先輩に困ると言ってしまった。
先輩はとても悲しそうな顔をしていて、胸が痛くなった。
それでも先輩はそうしたいと言ってくれた。
私はそれ以上先輩に何も言えなかった。
先輩もそのまま玄関を出た。

それから楓の時の様に、周りから冷やかしやら説教やらよくわらない質問に対応していた。
先輩と話したくても、少しでも近くに行こうとすると、皆んなが見ているような気がして、先輩に話しかける事は出来なかった。

悲しくなる。
気持ちを言うつもりはない。
先輩を困らせたい訳じゃない。
ただ好きでいたいだけだ。

ー俺がそうしたいんだよー
先輩が言ってくれた言葉がずっと頭から離れない。
そうしたいと言ってくれた先輩に応えたい。
先輩はこうなるって分かってそれでも行動してくれたんだ。

私もそうしたい。
先輩と一緒に冷やかされたり、嫌味を言われるならそれならそれでもいい。
そうしたいんだ。

そう決めたら、決心がついたが。
応援団の集まりの際に、先輩の学ランを使うと高らかに宣言させて貰った。
勇まし過ぎたのか、先輩が笑い過ぎなのがイラッとした。

笑っている先輩の顔が、明らかに嬉しそうだったので、私も嬉しくなった。
このままずっと横にいれたらと、この時は本気で願っていた。