夜はだいぶ寒くなってきた時期だった。
おばあちゃんがお風呂場で倒れていた。

発見した時は、心臓が止まってしまうのではないかと思うくらい苦しくて、イキが出来なかった。
懸命におばあちゃんの名前を呼びかけ、すぐに救急車の後を追い、病院へ行った。

ずっとおばあちゃんを呼びかけているおじいちゃんの姿に胸が締め付けられた。
どうか、目を覚まして。

その後は、正直よく思いだせなかった。
悲しい気持ちを押し込めながらおばあちゃんのお葬式の準備をしていた。
お母さんも、お父さんも、おじいちゃんも誰も一睡もしていない。

なのに、休む事は無くひたすら無機質に作業だけしていた。
「もう、部屋で休んで。」
お母さんに話しかけられて、私ははっとした。
病院に居たはずのおばあちゃんが、家の仏間で綺麗な白装束の姿で寝ていた。
あれからどれ位の時間がたったのだろう。

軽くシャワーを浴びて、私は自分の部屋に入った。
1番最初に目に入ったのは、壁に掛けてあった山道先輩の学ランだった。
見た瞬間、いつもの山道先輩の笑顔が脳裏に浮かんだ。

急に胸が締め付けられ、私の目から大粒の涙が流れた。
私はそのまま、ベットに頭を付けて、泣き伏せた。
出る声を、掛け布団で押さえてた。
おばあちゃんが亡くなって、初めて泣けた。