死ぬのか?
否、いっそのこと意識を飛ばした方がマシかもしれない
これ以上、苦しい思いは懲り懲りだ。
誰か、私を殺してくれ
簓___
「おっ、まだ起きとったんか。今帰ったで」
寝室の扉が開いたと思うと、廊下の電気が差し込むとともに恋人が顔を覗かせた。
「簓……」
助けを求めるように彼の名前を呼び、手を伸ばす。明らかに私の様子がおかしいため、簓はすぐに目付きを変えてベットに駆け寄った。
「どないした、苦しいんか」
力無く頷くと、簓は寝室を飛び出て、リビングに常備してある吸入機を持って来た。私はそれを受け取って蓋を開け、吸入口から薬を吸い込んだ。
その間も簓が背中を摩ってくれていたのもあり、乱れていた呼吸が少しずつ安定してきた。
「ありがと…助かった」
未だ喉から溢れ出るヒュウヒュウという音は止まないが、私は救世主の方を向いて笑いかけた。
すると彼の腕が伸びたと思うと、強く抱き締められた。いつもより緊迫感漂うその素振りに、一瞬驚きながらも、すぐにふっと頬を緩ませて彼の背中に腕を回して抱き締め返した。
「…ごめん、心配かけたね」
真横にある彼の頭が、ふるふると横に振られた。身体はそう表しながらも、彼はきっと言葉には到底出来ない大きな大きな不安に駆られていたのだろう。
「ありがとう」
私は簓の柔らかくふんわりした髪に触れ、そっと触れるだけの口付けを落とした。
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