結局、楓は最後まで花火大会に付き合ってくれた。
花火大会が終了した瞬間、人々が帰る支度をし始めた。

約一時間半、手は繋いだままだった。
「‥帰るか。」
楓が、そう呟いて帰路にたった。
行きに比べて、ゆっくり歩いている様だった。

家の近くに来れば、駅の反対側なので、人はほとんどいなかった。
楓はそこでやっと手を離してくれた。
そのまま無言でしばらく歩いた。

「春の大会は、絶対に全国行く。」
ポツリと楓が言った。
私は楓を見上げたが、楓はこっちを見ていなかった。
「うん。楓なら絶対行けるよ。」
私は楓の大きな背中をポンと叩いて笑った。

それでやっと楓が私を見た。
いつもの無表情の楓だ。
私はにっこり笑って、楓を追い越した。
私の後をついて来る形で、私達は家に入っていった。

頑張れ楓。
そう心の中で応援した。

短かった部活の夏休みが終わり、バスケ部はまた練習の日々が始まった。
山道先輩の新しいチームの誕生だ。

意気揚々と部活に向かったが、私は思わぬ攻撃をくらった。